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A級昇級あと1人は永瀬拓矢王座(28)か? 木村一基九段(47)か? 3月11日、B級1組最終戦

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 3月11日。B級1組最終13回戦がおこなわれます。

 対戦カードは以下の通りです。

△山崎 隆之八段(9勝2敗)-▲郷田 真隆九段(7勝4敗)

▲永瀬 拓矢二冠(8勝3敗)-△近藤 誠也七段(7勝4敗)

▲木村 一基九段(7勝4敗)-△深浦 康市九段(3勝8敗)

▲久保 利明九段(5勝6敗)-△千田 翔太七段(5勝6敗)

△松尾  歩八段(5勝6敗)-▲阿久津主税八段(4勝7敗)

▲屋敷 伸之九段(5勝6敗)-△行方 尚史九段(3勝8敗)

(▲=先手、△=後手)

昇級決定の山崎八段、トップ通過なるか?

 現在の成績トップは山崎隆之八段(40歳)。前節12回戦では久保利明九段(45歳)に敗れました。しかし競争相手の郷田真隆九段(49歳)も松尾歩八段(40歳)に敗れたため、すでに初のA級昇級が決まっています。

 もしあの勝敗が入れ替わっていたら・・・。そんな「たられば」の話をすればキリがありません。しかしもし前節で郷田九段が勝勢の局面から押し切り、松尾歩八段に勝っていれば。最終戦の山崎-郷田戦は両者ともにA級昇級をかけて、しびれるような鬼勝負となっていたところでした。山崎八段と郷田九段は過去に20回対戦し、山崎7勝、郷田13勝という成績です。

 この状況でももちろん、山崎-郷田戦は消化試合ではありません。わずか順位1枚の差が大きく響いてくるのが順位戦。両者にとっては来期の順位をかけての戦いとなります。

 山崎八段は勝てば10勝2敗でトップ通過。来期のA級順位は10人中9位となります。もし山崎八段が敗れて永瀬拓矢王座(28歳)と9勝3敗で並べば、順位上位の永瀬王座がトップ通過です。

永瀬王座は自力昇級の権利

 A級への昇級2枠のうち、残るはあと1枠。そこに入る可能性が残されているのは永瀬王座と木村一基九段(47歳)の2人のみです。

 永瀬王座は「自力」の立場。自身が勝つか、あるいは木村九段が敗れれば昇級が決まります。

 永瀬王座はその肩書が示す通りのタイトルホルダー。すでにタイトル3期を獲得して、九段に昇段しています。今期B級1組ではもちろん昇級候補の本命格でした。

 近藤七段は近年異例のスピード出世でB級1組まで駆け上がってきました。

 近藤七段は今期出足3連敗。しかしそこから巻き返し、7勝4敗の好成績です。参加1期目で順位最下位のため、すでに昇級の目はありません。しかしもし最終戦で永瀬王座に勝てば、来期につながる大きな1勝なのは言うまでもありません。

 永瀬王座と近藤七段は過去に4回対戦し、永瀬3勝、近藤1勝という成績です。

他力の木村九段、逆転昇級なるか?

 木村九段はA級通算5期。前期順位戦において、A級からB級1組に降級しました。

 木村九段は自身が勝ち、永瀬王座が敗れて8勝4敗で並ぶと、順位上位の木村九段が逆転で昇級できます。

 木村九段の最終戦の相手は深浦康市九段(49歳)です。昇級と降級の可能性がある2人が対戦する、これぞ順位戦というめぐり合わせになりました。

 深浦九段は今期不振で3勝8敗。大変苦しい状況ですが、残留するためにはともかくも、自身が勝つよりありません。

 両者は過去に23回対戦し、深浦13勝、木村10勝。拮抗した数字が残されています。

 王位戦七番勝負では深浦王位に木村八段が挑戦。木村3連勝のあと、深浦4連勝という、将棋史に残る大逆転防衛となりました。

 将棋は逆転のゲーム。最後まで何が起こるのかわからないのが、将棋界というところです。

 来期B級1組、A級から降級してくる2人は三浦弘行九段(47歳)と稲葉陽八段(32歳)。B級2組から昇級してくる3人は藤井聡太二冠(18歳)、佐々木勇気七段(26歳)とあともう1人。今期も来期も、B級1組は大激戦区です。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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