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勝てば昇級の藤井聡太二冠(18)窪田義行七段(48)の四間飛車を受けて立つ B級2組10回戦

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 2月9日。東京・将棋会館においてB級2組順位戦10回戦▲窪田義行七段(4勝4敗)-△藤井聡太二冠(8勝0敗)戦が始まりました。

 東京の対局室でもっとも格式が高い特別対局室(特対)には竜王戦1組▲羽生善治九段-△永瀬拓矢王座戦が配されています。

 部屋の格式は、特対の次は高雄、雲鶴、棋峰と続きます。この3部屋はふすまをとりはずすと一続きとなり「大広間」とも言われます。大広間にはB級2組の6局が配されました。本日の東京はよく晴れていて、大広間の窓の外からはやわらかな光が差し込んでいます。

 高雄の間では藤井二冠-窪田七段戦と、谷川浩司九段-中村修九段戦。中村九段は前節、藤井二冠と対戦しました。

 中村九段は藤井二冠戦に続いて、本日も和服で対局に臨んでいます。

 9時34分頃、藤井二冠は対局室に姿を見せ、窓側の上座に着きます。かたわらに黒いリュックを置き、扇子などを取り出しました。

 藤井二冠は本日、自身が勝てば無条件でB級1組昇級が決まります。また3番手の横山泰明七段、4番手の中田宏樹八段が敗れても昇級決定です。

 9時40分頃、窪田七段が姿を見せます。

 窪田七段はまず、棋峰、高雄の空気清浄機の位置を調整します。続いて座布団の上にクッションを置きました。窪田七段は対局に臨む際、多くのものを持参することでも知られていて、中継を見ている視聴者は、まずそこに注目することになります。

 対局開始前、両対局者は駒を並べます。藤井二冠はオーソドックスな大橋流。窪田七段は比較的珍しい伊藤流です。

「それでは時間になりましたので、窪田先生と谷川先生の先手番でお願いいたします。

 定刻10時。記録係が対局開始の合図をして、対局者は一礼しました。

 窪田七段はまずスーツの上着を脱ぎます。そして初手に7筋の歩を一つ進め、角筋を開けました。

 藤井二冠はいつも通り、まずは紙コップに注がれたお茶を口にします。そしてまたいつも通り、8筋、飛車先の歩を突きます。先手の相手がどう来ようとも、何でも受けて立つ姿勢を示す、デビュー以来変わらないスタイルです。

 藤井二冠が居飛車党なのに対して、窪田七段は振り飛車党。まずは窪田七段の作戦が注目されるところでした。

 藤井二冠が2手目を指してすぐ、窪田七段は7筋の歩を手にします。その歩を六段目から五段目に進めるのか・・・と思いきや、裏返して「と」を見ただけで、元の位置に戻します。

 相手がすぐ指さないところを見て、藤井二冠もまた上着を脱ぎました。

 窪田七段は身の回りを整えたあと、おもむろに6筋に飛車を振ります。これは「四間飛車」。窪田七段が得意とする構えです。

 22手目。藤井二冠は角を上がって持久戦模様の構え。対して窪田七段は銀を中央に出る「腰掛銀」の構えです。

 11時過ぎ。昼食の注文が聞かれました。窪田七段は他の棋士の注文が書かれた紙をしばらく眺め、熟慮に沈みます。その上で、注文はありませんでした。

 29手目。窪田七段は飛車を一路左、6筋から7筋に移動させます。そして12時。藤井二冠の手番で昼食休憩に入りました。

 再開は12時40分です。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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