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「みぽりん」での声優アイドル役も話題の彼女。地元・神戸、元町映画館発の映画でヒロインに!

水上賢治映画ライター
「まっぱだか」で主演を務めた津田晴香  筆者撮影

 神戸にある元町映画館が開館10周年を迎えて製作した映画「まっぱだか」は、もはや必然ではないかという男女のめぐり逢いの物語だ。

 めぐり逢うのは、神戸の街の片隅で生きる俊とナツコ。

 恋人を失った喪失からまったく立ち直れない俊は、毎夜浴びるほど酒を飲んでは酔いつぶれている。

 役者志望のナツコは、周囲から求められ押し付けられた「明るく元気」というイメージに嫌気が差しながら、その期待を裏切らないよう振る舞う自分という人間にストレスを抱えている。

 いつからか心から「笑う」ことを忘れてしまった二人が、「互いにそのとき最も必要だった存在」としてめぐり逢うことになる。

 「めぐり逢い」とするとなんだかロマンチックな出会いを想像してしまうが、そうではない。

 すれ違いのラブロマンスでもない。

 深く傷つき、失意を抱え、やり場のない孤独の先の日常に起きた「ささやかな奇跡=めぐり逢い」といったほうが近いかもしれない。

 俳優としても活躍する安楽涼と片山享が共同監督で作り上げた本作でヒロイン・ナツコ役を射止めた津田晴香に訊く。(全四回)

神戸という街の雰囲気や人が大好き

 はじめに津田は神戸でこれまで俳優業やラジオパーソナリティとして活躍。昨年公開され話題を呼んだ『みぽりん』で記憶している人も多いかもしれない。

 彼女は現在も神戸在住で活動中だ。   

「幼いころ、西宮で一瞬暮らしたことがあったんですけど、すぐ戻ったので、ほぼほぼ神戸で生まれ育った感じです。

 両親は大阪と香川の出身なので、なぜ神戸で暮らすようになったのか謎なのですけど(笑)。

 この街の雰囲気や人が大好きなので、いまは親に『ここに生活の拠点を置いてくれてありがとう』と感謝しています」

元町映画館は、わたしにとってなくてはならない場所

 今回の『まっぱだか』は、元町映画館が開館10周年を迎えて製作した作品になる。

 元町映画館もなじみのある劇場だという。

「(元町映画館には)めっちゃ行きます。

 元町映画館は、わたしにとってなくてはならない場所といいますか。

 まず、自主映画に初めて出合ったのが元町映画館でした。

 このときがミニシアターに行ったのも初めて。以来、元町映画館をはじめいろいろなミニシアターに通うようになって、さまざまな映画を見るようになりました。

 なので、わたしにとって元町映画館は、多様な映画に出合い、自分のいままで知らなかった世界を教えてくれた場所なんです。

 それから、元町映画館は、自分が初めて出演した映画(『みぽりん』)も上映してくださいました。

 そのときは、俳優としてキャリアのまだ浅いわたしを温かく迎えてくださって、すごくお世話になりました。

 いまではもうスタッフのみなさんが家族みたいに接してくださるので、特別用事がなくても行っちゃうときがあるぐらい。

 わたしにとってはなんだか実家やおばあちゃんの家みたいに居心地のいい場所でもあるんです。

 また、出演した映画の上映を通じては、観客のみなさんからいろいろな感想をいただきました。

 ですから、元町映画館はわたしの俳優としてのひとつの出発点になっている場所。俳優としてもっと成長して帰ってきたいと思う場所でもある。

 とにかくわたしにとって元町映画館は欠かせない、大切な場所です」

「まっぱだか」で主演を務めた津田晴香  筆者撮影
「まっぱだか」で主演を務めた津田晴香  筆者撮影

大ファンの安楽監督と片山監督が神戸で撮る作品

わたしの中では夢のような作品でした

 今回の「まっぱだか」の企画は、出演の話が来る前から耳に入っており、「チャンスがあれば出たい」と願っていたと明かす。

「安楽監督と片山監督が共同で監督を務めて神戸で作品を撮るという企画が進行中という話は聞いていたんです。

 というのも、さきほど、元町映画館で自主映画に出合ったと話しましたけど、初めてみたのが安楽監督のデビュー作になる『1人のダンス』だったんです。

 そのとき、作品があまりに当時の自分の心境とシンクロして感動のあまり大号泣してしまったんですよ。

 で、劇場にいらっしゃっていた安楽監督に感想を伝えたんです。もう泣きながら(笑)。

 以来、安楽監督のファンになって作品は常にチェックするようになったんです。

 それで、安楽監督の『追い風』が(元町映画館で)上映された際、舞台挨拶に片山監督(※片山は『追い風』で共同脚本を担当。出演者のひとりでもある)がいらっしゃっていて、そのとき少しお話する機会がありました。

 その後から、片山監督の作品も観るようになって、またファンになったんです。

 なので、大ファンのお二人が監督を務めて、わたしの地元である神戸で映画を撮る。

 もうわたしの中では夢のような作品で、ほんとうに出演される役者さんはめっちゃうらやましいと思っていました。

 それと同時に、自分もなにかチャンスがあったら出たい。

 二人の目にとまるように頑張ろうと思っていました」

お話をいただいたときは『どうしよう』という気持ちの比重が

すぐ大きくなりました

 そう希望を胸に抱いていたときに、出演のオファーが来たという。

「お話をいただいたときは、もう信じられなかったです。

 ものすごくうれしい気持ちでいっぱいになったんですけど、それは一瞬で、すぐに不安な気持ちになりました。

 というのも、わたしは、安楽監督の作品にも、片山監督の作品にも、常に作品にみなぎっているパワーに圧倒されてきたんです。

 それほど、お二人の作品には巨大なエネルギーが封じ込められている。

 そのような場所に、いまの自分が立てるのかなと思ったんです。

 二人の期待に応えられるのか?自分が出演して、そのようなパワーを感じられる作品になるのか?すごく不安になりました。

 ですから、うれしい気持ちと不安が半々というよりも、お話をいただいたときは『どうしよう』という気持ちの比重がすぐ大きくなりましたね。

 でも、こんなチャンスは二度とないかもしれない。とにかく自分なりに頑張ろうと思いました」

(※第二回に続く)

「まっぱだか」ポスタービジュアルより
「まっぱだか」ポスタービジュアルより

「まっぱだか」

監督:安楽涼、片山享

出演:柳谷一成、津田晴香、安楽涼、片山享、

タケザキダイスケ、大須みづほ 他

脚本:片山享、安楽涼

撮影:安楽涼、片山享

録音・整音:杉本崇志

音楽:藤田義雄 主題歌:Little Yard City「Walk With Dream」

新宿ケイズ・シネマにて公開中

ポスタービジュアルは(C)元町映画館

映画ライター

レコード会社、雑誌編集などを経てフリーのライターに。 現在、テレビ雑誌やウェブ媒体で、監督や俳優などのインタビューおよび作品レビュー記事を執筆中。2010~13年、<PFF(ぴあフィルムフェスティバル)>のセレクション・メンバー、2015、2017年には<山形国際ドキュメンタリー映画祭>コンペティション部門の予備選考委員、2018年、2019年と<SSFF&ASIA>のノンフィクション部門の審査委員を務めた。

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