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肉まん好き26歳女性のプライバシーを丸裸にする中国のコロナ対策とは?

宮崎紀秀ジャーナリスト
コロナ感染の女性は何度も同じ中華まんじゅう店に通っていた(写真はイメージ)(写真:アフロ)

 新型コロナウイルスの感染が急増し、先週から都市封鎖した河北省の石家荘。石家荘では10日、新たに77人の感染が確認されたが、河北省の衛生健康委員会は、この77人の全ての行動記録を公表するという対策の徹底ぶりを示した。そこには、国民のプライバシーよりも感染封じ込めを最優先させる中国式対策の一面が見える。

中国は「情報隠し」ではなく「公開しすぎ」?

 河北省の衛生健康委員会は、11日、前日10日の0時から24時の間に、石家荘で新たに77人の感染を確認したと発表した。そのうち27人はすでに無症状感染者として把握していた人が、感染確認に転じたケースだという。

 中国ではしばしば「情報隠し」が行われていると疑われ、それが事実であろうことも少なくないが、その一方で、日本の感覚と比べれば、「情報公開し過ぎ」と思える例もある。新型コロナウイルスの抑え込み対策として、感染者の行動をつぶさに公開するのはその一例である。

77人全員の行動を公表

 河北省の衛生健康委員会は、今回、新たな感染者77人全てに関し、把握した行動を公表した。氏名こそ伏せているものの、感染者の性別、年齢を示した上で、さすがに枝番まではないが住んでいる村などは分かる程度の大まかな住所と、感染が確認されるまでの場合によっては数週間の行動記録を発表した。その目的は濃厚接触者となった可能性がある人などへの注意喚起であろう。だが、個人が特定できないよう一定の配慮はされているものの、本人が見ればプライバシーを丸裸にされたような感覚を持つであろうほどの徹底ぶりだ。

26歳の女性は何をした?

 一例を挙げると感染確認62号のケース。晶彩苑という団地もしくは区画に住む26歳の女性。

 去年12月19日からの行動が公表されているが、その日は10時23分に子供を病院に連れて行き、17時29分に赤ちゃん用品の店で買い物をした、という具合である。

 12月21日にはある店で中華まんじゅうを買った。日本風に言えば肉マンや餡マンなどの小麦の生地に具が入ったホカホカのあれである。実は、その中華まんじゅうの店は、女性のお気に入りだったようで、12月25日の12時54分、26日13時12分、31日には6時53分と12時03分、1月3日9時56分、4日10時19分と1月10日に感染が確認されるまで、合わせて7回買いに行っている。さらに、女性が別の店でも2回中華まんじゅうを買った事実が明かされている。

その女性のクリスマス・イブは?

 例えば、12月24日のクリスマス・イブには何をしていたかというと、17時53分に市場で食材を買い、その5分後に“お気に入り”の店とは違う店で中華まんじゅうを買った。さらにその4分後に鶏肉を購入。北京などの都会ではクリスマス・イブにおしゃれをして高級レストランで外食をする若者も増えたが、幼子を抱えると見られるこの26歳の女性は、家で家族とつましく中華まんじゅうを頬張ったのだろう。

自宅で10分間のおしゃべりも当局が把握

 その他にも「携帯電話を修理に出した」や「自宅で10分間おしゃべりをした」といった事実が列挙されており、この女性の行動の範囲やパターンが目に浮かぶ。女性は1月3日と4日にPCR検査を受けたがいずれも陰性。9日改めて受けた検査で陽性反応が出て翌日10日に感染が確認された。

 感染症患者とは言え、ここまで当局が行動を把握し、その上、公表するのは薄気味悪い気がする。だが、行動を晒された26歳の女性の気持ちを度外視する覚悟さえあれば、彼女と接触した可能性のある人の自覚を促すには、役立つのかもしれない。これがコロナの中国式抑え込み方の一つなのだ。

ジャーナリスト

日本テレビ入社後、報道局社会部、調査報道班を経て中国総局長。毒入り冷凍餃子事件、北京五輪などを取材。2010年フリーになり、その後も中国社会の問題や共産党体制の歪みなどをルポ。中国での取材歴は10年以上、映像作品をNNN系列「真相報道バンキシャ!」他で発表。寄稿は「東洋経済オンライン」「月刊Hanada」他。2023年より台湾をベースに。著書に「習近平vs.中国人」(新潮新書)他。調査報道NPO「インファクト」編集委員。

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