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ガールズケイリン「経験をなめんなよ!」

松瀬学ノンフィクション作家(日体大教授)

ガールズケイリンがさらに多彩になる。昨年、48年ぶりに復活した女子競輪。週末、二期生がデビューし、勝負はガゼン、激しくなる。一期生と二期生。プロの1年間の経験の差は大きいだろう。一期生はこう、思っているはずだ。「経験をなめんなよ!」と。

7日。東京・秋葉原のイベントに一期生33人、二期生18人のガールズケイリン全51選手が集まった。和やかな空気の中にあっても、静かなライバル心がみえる。目付きはみな、きつかった。二期生たちを迎え撃つ一期生のエース格、加瀬加奈子はいう。

「石井(寛子)がナンダカンダと言われていますけど、全然、わたしの視野には入ってないですね。二期生がきて、周りが強くなればなるほど、わたしも強くなる。わたしは“絶対王者”と言われるようになります」

この自信、この覇気。スタートした昨年7月から今年4月までの勝率は実に77%を超える。先行逃げ切りにこだわり、ほとんど「先行1車」みたいな走りを見せてきた。

「相撲取りでいえば、かつての北の湖さん(元横綱=日本相撲協会理事長)のように憎たらしいほど強いと言われたい。いわばヒール的な強さですね。次の世代の子どもたちを呼び込めるよう、国民的な人気競技になれるよう、盛り上げていくしかありません」

二期生のエースが、昨年10月のワールドカップの銀メダリスト、石井寛子。競輪学校では封印されていたアイシャドーを塗り、ギャルメークの化粧をほどこした。10日からの京王閣競輪でデビューする。京王閣はホームバンク。目標が優勝。

「お客様に恩返しというか、感謝の気持ちを持って、一生懸命走りたい」

一期生の高松美代子は9日で51歳となる。「また最年長記録を更新ですね」と照れながらも、笑顔は実に若々しい。

「まだまだ元気です。もちろんガールズグランプリ(年間王者決定戦)に出たいけど、けがしないで、元気に走って、同世代の女性の励みになればいいのかなとも思います」

ガールズケイリンでは、年齢も経歴も個性も違う女性が並ぶ。同じなのは、「競輪魂」。どの選手も自身の限界に向かって、ひたむきに挑戦している。ちょっと大げさな言い方をすれば、ガールズケイリンには女性たちの人生が見えるのだ。

【「スポーツ屋台村」より】

ノンフィクション作家(日体大教授)

早稲田大学ではラグビー部に所属。卒業後、共同通信社で運動部記者として、プロ野球、大相撲、五輪などを担当。4年間、米NY勤務。02年に同社退社後、ノンフィクション作家に。1988年ソウル大会から2020年東京大会までのすべての夏季五輪ほか、サッカー&ラグビーW杯、WBC、世界水泳などを現場取材。人物モノ、五輪モノを得意とする。酒と平和をこよなく愛する。日本文藝家協会会員。元ラグビーワールドカップ組織委員会広報戦略長、現・日本体育大学教授、ラグビー部部長。著書は近著の『荒ぶるタックルマンの青春ノート』(論創社)ほか、『汚れた金メダル』『なぜ、東京五輪招致は成功したのか』など多数。

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