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永世竜王・羽生善治九段(50)今期竜王戦も白星スタート! 1組1回戦で佐々木勇気七段(26)に勝利

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 1月15日。東京・将棋会館において第34期竜王戦1組1回戦、羽生善治九段(50歳)-佐々木勇気七段(26歳)戦がおこなわれました。

 10時に始まった対局は22時12分に終局。結果は119手で羽生九段の勝ちとなりました。

 羽生九段は2回戦で永瀬拓矢王座(28歳)と対戦します。

羽生九段、依然若手の高い壁

 定刻10時。

「それでは時間になりましたので、羽生先生の先手番でお願いいたします」

 記録係が開始の合図をしたあと、両者は一礼。対局が始まりました。

 羽生九段はいつもどおりのゆったりとした手つきで、初手、角道を開けました。対して佐々木七段は一呼吸をおき、飛車先の歩を突きます。

 戦型は角換わり腰掛銀へと進んでいきました。現代の最前線です。

 両者が初めて対戦したのは2016年9月の棋王戦本戦。そのときは佐々木現七段先手で矢倉模様の立ち上がり。羽生現九段が変化して定跡形からはずれた戦いとなりました。結果は佐々木勝ちとなりました。

 両者は非公式戦では2018年、第1回AbemaTVトーナメント準決勝で対戦しています。

 早指しの対局で、結果は佐々木現七段の2連勝でした。

 本局は互いに手待ちをしながら間合いをはかりあう展開。47手目、羽生九段は桂を中段に跳ねて動きました。対して佐々木七段はその反動を利用してカウンター。盤面全体で戦いが始まりました。

 64手目。佐々木七段は桂で取れる金を取らず、ぶつかっている6筋の歩を取り込みます。羽生九段にとっては、意外な手だったのでしょうか。

「いやあ、そうか・・・」

 羽生九段は頭に手をやりながら、そうつぶやきました。形勢はほぼ互角です。

 67手目。羽生九段は佐々木陣に銀を打ち込みました。18時、その局面で夕食休憩に。佐々木七段はひとり盤の前を離れず、考え続けます。

 18時40分、対局再開。夜戦に入ってもほぼ互角の中盤戦は続き、形勢は離れないまま終盤戦を迎えました。

 79手目。どう指すべきか難しそうなところで、羽生九段は22分考え、桂を控えて打ちます。持ち時間5時間のうち残りは羽生1時間14分、佐々木48分。

 振り返ってみれば、この桂打ちが滋味あふれる好手だったようです。羽生九段は桂を基点として佐々木玉を上から押していきます。

 形勢はほぼ互角ながら、佐々木七段の時間は削られていきます。そして形勢も次第に羽生九段よしへと推移します。

 佐々木七段は持ち時間を使い切り、94手目からは一手60秒未満で指す一分将棋に。対して羽生九段は39分を残しています。

 控えて打たれた羽生九段の桂は、進んでみると相手の角を取り、さらには金を取る大戦果をあげました。

 最終盤の寄せ合い。羽生九段はきれいな左右はさみ撃ちの形を作り、佐々木玉を受けなしに追い込みます。

 佐々木七段も飛車を成り込んで羽生玉に迫りますが、しっかりと角を打たれて受けられ、届きません。

「50秒、1、2、3、4、5、6、7」

「負けました」

 佐々木七段は作法通り駒台に手を添え、投了を告げました。

 若手を相手に底知れぬ実力を見せつけた羽生九段。今期竜王戦も初戦勝利でスタートしました。羽生九段と佐々木七段の公式戦対戦成績は、これで1勝ずつとなりました。

 次戦、羽生九段は永瀬王座との対戦。そちらもまた注目の一番です。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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