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朝日杯5回優勝のレジェンド羽生善治九段(50)今期二次予選1回戦で八代弥七段(26)に勝利

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 12月10日。東京・シャトーアメーバにおいて第14回朝日杯将棋オープン戦二次予選1回戦▲八代弥七段(26歳)-△羽生善治九段(50歳)戦がおこなわれました。棋譜は公式ページをご覧ください。

 14時に始まった対局は15時41分に終局。結果は108手で羽生九段の勝ちとなりました。

 羽生九段はこれで二次予選決勝に進出。19時からの予選決勝で野月浩貴八段と対戦します。

レジェンド羽生九段、さすがの快勝

 羽生九段は本棋戦過去13回のうち5回優勝。ここでも圧倒的な成績を誇ります。

 一方の八代七段は2016年度、22歳五段のときに一次予選から駆け上がって、初優勝を飾っています。

 新鋭が並み居る強豪を連破しての快挙でした。そして先駆けされたと感じた親しい若手棋士の間では「八代ショック」と呼ばれたそうです。

 翌2017年度。羽生竜王は本戦で高見泰地五段、八代六段と、有望な若手棋士2人を連破しています。(肩書はいずれも当時)

高見 同日に2人。あれは忘れられない日になると思います。「たぶん、羽生先生に2人同日に負けることはこれから生涯ないだろうね」と、2人でその日の夜に話し合いました。だから、これは悔しい日だけど、「記念すべき日」でもあるという話になりました。(引用:将棋界・20代の逆襲 高見泰地六段

 八代七段にとっては、それ以来の羽生九段の対戦となります。

 本棋戦は持ち時間40分の早指し。予選、本戦ともに対局者は1日2局指すことがあります。本局の勝者はすでに勝ち上がっている野月浩貴八段と、夜から二次予選決勝を戦います。

 振り駒の結果、先手は八代七段。戦型は矢倉脇システムになりました。

 八代七段が棒銀に出たタイミングで、羽生九段は角交換。八代七段の棒銀がさばける前に激しく攻めかかります。

 大駒が華々しく動きあって、駒割は八代七段が得をします。一方で手番をキープして攻め続ける羽生九段。八代陣は8筋から突破されましたが、形勢は不明です。

 83手目。羽生九段は飛車を逃げながら、八代陣に残された棒銀を横利きでねらいます。八代七段はそれをどう受けるか。

 本譜、八代七段は7筋に銀を投資しました。しかしそこからは羽生九段の攻めが巧みで、差がついてしまったようです。八代七段は感想戦ですぐに6筋に歩を打つ順を示していました。それならば依然形勢は難しかったようです。

 本譜は羽生九段の飛車が大きくさばけました。飛車交換のあと、八代陣に飛車を打ち込んではっきり優勢に。八代玉は左右はさみ撃ちの形を作られてしまい、逃れることができません。

 八代七段は最後、一段目に龍(成飛車)を入って羽生玉に王手をかけます。羽生九段は龍の利きから逃げながら、金銀3枚が残った矢倉城に入城します。羽生玉は詰まず、八代玉は受けなしです。

「50秒、1」

 そこまで読まれたところで八代七段は「負けました」と頭を下げました。羽生九段、見事な快勝で、予選決勝に進みました。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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