「私を判ってくれない」は、小さな町から生まれた映画だ。

　鹿児島県長島町。鹿児島県の最北端に位置するこの町では、町の活性化を目指すプロジェクトで、貫地谷しほりと山田真歩とが共演した「夕陽のあと」が制作され2019年に公開されている。

　今回の「私を判ってくれない」は、地元の声を受けての第二弾。新型コロナウイルスによる２度の延期を乗り越えて完成した。

　町の協力のもと作られた作品は、島に戻ってきた城子と島から出たことのない由記乃という対照的だが実は似ている二人のヒロインの心模様が描かれる。

　そして、互いに周囲から社会から「判ってもらえない」城子と由記乃は、この社会に「生きづらさ」を抱えている女性たちの代弁者。今を生きる女性の切実な思いが伝わってくる。

　主人公のひとり、城子を演じた平岡亜紀に訊く。（全五回）

ふてぶてしいけど、そこまで悪い子じゃないと映ってくれたらうれしい

　ここまで、演じた城子についていろいろと訊いてきたが、改めて彼女のことをこう振り返る。

「よくよく考えると、強いのか弱いのかわからない。

　前も話したように、彼女が唯一、本音を吐露できるのは、由記乃の父親の市村さんで。

　市村さんには弱音を吐きますけど、ああいうところをみると、そこまで強くない。

　でも、その弱い面を見せないあの意地っ張りなところとか、強気なところはやっぱりわたしは嫌いじゃないです。

　みなさんにも、ちょっとふてぶてしいけど、そこまで悪い子じゃないと映ってくれたらうれしいです（笑）」

花島さんと由記乃はけっこう似た者同士？

　では、由記乃にはどんな印象をもっただろうか？

「まず、由記乃という人物を、花島（希美）さんがものすごく丁寧に演じていることが印象に残りました。

　現場にいるときも、ほんとうに監督にこと細かく確認していたんです。『ここはこういうことですか？』とか『ここはこういう気持ちで合っていますか？』とか、脚本をすごく読み込んだ上で、その場面場面での由記乃の感情をひとつひとつ確認して演じていたんです。

　その丁寧さが演じた由記乃にそのまま表れている。さらに言うと、その丁寧さというのは、由記乃の生き方と相通ずるところがあるんですよね。

　それをみると、花島さんと由記乃はけっこう似た者同士なのかなと思いました。

　由記乃は城子とほんとうに対照的で、控えめで『自分が、自分が』と自らが前に出ることはない。

　でも、自分の中での譲れないものは、絶対に譲らない。そこはある意味、城子よりも頑固で確固とした意志をもっている。

　その点をみると、表向きはぜんぜん違うけど、城子と由記乃も根底ではつながるところがあるんじゃないかなと思いました」

わたしは幼いころ、毎年のように長島町のすぐそばまできていた

　先で触れたように、本作は鹿児島県長島町で作られた。町の印象をこう語る。

「わたしは母が熊本出身で。

　子どものころ、夏休みは丸々1カ月ぐらい熊本で過ごしていたんです。

　そのとき、よく天草に出かけて、海で泳いだりしていました。

　長島町に初めて訪れたとき、なぜかその子どものころの記憶が甦ったんです。

　なにか見たことがある風景に思えた。なぜかなと思ったんですよ。

　そうしたら、町の人が『あそこの島は熊本の天草だよ』と教えてくれて、実はすぐそばだった。

　わたしは幼いころ、毎年のように長島町のすぐそばまできていたんです。

　だから、なんか知らない町に初めてきた感覚はまったくなかったんです。

　なので、厚かましいんですけど、ちょっと地元の人みたいな感覚で過ごしていました（笑）」

映画をもっと身近に感じて、好きになってくれる人が増えてくれたら

　この「町が映画を作る試み」というのはどう受けとめただろうか？

「すばらしいプロジェクトだと思います。

　わたしも、地方の映画祭でその土地で短編を作る、といったようなプロジェクトに何本か参加したことがあります。

　その場合、だいたい現地で撮影して、上映もまず最初に現地でやる。エキストラとして地元の方に参加していただく、というケースが多い。

　すると、映画が身近に感じてもらえるようになるというか。

　地方だと映画館が近くにあるわけではない。もちろんネット配信とかで見ることができるんですけど、どこか感覚として距離があると思うんです。

　でも、参加していただくとやはり映画が身近に感じることができて、映画そのものに愛着が出てくるようなところがあるんですよね。

　なので作り手のひとりでもあるわたしとしては、こういうプロジェクトで映画をもっと身近に感じて、好きになってくれる人が増えてくれたらうれしいなと思っているところがあります」

わたしは断然、このタイトル派です

　では、この「私を判ってくれない」というタイトルは、どう受けとめただろうか？

「わたし、めちゃめちゃいいなと思っているんですよ。

　それこそ、フランソワ・トリュフォー監督の『大人は判ってくれない』っていう映画がありますけど、わたしは大好きな映画で。

　そこからきてはいると思うんですけど、その通りの物語でもありますし、いいタイトルだなと思っています。

　ただ、このタイトルにするかどうかけっこう揉めたみたいで（苦笑）。

　でも、わたしは断然、このタイトル派です。城子と由記乃の気持ちを表したすっごくいいタイトルだと思っています」

【「私を判ってくれない」平岡亜紀インタビュー第一回はこちら】

【「私を判ってくれない」平岡亜紀インタビュー第二回はこちら】

【「私を判ってくれない」平岡亜紀インタビュー第三回はこちら】

「私を判ってくれない」

監督・脚本・編集： 近藤有希　水落拓平

出演： 平岡亜紀　花島希美　鈴木卓爾　今井隆文　西元麻子　ほか

横浜シネマリンにて１月14日（土）から公開、

福岡・KBCシネマにて1月17日（火）1日限定上映決定！

メインビジュアル及び場面写真はすべて（C） 私を判ってくれない

＜舞台挨拶情報＞

横浜シネマリンでの1/14(土)上映後、舞台挨拶決定！

登壇：近藤有希監督、平岡亜紀、花島希美

https://cinemarine.co.jp/watashiwo/