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「翌年度から防衛戦も始まるので、しっかり実力を高めていければ」五冠を達成した藤井聡太新王将記者会見

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

――五冠達成の気持ちを改めて。

藤井聡太新王将「過去に五冠になられた方は本当に、時代を築いた偉大な棋士の方ばかりなので、とても光栄に思います。またそうですね。自分の場合はまだまだ、そういった立場に見合った実力がまだ足りないかなあ、というふうにも思うので、今後、さらに実力をつけていく必要があるかな、と思います」

――今年度、B級1組最終戦で勝てばA級昇級。新年度の防衛戦とタイトルのさらなる積み上げについて。

藤井「まず来月の順位戦が昇級のかかった対局になるので、しっかり、悔いのないように戦えればと思っています。また翌年度から防衛戦も始まることになるので、それに向けてしっかり実力を高めていければというふうに思います」

――タイトルを取っていくことの意義をいま現在どう考えているか。

藤井「これまでもタイトル戦の対局を経験させてもらう中で、いろいろ成長できた部分がとても多かったと思うので。タイトルを取るということ以上に、そういった舞台での対局というのを活かして成長につなげていくということが大事なのかな、というふうに思っています」

――今回の番勝負を通して自分なりに成長した部分、課題と思う部分は?

藤井「今回の王将戦は渡辺名人との2日制の対局という意味では初めてだったんですけど。そういった長い持ち時間で改めて対局してみて、特に中盤のバランスの取り方あたりでけっこう気付かない手を指されることが多かったので、そのあたりが特に勉強になったな、というふうに感じています」

――タイトル全八冠制覇について。

藤井「ただ翌年度からまた防衛戦が始まることになりますし、まだ具体的に目指すということではないのかな、というふうに思います。また、そうですね、そういった経験を通して実力を高めていくことで、そういったところに少しでも近づければいいのかな、というふうには思っています」

――普段の対局も高勝率だが、タイトル戦ではさらに勝率が高い。普段との違いは?

藤井「自分としてはあまりタイトル戦の対局と、普段の対局で特に、気持ちの違いなどはないんですけど。(小考)タイトル戦ですとまあ、各地を転戦して対局させていただくということが多いので、そういったところが自分にとっては、いいモチベーションになっている部分はあるのかもしれません」

――2日制の七番勝負をこれまで4回戦って、16勝1敗。

藤井「自分の場合は中盤で時間を多く使うことが多いので。2日制であったり、そういった長い持ち時間ですと、自分としてはなんというか、戦いやすいところがあるのかな、とは思います」

――他の棋士はこれまで以上に藤井新王将への対策をしてくると思われるが。

藤井「自分としてはなにか、やり方を大きく変えるとか、そういったことはないので。いままでやってきたことをまた積み上げていけたらというふうに思っています」

――4連勝ストレート勝ちできた要因は?

藤井「今回の番勝負、振り返ってけっこう中盤苦しい対局が多かったので、4連勝という結果はなんというか幸運だったのかな、というふうに思います。そういった苦しい局面でも粘り強く指して、終盤の競り合いに持ち込むことができたのが今回はよい結果につながったのかな、というふうには感じています」

――立川の街やSORANO HOTELの印象は?

藤井「立川は今回初めて訪れたんですけど。対局室の窓の目の前に公園(昭和記念公園)であったり、遠くに富士山も見えて。本当に、都会でありながら自然が豊かなところなのかな、というふうに感じました」

――藤井新王将の出身地、愛知県瀬戸市も盛り上がっていた。

藤井「本当に地元の瀬戸市の方にはいつも応援していただいて、とても励みになっています。今回また一ついい報告をすることができたのはうれしく思いますし、また、今後も地元の方に楽しんでいただけるように、がんばっていきたいと思います」

――子どものときは短時間の「切れ負け」でわりと負けることがあったと聞いた。短いのはきらいだった?

藤井「あー、そうですね・・・(苦笑)。当時そういった早指しの大会とか、特にきらいだったということはないんですけど。ただ、自分自身はけっこう昔から長考派ではあったので、当時からじっくり考えるのが好きだった、というところはあるのかな、と思います」

(藤井新王将の言葉はできるだけ忠実に再現し、記者からの質問は簡略に表記した)

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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