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外は雨、盤上は矢倉急戦模様 棋聖戦第3局▲渡辺明名人-△藤井聡太棋聖戦始まる

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 7月3日9時。静岡県沼津市・沼津御用邸東附属邸第一学問所において第92期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第3局▲渡辺明名人(37歳)-△藤井聡太棋聖(18歳)戦が始まりました。棋譜は公式ページをご覧ください。

 前日のインタビューでは両者、次のように語っています。

藤井棋聖「6月はかなり対局数多かったんですけど、状態としては体調もいいですし、明日も今まで通り臨めそうかな、というふうには思ってます」「防衛のかかった一局という形にはなりますけど、そのことは意識せずに、明日も盤上に集中して指せればというふうに思っています」

渡辺挑戦者「状態は変わりなく来てますけども。間隔はけっこう空いてるんで。そういった、ここに向けての準備という点では、十分な間隔は空いてきたので。明日、がんばっていきたいなというところですね」「ここまで一つも勝ててないんで、明日やっぱり一つ返していきたいっていう、そういう気持ちで戦っていきたいと思います」

 今朝の対局現地は雨。中継の映像でも、窓の外でかなりの雨が降っているのがわかります。対局者の耳に、雨音は心地よく響くでしょうか。

 8時44分。まず対局場に姿を見せたのは渡辺名人。信玄袋から扇子と懐中時計を取り出し、畳の上、自身と将棋盤の間に置きました。

 8時47分。続いて藤井棋聖が入室。床の間を背にして、上座にすわります。信玄袋からハンカチや除菌シートなどを取り出し、自身の右横に置きました。

 駒箱を手にするのは、本棋戦では上位者の立場の藤井棋聖。駒袋のひもが固く結ばれていたのか、ひもを解くのに少しだけ時間がかかりました。

 お~いお茶杯王位戦七番勝負第1局では、対局者のかたわらには伊藤園「お~いお茶」のペットボトルが置かれていました。

 本局。ヒューリック杯棋聖戦第3局では、藤井棋聖のそばにはサントリー「伊右衛門」が置かれました。

 藤井棋聖はグラスに「伊右衛門」を注ぎ、対局開始のときを待ちます。

 第1局は渡辺挑戦者、第2局は藤井棋聖が先手で、戦型はいずれも相掛かりでした。本局の先手は渡辺挑戦者。まずその作戦が注目されます。

 本局の立会人は地元静岡県在住の青野照市九段。先日、名古屋でおこなわれた王位戦第1局も青野九段が立会人でした。

 9時。 

青野「定刻になりましたので、渡辺挑戦者の先手番で始めてください」

 青野九段が声をかけて、両者「お願いします」と一礼。対局が始まりました。

 渡辺挑戦者は一呼吸をおいて、7筋の歩を一つ前に進め、角筋を開きました。

 藤井棋聖はマスクをずらせて伊右衛門を飲みます。そして手を拭いて、8筋、飛車先の歩を伸ばしました。

 3手目。渡辺挑戦者は左側の銀を上がります。戦型は矢倉模様となりました。

 6手目。藤井棋聖は7筋の歩を突きます。これは速攻の姿勢を見せています。もしかしたら序盤から激しい戦いになるのかもしれません。

 戦略家の渡辺挑戦者はどこまで想定しているのか。やはりカド番に追い込まれていた昨年の第3局では深い研究が的中し、勝利を収めています。

 9時26分頃、藤井棋聖は22手目、飛車を一路横の7筋に寄せます。袖(そで)の位置なので「袖飛車」と呼ばれる位置。最近見られるようになった急戦の構えです。

 渡辺名人はすぐに5筋の歩を突きます。時間の使い方からして、まだ想定の範囲内と思われます。

 9時40分を過ぎた現在は、藤井棋聖が28手目を考えています。「急戦模様」ではありますが、急戦になるかどうかはまだわかりません。

 棋聖戦五番勝負の持ち時間は各4時間。通例では夕方から夜にかけて終局となります。

今期第1局は18時24分。第2局は20時3分に終わりました。

 本日19時からはABEMAトーナメントも放映。将棋ファンにとっては忙しい土曜日となりそうです。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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