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黒田尭之五段(26)エース横歩取りで服部慎一郎五段(23)に勝利 新人王戦決勝三番勝負第1局

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 10月3日。大阪・関西将棋会館において第53期新人王戦決勝三番勝負第1局▲服部慎一郎五段(23歳)-△黒田尭之五段(26歳)戦がおこなわれました。棋譜は公式ページをご覧ください。

 10時に始まった対局は15時26分に終局。結果は106手で黒田五段の勝ちとなりました。

 第2局は10月24日におこなわれます。

黒田五段、後手番でブレイク

 振り駒の結果、まず第1局で先手番を引いたのは服部五段。対して後手の黒田五段は自身のエース戦法である横歩取りに誘導しました。

 駒組が進み互いの飛車は、服部五段は8筋、黒田五段は2筋と、初期位置の逆サイドに配されます。

 昼食休憩明けの52手目、黒田五段が仕掛けて本格的な戦いが始まりました。

 服部陣は盤面左側に玉飛角が集まった形。「玉飛接近すべからず」という格言が示す通り、ともすれば悪形になるところです。黒田五段は服部玉周辺の陣形をとがめるべく、上部から動いていきました。しかし相手玉の上部は自玉の上部でもあるだけに、当然リスクもあるところ。ここから一気に終盤戦へと入ります。

 91手目。服部五段の側からは飛車を成り込みながら8筋を突破し、桂を取りながら王手をかける、気持ちのいい攻めがありました。しかし服部五段はあえてその順を見送り、逆サイドで銀を引きつけ、左右挟撃の形を作ります。いかにも上級者らしい寄せの構図の描き方でした。しかし本局の場合は、最善だったかどうか。

 黒田五段は力強く玉を上がり、相手の飛車に近づきながら力強く受けます。これもまたプロらしい指し回し。しばらく進むと、黒田五段の攻めが切れ模様となりました。

 102手目。黒田五段は桂でかけられた王手をかわします。これで後続がありません。服部五段は攻防ともに見込みがなくなり、投了。比較的早い時間での終局となりました。

 黒田五段は初の新人王戦優勝に向け、後手番で幸先のよい1勝をあげました。今年度成績はこれで10勝4敗です。

 成績ランキングで上位を走り続ける服部五段。公式戦成績は28勝9敗となりました。

 両者の通算対戦成績は黒田2勝、服部2勝で五分となりました。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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