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徳田拳士四段(24)加古川青流戦優勝! 齊藤優希三段(26)を2連勝で降し公式戦18連勝も達成!

松本博文将棋ライター

 10月16日。兵庫県加古川市・鶴林寺において第12期加古川青流戦決勝三番勝負第2局▲齊藤優希三段(26歳)-△徳田拳士四段(24歳)戦がおこなわれました。棋譜は公式ページをご覧ください。

 10時に始まった対局は12時4分に終局。結果は94手で徳田四段の勝ちとなりました。前日おこなわれた第1局も徳田四段が勝っており、2連勝で優勝が決まりました。

 今年4月に棋士としてデビューした徳田四段は棋戦初優勝。今年度成績は驚異の21勝1敗(勝率0.955)です。

 また現在は18連勝中。勝率、連勝ともに全棋士中トップです。

快進撃の四段 VS. 実績十分の奨励会三段

 デビュー時、まずは初の山口県出身の棋士として注目された徳田四段。その後はすさまじい勢いで勝ち続けてきました。本棋戦では宮嶋健太三段、藤本渚三段(現四段)、高田明浩四段、冨田誠也四段を連破して決勝まで勝ち上がってきました。

 齊藤三段は岡部怜央四段、石井直樹アマ、里見香奈女流五冠、山本博志四段に勝って決勝進出です。

 齊藤三段は新人王戦においては2020年に決勝三番勝負に進出(池永天志現五段に2連敗で敗退)。今年は準決勝まで進み、服部慎一郎現五段に勝勢の将棋を逆転されて惜しくも決勝進出はなりませんでした。

「それだけ強い人がなぜまだ奨励会三段なのか・・・」

 そう思われる方も多いでしょう。それだけ三段リーグは厳しいわけです。すでに年齢制限に該当する26歳になっている齊藤三段。前期は10勝8敗でリーグ勝ち越しを決め、規定により今期のリーグにも参加します。

第1局、徳田四段のハードパンチ決まる

 加古川市、加古川市ウェルネス協会が主催する本棋戦。決勝三番勝負の舞台は、加古川市内の名刹・鶴林寺です。

 第1局は10月15日14時開始。三番勝負開幕に先立つ振り駒の結果、先手は徳田四段に決まりました。戦型は角換わり腰掛銀。徳田四段が仕掛けたのに対して齊藤三段も応戦。激しい攻め合いとなりました。

 71手目。徳田四段は齊藤玉の上に飛車を走って王手をかけます。持ち時間1時間のうち、残りは徳田1分。齊藤三段はすでに時間をすべて使い、1手60秒未満で指す「一分将棋」でした。

 72手目。無難に収めるならば銀や歩を合駒に打ちたいところ。結果的には、そう指していれば齊藤三段ペースの終盤だったようです。

 本譜、齊藤三段は強く玉をかわし、三段目に玉を上がります。積極的によさを求めた受けでしたが、本局では裏目に出ました。

 徳田四段は飛車を逃げず、相手陣に角を打ち込むハードパンチを浴びせました。この一撃が痛烈で、形勢は一気に徳田四段優勢に。

 最後は齊藤玉は受けがなく、徳田玉は詰みがない形。16時18分、91手で徳田四段の勝ちとなりました。

第2局、相掛かりで徳田四段快勝

 第2局は16日10時開始。もし齊藤三段勝ちならば14時から第3局がおこなわれる予定でした。

 先後が替わって、第2局は齊藤三段先手。戦形は相掛かりに進みました。現代最前線の攻防が早いペースで進んでいきます。齊藤三段の飛角が中段に躍り出て、受け間違えれば攻めつぶされそうなところ、徳田四段はうまく対応。反撃に転じて優位に立ちました。

 88手目。徳田四段は金を捨てて王手をかけます。これがうまい決め方。最終盤を正確に乗り切って、勝利を収めました。

 徳田四段は本棋戦に優勝して、大きな勲章を手にしました。

決勝を戦った両者の今後

 徳田四段は現在まで、年間最高勝率の期待がかかるほどのペースで勝ち続けています。

 また18連勝は現在、歴代10位タイです。

 齊藤三段は決勝三番勝負と奨励会例会が重なったため、これから三段リーグを戦います。実力が十分なのは、本棋戦や新人王戦でも明らかな通り。今期、四段昇段を果たすことはできるでしょうか。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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