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盤上のメリークリスマス! A級順位戦6回戦▲羽生善治九段(50)-△豊島将之竜王(30)始まる

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 12月25日10時。大阪・関西将棋会館においてA級順位戦6回戦▲羽生善治九段(2勝3敗)-△豊島将之竜王(3勝2敗)戦が始まりました。棋譜は「名人戦棋譜速報」などをご覧ください。

 東京在住の羽生九段は前日からアウェイの大阪に移動しての対局となります。

 昨夜のクリスマスイブはB級1組順位戦の熱闘を観戦していて眠れなくなり、今朝は寝不足、という方も多いのではないでしょうか。木村一基九段-行方尚史九段戦は千日手指し直しとなりました。

 昇級争いの直接対決となった山崎隆之八段-永瀬拓矢王座戦は深夜0時55分、166手で山崎八段の勝ちとなりました。

 山崎八段はいよいよ初のA級昇級に近づきつつあります。

 現在、A級10人のうち関西本部所属の棋士は、豊島竜王、糸谷哲郎八段、稲葉陽八段、菅井竜也八段、斎藤慎太郎八段の5人。そこに先輩格の山崎八段が加われば、ますます関西勢が手厚くなります。

 深夜の順位戦といえば、先日のA級▲菅井八段-△糸谷八段戦も壮絶な戦いでした。

 早指しで鳴らす菅井八段が持ち時間を使い切って60秒未満で指す「一分将棋」に追い込まれることはめったにありません。菅井八段が持ち時間6時間の順位戦で初めて時間を使い切った対局は、今期A級2回戦の豊島竜王戦だそうです。

 夜が明ければ、また本日も朝から順位戦が始まります。対局室は関西将棋会館5階・御上段の間。開始10分前には豊島竜王、羽生九段ともに席に座っていました。

 定刻10時。

「それでは時間になりましたので、羽生先生の先手番でお願いいたします」

 両対局者は「お願いします」と一礼をして対局が始まりました。

 戦型は後手番の豊島竜王が誘導する形で、羽生九段の横歩取りとなりました。両者ともに先手後手、表裏いずれを持っても実戦例が豊富で研究の深い形です。

 先手有利が確定したと思われたところから、後手に新工夫が出て見直される。ここ百年ぐらいの横歩取りはその繰り返しです。本局もまた、時代の最先端の横歩取りが見られそうです。

 竜王戦七番勝負は12月6日、豊島竜王が第5局に勝って閉幕しました。

 対局が1度延期された関係で、最終第7局の日程は発表されませんでした。もしフルセットにまでもつれこんでいれば、年末におこなわれたのでしょうか。

 竜王戦に関する思い出の多くは、年の瀬のあわただしい時節の記憶とともにあります。

 羽生六段が第2期竜王戦七番勝負第8局に勝ち、4勝3敗1持将棋で島朗竜王(肩書はいずれも当時)を破って初めて竜王位を獲得したのは、今から31年前、1989年12月27日のことでした。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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