タイトルとなっている「ランディ・ローズ」という名を聞いてもあまりピンとこない人も多いかもしれない。

　少しだけ触れると、彼は1980年代に活躍し、あのエディ・バン・ヘイレンと並ぶ脚光を浴びたスーパー・ギタリスト。

　しかし、まさにこれからスター街道を歩もうとしたその矢先に不慮の事故により25歳の若さでこの世を去った。

　その死から40年という節目の年に届けられたのが、本作「ランディ・ローズ」だ。

　もはや伝説の存在といっていい早世のギタリストの軌跡をたどったアンドレ・レリス監督に訊く。（全四回）

僕にとっては天国にいる音楽の神様的なギタリスト

　前回（第二回はこちら）はランディ・ローズとの出会いについての話で終わった。

　オジー・オズボーンのアルバム「ブリザード・オブ・オズ〜血塗られた英雄伝説」でランディ・ローズのギターと出合い、衝撃を受けたと語っていたが、その後もレリス監督にとって、彼の存在は特別だったという。

「『ブリザード・オブ・オズ〜血塗られた英雄伝説』のギターのサウンドで一瞬にしてランディ・ローズのファンになりました。こんなギタリストがいたんだと思いました。

　その後、僕の音楽の趣向はヘヴィメタルからパンクミュージックへと移行していくんだけど、そういう中でもランディ・ローズは特別な存在で。

　僕にとっては天国にいる音楽の神様的なギタリストとして心にインプットされていました。

　ただ一方で、大ファンではあったのだけれど、僕にとってランディ・ローズは謎に包まれてた存在でもありました。

　というのも前に話した通り、僕はまだ7歳だったので、リアルタイムで彼の訃報に触れていない。

　実際はニュースなどで目にしたかもしれないけど、子どもだから記憶にはまったくない。

　だから、事故で亡くなったことは知っていましたが、彼がどういう人物でどういう人生を歩んでいたかはほとんど知りませんでした。

　当時は、いまのようにググれば情報が出てくる時代ではないから、彼についての情報にアクセスする術がほとんどなかったんです。

　それから映画の中で触れているけれど、彼が組んだバンド『クワイエット・ライオット』はアメリカではデビューしていない。日本でだけメジャーデビューした。だから、その情報というのもほとんど出てこないできた。

　そういうこともあって、一時期まで、僕にとってランディ・ローズはどこか謎めいた存在だった。おそらく僕のように感じているアメリカのヘヴィメタルのファンはけっこういると思う。

　なので、僕の中で、ランディ・ローズはずっと頭の片隅にいる存在でありながら、実体はつかめていない。『どんなギタリストだったのだろう？』と興味をかき立てられる存在だったんです。

　ランディ・ローズという名前を聞くたびに何か恍惚（こうこつ）感を覚えて『どんな人物だったのだろう？』とあれこれ想像していましたね。ずっと」

いまこそ彼の知られざる人生を描くとき

　そのことが今回の作品を作るひとつの原動力になったという。

「前に話した通り、もともと『ランディ・ローズ　クワイエット・ライオット・イヤーズ』というドキュメンタリーがあったわけだけど、それをみてもほんとうに知らないことだらけのことが収められていた。

　ランディ・ローズってこんな人だったんだという話が満載だった。

　で、さっき言ったように、僕のようにランディ・ローズの存在は知っているけれど、実際はどんな人物だったのかを知らない人が大勢いるんじゃないかと思ってね。彼がどんな人物だったのか、ギタリストとしてだけではない彼の人間性や実生活の素顔まで知りたいと思っている人がきっといるだろうと思いました。

　このことは今回のドキュメンタリーを作りたいとの思いに至るひとつの大きな動機になりました。

　つまりランディ・ローズという名前は知っている、存在は知っている。

　だけど、実際のところどういう人で命を落とすことになる事故はどういうものだったのかはあまりきちんと伝えられてこなかった。

　過去に彼の人生を浮き彫りにするような映像資料やドキュメンタリーも作られてこなかった。

　いまググるといくつかランディ・ローズの情報は出てくるけど、それをしても彼の人生をきちんと語るまでには至っていない。

　でも、いま手元に彼について語ることができる映像がある。

　ならば、没後40年という区切りのタイミングでもあるし、いまこそ彼の知られざる人生を描くときだろうと思いました。

　これまであまり明かされてこなかった彼の生涯について伝えたいと思いましたし、またランディ・ローズは語るべき人物であると思いました」

（※第四回に続く）

【「ランディ・ローズ」アンドレ・レリス監督インタビュー第一回はこちら】

【「ランディ・ローズ」アンドレ・レリス監督インタビュー第二回はこちら】

「ランディ・ローズ」

監督：アンドレ・レリス　

脚本・編集：マイケル・ブルーイニン

ナレーション：トレイシー・ガンズ　

出演：ランディ・ローズ、オジー・オズボーン、エディ・ヴァン・ヘイレン、ルディ・サーゾ、フランキー・バネリ、ジョージ・リンチ、ゲイリー・ムーア、ダグ・アルドリッチ、ジョエル・ホークストラ、ブルース・キューリック、ドゥイージル・ザッパ

全国順次公開中

筆者撮影以外の写真はすべて（C）RANDY RHOADS: LEGEND, LLC 2022