Yahoo!ニュース

千日手指し直しで全局終了は午前3時18分!「将棋界の一番長い日」A級順位戦最終9回戦終了

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 3月3日9時。静岡県静岡市・浮月楼において第80期A級順位戦最終9回戦がおこなわれました。結果は以下の通りです。

斎藤慎太郎八段(8勝1敗)●-○糸谷 哲郎八段(6勝3敗)

佐藤 天彦九段(6勝3敗)○-●佐藤 康光九段(4勝5敗)

豊島 将之九段(5勝4敗)○-●菅井 竜也八段(3勝6敗)

広瀬 章人八段(5勝4敗)○-●羽生 善治九段(2勝7敗)

永瀬 拓矢王座(5勝4敗)○-●山崎 隆之八段(1勝8敗)

 斎藤八段は糸谷八段に敗れ、全勝はなりませんでした。

 前節で降級が決まっていた羽生九段。最終戦では広瀬八段と対戦しました。広瀬八段先手で、戦型は角換わり腰掛銀。中盤の難しい戦いのあと、羽生九段は飛車を切って攻めていきました。しかし反撃がきびしく、広瀬八段が一手勝ちに。最後、羽生九段は飛車を打って王手をかけ、角の合駒をされて投了を告げました。

 羽生九段は今期2勝7敗。A級で初めて2勝にとどまりました。

羽生「(今期A級を振り返って)やっぱり細かいところでのミスというか。判断がやっぱりよくなかったのかなあ、っていうのが、はい、まあそういう感じがしますね。(来期の順位戦に向けて一言)うーん、そうですね。今期の将棋をしっかり総括・・・まずはしなくてはいけないなと思いました。まずは9局しっかり振り返りたいと思います」

 19世名人資格者の羽生九段。来期はどうするのか、明言は避けました。

 18世名人資格者の森内俊之九段は2016年度A級で陥落したあと、翌年度のB級1組順位戦には参加せず、フリークラスに転出した例があります。

 もし羽生九段が来期B1に参加すると「鬼のすみか」もひときわ厳しさを増しそうです。

 豊島九段-菅井八段戦は序盤で乱戦に。そして深夜22時42分、111手で千日手が成立しました。

 指し直し局が始まったのは23時12分。豊島九段がリードを奪いましたが、菅井八段が攻防ともに手段を尽くして逆転。しかしまた豊島九段が粘っているうちに逆転。未明の3時18分、166手で豊島-菅井戦も終わり、「一番長い日」に幕が降ろされました。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

松本博文の最近の記事