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享年25歳、不慮の事故で逝った伝説の天才ギタリスト。その死から40年、彼の軌跡を辿って

水上賢治映画ライター
「ランディ・ローズ」のアンドレ・レリス監督 筆者撮影

 タイトルとなっている「ランディ・ローズ」という名を聞いてもあまりピンとこない人も多いかもしれない。

 少しだけ触れると、彼は1980年代に活躍し、あのエディ・バン・ヘイレンと並ぶ脚光を浴びたスーパー・ギタリスト。

 しかし、まさにこれからスター街道を歩もうとしたその矢先に不慮の事故により25歳の若さでこの世を去った。

 その死から40年という節目の年に届けられたのが、本作「ランディ・ローズ」だ。

 もはや伝説の存在といっていい早世のギタリストの軌跡をたどったアンドレ・レリス監督に訊く。(全四回)

ミュージシャンとして活動していた時期があって、いまもどちらかというと

フィルムメーカーというよりもミュージシャンという意識が強い

 作品の話に入る前に、アンドレ・レリス監督はユニークな経歴の持ち主。

 スポーツテレビのプロデューサーとしてキャリアをスタートさせ、その後、映画配給に携わることに。

 そこから今度は、アパレル販売会社の Vision Films のパートナーとなり、音楽専門部門「Vision Music」を設立。

 2010年にはハリウッドを拠点とする映画製作会社「VMI World Wide」を立ち上げている。

 現在まで主にプロデューサーとして活躍しているが、2015年に、アメリカの伝説的 HIP HOP グループ N.W.A に焦点を当てたドキュメンタリー「N.W.A & EAZY-E:キングス・オブ・コンプトン」で共同監督を務め、初監督に臨んでいる。

 「ランディ・ローズ」は監督作としては2作目となる。

 そして、もともとはミュージシャンとして活動していたという。

「そうなんです。

 もともと僕はミュージシャンとして活動していた時期があって、いまもどちらかというとフィルムメーカーというよりもミュージシャンという意識が強い。

 なので、どうしても音楽の方に情熱を注ぐ傾向があって。『N.W.A & EAZY-E:キングス・オブ・コンプトン』のドキュメンタリー映画を作ることになったのも、そういう僕の意識がひとつ起因になっている。

 同作での体験はとても楽しい経験になったことは間違いない。でも、ただ、結果に関しては正直なところ満足のいく形ではなかった。もう少し多くの人に見てもらえたらうれしかったなと……。

 だから、次にまた自分が監督をして映画を作ることはあまり考えていませんでした。

 おかげさまでプロデューサーのほかいろいろな仕事をしていて、それほどスケジュールが空いているわけでもないですから。

 なので、この企画が出た時も、僕が監督をすることはあまり考えていなくて、当初は及び腰でした」

「ランディ・ローズ」より
「ランディ・ローズ」より

最初は監督を務めることは考えていませんでした

 今回の企画の始まりをこう明かす。

「もともと『ランディ・ローズ クワイエット・ライオット・イヤーズ』というドキュメンタリーがあるんです。ただ、この作品は正式にリリースされていない。

 そこで、その権利の所有者が僕のところへアプローチしてきたんです。『まだ権利関係でクリアになっていないところがあるので君の方で何とかしてなにか形にできないか』と。

 僕が立ち上げた『Vision Music』が映像業界の中では数少ない音楽に特化したレーベルなんで、話を持ち込んできたんです。

 先方は、ランディ・ローズが亡くなって40周年が迫ってきているので、どんな形でもいいのでなんとかプロジェクトを動かしたい意向でした。

 ただ、僕はいろいろな作品をプロデュースしたり、会社を経営していたりで忙しいので、はじめはさっきいったように及び腰でした。

 一方で、ランディ・ローズの大ファンなので、どうにかしたい気持ちもある。

 それで迷ったんですけど、最終的にはやろうと決めました。

 決め手になったのは、そのドキュメンタリー映像のフッテージを見るにつれて、『これはちょっとすごいものが作れるかもしれない』と思えたから。

 それぐらいランディ・ローズのこれまで見たことのない貴重な映像でいっぱいだったんです。

 で、『N.W.A & EAZY-E:キングス・オブ・コンプトン』の経験もあったので、わりと順調に権利関係はクリアできて、すぐに作品にとりかかることができて、気づけば監督をすることになっていたみたいな感じです(笑)。

 タイミングもちょうどよかったんですよね。

 普段ならばプロデューサーとして手掛けている作品に何カ月もかかりっきりで家にも帰れないぐらい缶詰になることがある。

 でも、コロナ禍ということもあって外出を控えないといけない時期もあって、作品によっては撮影が一度ストップしたものもあった。

 それで、この作品にコミットする余裕が少しできたんです。

 そういう状況下、自分の中で監督としてきちんと作ろうという機運が高まっていったところもありました。

 まあ、あと自分が社長を務める会社でやることなので、『監督は僕がやる』といったら最終判断は僕が下す。それで今回も(監督を)務めることになったところもあります(笑)」

(※第二回に続く)

「ランディ・ローズ」より
「ランディ・ローズ」より

「ランディ・ローズ」

監督:アンドレ・レリス 

脚本・編集:マイケル・ブルーイニン

ナレーション:トレイシー・ガンズ 

出演:ランディ・ローズ、オジー・オズボーン、エディ・ヴァン・ヘイレン、ルディ・サーゾ、フランキー・バネリ、ジョージ・リンチ、ゲイリー・ムーア、ダグ・アルドリッチ、ジョエル・ホークストラ、ブルース・キューリック、ドゥイージル・ザッパ

全国順次公開中

筆者撮影以外の写真はすべて(C)RANDY RHOADS: LEGEND, LLC 2022

映画ライター

レコード会社、雑誌編集などを経てフリーのライターに。 現在、テレビ雑誌やウェブ媒体で、監督や俳優などのインタビューおよび作品レビュー記事を執筆中。2010~13年、<PFF(ぴあフィルムフェスティバル)>のセレクション・メンバー、2015、2017年には<山形国際ドキュメンタリー映画祭>コンペティション部門の予備選考委員、2018年、2019年と<SSFF&ASIA>のノンフィクション部門の審査委員を務めた。

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