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名誉王座の中原誠、羽生善治は9月生まれ 名誉王座候補の永瀬拓矢も9月生まれ

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 将棋史上において、数多くの輝かしい実績をあげた中原誠と羽生善治には、当然ながら多くの共通点がある。それらをすべてあげようとすればキリがない。その中で最近とくによく言及されるのは、両者が名誉王座資格者という点だ。

 名誉王座は王座連続5期、あるいは通算10期という高いハードルが設定されている。それをこれまでにクリアしているのは、中原、羽生の2人しかいない。

 その上で両者は、偶然なのかどうなのか、王座戦五番勝負がおこなわれる9月に誕生日を迎える点でも共通している。

縁起をかつぐわけではないが、誕生月は強い、と私は勝手に思っている。王座戦は毎年9月に始まるが、私が9月2日生まれなので、第1局の辺りに重なることが多かった。ちなみに羽生王座の誕生日は9月27日である。

(中原誠「私の履歴書」『日本経済新聞』2016年5月12日)

 86年9月2日。誕生日を迎えて39歳になった中原王座は桐山清澄挑戦者に勝ち、通算800勝を達成した。五番勝負は3連勝で制している。

 翌87年には塚田泰明の挑戦を受けて2勝3敗で失冠。

 しかし88年にはすぐに挑戦権を得てリターンマッチに臨み、9月2日の第1局で勝利。そのまま3連勝で復位に成功している。

 王座戦第3局は例年、羽生の誕生日である9月27日あたりにおこなわれる。

 谷川浩司(現17世名人)は、中原、羽生の両名誉王座が9月生まれであることを認識していた。

誕生日と好調には関連性はあるのだろうか。1994年は羽生王座に挑戦し、3連敗した。第3局の誕生日は9月27日で、渡す気もないのに誕生日プレゼントをしてしまったこともあった。

(谷川浩司「王座戦の思い出」『日本経済新聞』2020年9月3日)

 2006年9月27日の第3局。羽生は佐藤康光挑戦者を降し、3連勝で防衛を果たしている。

 2011年9月27日の第3局。羽生は渡辺明挑戦者に敗れた。五番勝負3連敗で失冠し、長きに渡った連覇記録は19でストップした。

 しかし羽生は翌12年、3勝1敗で復位。そこからまた5連覇を達成している。

 現在、3人目の名誉王座に最も近い棋士といえば、王座4連覇中の永瀬拓矢だ。

 永瀬の誕生日は9月5日。今期五番勝負の間に年齢を重ね、31歳となった。

 藤井聡太七冠を挑戦者に迎えた世紀のシリーズは、第3局を終えた時点で永瀬の1勝2敗となっている。ここからカド番を跳ね返し、5連覇を達成し、名誉王座の資格を得ることができるだろうか。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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