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中国で中学生少女が自殺。またいじめが原因か?

宮崎紀秀ジャーナリスト
死亡した少女の家族が学校に抗議に訪れたとみられる映像(中国のSNSより)

 中国の福建省で中学1年生の少女が飛び降りて自ら命を絶った。いじめを苦にしたとみられている。中国では近年、未成年による凄惨ないじめや凶悪な犯罪が頻発しており、少女が自殺に至った背景にも強い関心が寄せられている。

母親との最後の晩餐?

 中国のSNSで拡散した映像には、自殺した少女の家族とみられる人物が、学校に押しかけて、警備員に押し返される様子が写っていた。学校の前で横断幕を広げている映像もあり、「子供は長期間に亘っていじめを受けていた。教師はそれを知りながら報告しなかった」などと書かれている。場所は福建省普江市にある中学校とみられる。

 中国メディアによれば、普江市の教育当局は、3月24日の午後10時頃、中学1年生の転落死体が見つかったとして、警察と合同で調べを進めているとしている。

 少女の母親によれば、その日、娘と一緒に鍋を食べたという。それから2時間ほど経った後、突然、娘から死を仄めかすメッセージを受け取ったという。

死を仄めかすメッセージ

「私の生命は終わります。学校が耐えられない。私をいじめる人は明日も楽しくすごす。気分が悪くなります。学校に行けば、毎日、彼女に会わなければならない」

 メッセージを見て母親は慌てて娘を探した。しかし、再会した時に、娘はすでに変わり果てた姿だった。

 明るく活発でバスケットやバドミントンが好きだった。娘がいじめを受けていたことには気づかなかったという。

 娘の死後、携帯電話を調べたところ、3月中に3回に亘り同一人物に対し送金の記録があった。金額はそれぞれ350元(約7360円)、100元(約2100円)、450元(約9460円)だった。だが同級生の話では、娘をいじめていたのは一人だけではなかったようだった。

いじめが殺人にまで

 中国でも未成年同士のいじめや犯罪が深刻な問題となっている。

 今月初めにもその凄惨さを物語る事件が起きていた。それは、いじめを通り越して殺人にまで至ったものだった。

 3月10日、河北省邯鄲市で13歳の少年が行方不明となった。少年と一緒に監視カメラに写っていた少年3人が調べを受け、不明少年の殺害を自供した。容疑者3人はいずれも14歳に満たない未成年、被害少年の同級生だった。

 少年の遺体は、一人の容疑者の家から100メートルに満たない距離に埋められていた。容疑者は事前に穴を掘って準備しており、殺人は計画的だったとみられている。

 殺された少年はかつて、「学校の屋上から飛び降りる夢を見た」などとSNSのチャットに書いたことがあったという。容疑者3人からいじめを受けていた。

少女が死の直前に母に伝えたこと

 河北省の事件でいじめや未成年者による犯罪の問題の根深さに感心が高まっていたところに、福建省の少女の自殺が重なった。

 少女が死の直前に母親に送ったメッセージ。いじめに絶望した心情を吐露した後、こう綴っていた。

「来世でもあなたの娘になります」

ジャーナリスト

日本テレビ入社後、報道局社会部、調査報道班を経て中国総局長。毒入り冷凍餃子事件、北京五輪などを取材。2010年フリーになり、その後も中国社会の問題や共産党体制の歪みなどをルポ。中国での取材歴は10年以上、映像作品をNNN系列「真相報道バンキシャ!」他で発表。寄稿は「東洋経済オンライン」「月刊Hanada」他。2023年より台湾をベースに。著書に「習近平vs.中国人」(新潮新書)他。調査報道NPO「インファクト」編集委員。

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