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国内でも世界でもまったく報じられない。無視され続けるパキスタン女性たちの切実な訴えに耳を傾けて

水上賢治映画ライター
「夜明けに向かって」より 提供:山形国際ドキュメンタリー映画祭

 最新のドキュメンタリー作品と世界のドキュメンタリストが集う、アジア最大級のドキュメンタリー映画の祭典<山形国際ドキュメンタリー映画祭>(※以後、YIDFF)。山形県山形市で2年に1度の隔年開催される同映画祭だが、昨年の第17回は新型コロナウイルスの感染拡大で初のオンラインでの開催を余儀なくされた。

 それから約1年、「スクリーンで作品を」といった声が多く寄せられたことを受け、来年10月の<山形国際ドキュメンタリー映画祭2023>のプレイベントとして「YIDFF 2021 ON SCREEN!」の開催が決定!

 先月10月7日(金)~10日(祝・月)までフォーラム山形を会場に、「理大囲城」や「カマグロガ」などの受賞作をはじめ、昨年の<YIDFF2021>でオンライン上映された作品がスクリーンでリバイバル上映された。

 それに続く形で今月から毎回恒例の<ドキュメンタリー・ドリーム・ショー――山形in東京2022>がスタート。

 こちらでも独自のプログラムを加えたラインナップで<YIDFF>の作品を一挙上映する。

 そこで、この機会に昨年の<YIDFF2021>の開催時にリモート取材に応じてくれた世界の監督たちの話をまとめてインタビュー集として届ける。

 今回はパキスタン=カナダ人映画作家のアナム・アッバス監督。

 逆風にさらされながらも、国際女性デーに合わせた集会とデモの準備するカラチの女性グループを追った「夜明けに向かって」について彼女に訊く。(全四回)

「夜明けに向かって」のアナム・アッバス監督 筆者撮影
「夜明けに向かって」のアナム・アッバス監督 筆者撮影

パキスタンで無視され続けている女性たちの切実な声や訴えに耳を傾けてる

 アナム・アッバス監督はパキスタンを拠点に活動する映画作家。「Other Memory Media」というメディア・プロダクションを主宰している。

 まず、自ら立ち上げたこのメディアでどういう創作活動をしているのだろうか?

「そうですね。わたしが立ち上げたこの制作プロダクションは、今回の『夜明けに向かって』にもつながっているのですが、主にフェミニズムをテーマにした創作活動をしています。

 中でも一番重視しているのは、パキスタンで見過ごされているというよりも無視され続けている女性たちのこと。彼女たちの切実な声や訴えに耳を傾けています。

 というのも、パキスタンで女性たちがどんな状況に置かれているかが、残念ながらほとんど世界には知られていません。

 それどころかパキスタンのメディアにおいても、ほとんど伝えられることがない。

 はじめて製作した長編作品『Showgirls of Pakistan』(2020年)は、アムステルダム国際ドキュメンタリー映画祭2020コンペティション部門でプレミア上映されて、2021年2月からは『VICE』というデジタルメディアで全世界に配信されて反響を得ました。

 ここではタイトル通り、パキスタンのショーガールたちに焦点を当てています。

 こうした通常のメディアでは伝えない、女性たちや女性たちの活動に目を向け、それを制作の題材にしています」

 今回の「夜明けに向かって」では、国際女性デーに合わせた集会とデモを準備するカラチの女性グループにカメラを向ける。

 このグループには若い学生から運動家までさまざまな女性たちが参加。デモ停止を求める裁判などの逆風を乗り越え、彼女たちは「オーラト・マーチ(女性の行進)」の実施へと動いていく。

『オーラト・マーチ(女性の行進)』の運動にかかわることになったきっかけ

 実はアッバス監督自身もこの組織に参加していたという。

「わたしもこの『オーラト・マーチ(女性の行進)』の運動には2018年からかかわっています。主催者のひとりでもあります。

 ですから、わたしの立場から考えると、この映画は内部関係者の制作した作品ということになります。

 この運動にかかわることになったきっかけは、話すとちょっと長くなるのでなるべく短く説明しますね(笑)。

 まず、わたしは2016年に仕事の関係でカラチに引っ越したんです。それからカラチを拠点に創作活動を始めることになりました。

 それから、わたしは同時期に『Ladies Only』というウェブ動画シリーズを発表していました。

 このシリーズは、現代のフェミニストたちに焦点を当てた作品で、俳優やアーティスト、活動家など様々なフェミニストと知り合うことができました。

 その中で友人になった女性がいるんですけど、彼女が『オーラト・マーチ(女性の行進)』の運動を主導するひとりなんです。

 彼女にはすごくお世話になっていて、わたしは住む家のない時期に、1カ月ぐらい家に滞在させてもらったりしているんですけどね(笑)。

 で、彼女を介して、わたしはカラチのフェミニストのコミュニティともつながることができた。

 そして、ちょうど同じころ、『#Me Too』の運動が大きなムーブメントとなって起きて、世界中へと波及していきました。

 この『#Me Too』の影響は大きくて、カラチの彼女たちも、もっと政治や政府、社会に訴えかけないといけないという機運がすごく高まったんですね。

 それで『オーラト・マーチ(女性の行進)』を実施する方向へ動いていった。

 ですから、気づけばといった感じでこのグループの活動にかかわるようになっていました。そこに居合わせてそのままかかわるようになった感じです。

 ちょっと裏話になるんですけど、最初の公のミーティングはわたしのアパートで行ったんですよ(笑)。

 ですから現場では、わたしは彼女たちの友人であるとともにデモを組織する仲間のひとりでした。

 一方で、わたしは映像制作者としてデモの運営サイドとうまくコミュニケーションをとりながら撮影を重ねることになりました」

(※第二回に続く)

<ドキュメンタリー・ドリーム・ショー ‒‒山形in東京2022>ポスタービジュアル 提供:山形国際ドキュメンタリー映画祭
<ドキュメンタリー・ドリーム・ショー ‒‒山形in東京2022>ポスタービジュアル 提供:山形国際ドキュメンタリー映画祭

<ドキュメンタリー・ドリーム・ショー ‒‒山形in東京2022>

期間:2022年 11月5日[土]~11月26日[土](予定)

会場:新宿K's cinema(11月5日[土]~11月18日[金])

アテネ・フランセ文化センター(11月19日[土]~11月26日[土])

主催:シネマトリックス

詳しくは公式サイトへ → http://cinematrix.jp/dds2022/

映画ライター

レコード会社、雑誌編集などを経てフリーのライターに。 現在、テレビ雑誌やウェブ媒体で、監督や俳優などのインタビューおよび作品レビュー記事を執筆中。2010~13年、<PFF(ぴあフィルムフェスティバル)>のセレクション・メンバー、2015、2017年には<山形国際ドキュメンタリー映画祭>コンペティション部門の予備選考委員、2018年、2019年と<SSFF&ASIA>のノンフィクション部門の審査委員を務めた。

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