Yahoo!ニュース

東福岡、高校日本一奪還へ好スタート

松瀬学ノンフィクション作家(日体大教授)

1週間ぶりの沖縄である。前回はプロ野球キャンプ、今回はラグビー。何の因果か、沖縄は今日も雨だった。空港からレンタカーで約40分、沖縄県総合運動公園に飛んで行った。どしゃぶりの雨の下、あのモスグリーンのジャージの東福岡高校(福岡1位)が試合前アップをしていた。威圧感がある。

27日、九州高校新人大会が開かれていた。決勝が、ヒガシと長崎南山(長崎1位)である。ことし正月の全国高校ラグビー大会(花園)では準々決勝で敗れ、4連覇を逃したヒガシ。新チームはどうなのだ、と興味が募る。これが断トツの強さだった。

パッとみ、大学の強豪チームみたいな体格である。まずジャージ姿の背中がでかい、筋肉が隆起している。さらによく鍛錬された太もも。試合が始まると、もうゲームスピードが相手と違った。雨中戦とあってパスを短くしているのだろうが、ブレイクダウン(タックル後のボール争奪戦)を圧倒し、リズミカルにボールをつないでいく。

FWは1番から8番まで、みんなフランカーのようによく走る。とくにフッカーの金子崇くん(175センチ、93キロ)、右プロップの石橋海洋くん(181センチ、105キロ)がいい。ボディーコントロール、ハンドリングが巧みで、ボールをうまく生かす。

結局、48-10で長崎南山に圧勝した。前に出るディフェンスも圧力があり、今大会は4試合で失ったトライが計4つだけだった。1回戦で熊本工業(熊本2位)に102-7、準々決勝で高鍋(宮崎2位)に68-0、準決勝では長崎北陽台(長崎2位)に55-7。藤田雄一郎監督にあいさつにいけば、「順調に成長している感じです」と漏らした。

「大会ではとくにディフェンスを意識していました。前に出る、縦のスピードです。アタックはまだまだミスが多い。要はチームのためにからだを張れる選手が25人中、何人いるかですね」

部員は1、2年生で95人。新年度になればユウに100人を超すことになる。それも大半が少年ラグビー経験者。強いわけだ。さらに熾烈なチーム内競争がチームのレベルを押し上げることになる。選手の意識も高い。控え選手にヒガシの強さの秘密を聞けば、「接点、痛いプレーにからだを張るからです」と言う。

新チームは当然、高校日本一を狙っている。「(周囲から)全国ベスト8では満足されないチームになっているので、それを喜びとしていきたい」と謙虚な藤田監督。「ことしは大事な年となる。うちはチャレンジャー。(日本一を)狙っていきます」

実は決勝の相手の長崎南山が1回戦に下した相手は我が母校の修猷館(福岡2位)だった。こちらが修猷OBと知るや、「(修猷の)リベンジをしましたので」と笑顔で言ってくれた。

ところでベンチのテントには前監督の谷崎重幸さんの姿もあった。一部メディアで「母校法大の監督就任の見通し」と報じられている。その話をぶつければ、「何も話せません」と逃げられてしまった。

【「スポーツ屋台村」(五輪&ラグビー)より】

ノンフィクション作家(日体大教授)

早稲田大学ではラグビー部に所属。卒業後、共同通信社で運動部記者として、プロ野球、大相撲、五輪などを担当。4年間、米NY勤務。02年に同社退社後、ノンフィクション作家に。1988年ソウル大会から2020年東京大会までのすべての夏季五輪ほか、サッカー&ラグビーW杯、WBC、世界水泳などを現場取材。人物モノ、五輪モノを得意とする。酒と平和をこよなく愛する。日本文藝家協会会員。元ラグビーワールドカップ組織委員会広報戦略長、現・日本体育大学教授、ラグビー部部長。著書は近著の『荒ぶるタックルマンの青春ノート』(論創社)ほか、『汚れた金メダル』『なぜ、東京五輪招致は成功したのか』など多数。

松瀬学の最近の記事