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男子セブンズ、来季のコアチーム昇格の望み消える

松瀬学ノンフィクション作家(日体大教授)

悪夢のような敗戦だった。7人制ラグビーの香港セブンズ最終日の24日、日本男子はワールドシリーズ昇格予選グループの準々決勝でグルジアに0-17(前半0-10)で完敗し、同シリーズに参戦するコアチーム昇格決定大会(5月・ロンドン)の出場権獲得(ベスト4)を逃した。

確かに嫌な雰囲気はあった。相手は前日快勝したグルジアだったとはいえ、軸のシオネ・テアウパを故障で欠く苦しい布陣だった。しかも雨模様のため、ボールが手に付かず、芝も滑りやすかった。どちらかと言えば、フィジカルで勝るグルジア有利のコンディションだっただろう。

試合の立ち上がりがポイントだった。キックオフ直後、敵ゴール前に攻め込むがトライはできなかった。前半2分、敵陣深く攻め込んでのノックオンから逆襲され、先制トライを許す。4分にはラックをターンオーバーされ、トライを重ねられた。

グルジアは明らかに作戦を変えてきた。ブレイクダウンでファイトし、ラックサイドを攻める。日本のはやいディフェンスを混乱させるため、ライン裏へのキックを多用してきた。よほど雪辱に燃えていたのだろう、コンタクトは激烈だった。

「ゲームの入りが悪かった」と、日本の瀬川智広ヘッドコーチはうなだれた。「継続のところでボールをうまくリサイクルできず、パスも全然通らなかった。ロンドンに行けず、非常に残念です。日本のセブンズ界にとっても、すごく痛いというか、残念な結果となってしまいました」

2016年リオデジャネイロ五輪ロードを考える上で、コアチームとなり、ワールドシリーズを戦っていくことはとても重要なことだった。だからこそ、異例の長期合宿を張り、運動量アップを図ってきた。ブレイクダウンを有効に使って、空いたスペースにボールを運んで「走り勝つ」戦術を磨いてきた。

予選プールは3戦全勝の1位となりながら、この大一番で結果をだせなかった。あまりにテアウパとロテ・トゥキリに頼りすぎていた。この日のようにどちらかが欠けると、なかなかビッグゲインができず、はやい日本のリズムでのアタックが機能しなくなる。

また昨日までとは違い、前への出足が鈍り、タックルも甘くなった。「3日間の体力という部分が大きかったかなと思います」と瀬川HCは言う。「でも次に向かって切り替えていくしかない」

3月30日、31日にはワールドシリーズの東京セブンズが開かれる。日本がやろうとしている戦い方は間違っていない。だが世界の強豪クラスと戦うなら、体力アップ、プレーの精度はもちろん、コンディショニング、コンタクトエリアの強化と整備が急務となる。

ノンフィクション作家(日体大教授)

早稲田大学ではラグビー部に所属。卒業後、共同通信社で運動部記者として、プロ野球、大相撲、五輪などを担当。4年間、米NY勤務。02年に同社退社後、ノンフィクション作家に。1988年ソウル大会から2020年東京大会までのすべての夏季五輪ほか、サッカー&ラグビーW杯、WBC、世界水泳などを現場取材。人物モノ、五輪モノを得意とする。酒と平和をこよなく愛する。日本文藝家協会会員。元ラグビーワールドカップ組織委員会広報戦略長、現・日本体育大学教授、ラグビー部部長。著書は近著の『荒ぶるタックルマンの青春ノート』(論創社)ほか、『汚れた金メダル』『なぜ、東京五輪招致は成功したのか』など多数。

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