チームとは生き物である。とくに学生スポーツのそれは。帝京大ラグビー部の岩出雅之監督は、日々のラグビーの鍛錬を通し、学生の人間的な成長を促している。

 20日の関東大学ラグビーの全勝対決。63歳の監督は、明大戦に向けて、選手全員の決意の寄せ書きの模造紙の真ん中にこう、文字を書き込んだ。

 <芯の勝負>

 そのココロを聞けば、岩出監督は丁寧に説明してくれた。

 「魂を込めて戦う。相手から逃げないマインドでやっていく。全力を出し切ろうという意味です」

 学生だもの、大一番に臨むにあたって、緊張や気負いがあるだろう。でも、不安や雑念をぬぐい、ただ目の前の勝負に集中する。東京・秩父宮ラグビー場。試合が始まれば、帝京大FWはまず、自慢のスクラム戦に全力をぶつけた。

 キックオフ直後の帝京大ボールのファースト・スクラムだった。スクラムの要、右プロップの主将、細木康太郎はその場面をこう、述懐した。

 「明治大学はスクラムにプライドを持っている、FWにプライドを持っている。だから、そこで勝ちたい、スクラムで勝って勢いづきたい。そう考えました」

 お互い、間合いや組み方が合わず、組み直しとなった。再び、組む。うしろ5人(ロックとフランカー、ナンバー8)のウエイトが前にかかる。ボールイン。真紅の帝京大ジャージの固まりがまっすぐ前に出る。グイっと明大を持ち上げる格好で押し崩した。コラプシング(故意に崩す行為)の反則をもらった。

 細木主将はにこやかに言った。「僕たちの自信に大きくつながったと思います」と。

 前半、2トライを挙げて、14-0で折り返した。ハーフタイム。岩出監督は「さあ仕切り直し。もっと冷静にやろう」と声をかけている。後半は明大の反撃を受けた。でも、ゴール前の再三のピンチをしぶとくしのいだ。

 ノーサイド。帝京大が14-7で勝ち切った。帝京大は、開幕から唯一の無傷の6連勝で首位に立った。先の早大戦(〇29-22)につづく、我慢の勝利だった。最終戦の慶大戦(12月4日)に勝てば、無条件で3季ぶりの対抗戦優勝となる。

 岩出監督は、苦戦もプラスにとらえる。

「今日の試合を乗り越えたことで、学生たちの心の中に、しっかりとした力強さが注入されたんじゃないかなと思います。勝ち負けだけじゃなく、大学スポーツのよさとか、心身ともに鍛えるという意味で、最高の経験をしているんじゃないでしょうか」

 もちろん、帝京大には優れた才能が集まっている。ただ、指導や練習方法を誤れば、その才能をダメにすることもある。個性を尊重し、ラグビーの技術だけでなく、人間力をどう高めていくのか、岩出監督はその指導が実にうまい。

 岩出さんは1996年に監督に就任。2009年度から17年度まで大学選手権9連覇の偉業を達成した。日本代表選手も多数輩出。同じく20日に英国エディンバラで行われたスコットランド戦(●20-29)の日本代表の先発には、帝京大出身が、フッカー坂手淳史、ナンバー8姫野和樹、SH流大、SO松田力也、CTB中村亮土と5人も並んだ。

 その話題を振れば、岩出監督は「卒業生の活躍はうれしいですよ、ほんとうに」と相好を崩した。「(卒業生が)努力を継続して、より成長した結果だと思う。おごらず、これからもさらに成長して、若い人たちの見本となるよう、日本ラグビーの”けん引車”としてがんばってほしい」

 育成の秘訣は?

 「こちらの考えをちゃんと伝えて、目の前のことに対して集中することと、未来に向かっていくことが重なるよう、持っていくことでしょう。そうやって、学生の視野を少しずつ、少しずつ、広げさせていく」

 確かに、帝京大のラグビー部員は上級生になるとプレーの幅も人間の幅もできてくる。

 「さらに社会に出てから、いろんな経験をすると思うんですよね。ラグビーをやる学生がいれば、ラグビーから離れる学生もいる。ゲームと一緒、ピンチもチャンスも経験しながら」

 つまるところ、学生はまだ、発展途上である。どう成長していくのか。ワクワクする。指導者もまた、学生とともに夢をみる。