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藤井聡太二冠(18)順位戦18連勝&17連勝で通算35勝1敗! B級2組で北浜健介八段(44)に勝利

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 11月11日。大阪・関西将棋会館においてB級2組順位戦7回戦▲北浜健介八段(3勝2敗)-△藤井聡太二冠(5勝0敗)戦がおこなわれました。

 10時に始まった対局は22時50分に終局。結果は114手で藤井二冠の勝ちとなりました。

 藤井二冠はこれでB級2組6連勝。ただ一人無敗をキープし、また一歩昇級に近づきました。一方、北浜八段は3勝3敗となりました。

 藤井二冠はまた順位戦通算35勝1敗(勝率0.972)。史上最高のハイペースで勝ち進んでいることは、言うまでもありません。

 藤井二冠は順位戦初参加以来の史上1位タイ記録となる18連勝を達成したあと、近藤誠也現七段に敗れた1敗をはさみ、またそこから17連勝を記録したことにもなります。

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藤井二冠、急戦で北浜八段の中飛車を破る

 先手・北浜八段の作戦は中飛車。これは過去4局と同様で、大方の予想通りでした。対して藤井二冠は二枚の銀を中段に手早く繰り出して速攻を仕掛けます。

北浜「想定してた順とは違う形で、苦労の多い将棋になってしまったな、という反省がありますね。序盤で△7五歩▲同歩△7六歩と打たれて、もうすでに対応が難しいのかなあ、というか。作戦負け気味なのかな、という感じを受けました。そのあとは辛抱して持ちこたえるというか。そういう感じで」

 30手目、藤井二冠が角取りに△7六歩と打ったところで12時、昼食休憩に入りました。

12時40分、対局再開。御下段の間でおこなわれていた▲鈴木大介九段-△大石直嗣七段戦は12時50分、72手で大石七段の勝ちとなりました。ごくまれに、順位戦でもこうした早い終局はあります。

 ▲北浜八段-△藤井二冠戦は藤井二冠ペースながら、まだまだ先の長い戦いとなりました。

 14時。羽生善治九段(50歳)の体調不良により、翌12日から予定されていた竜王戦七番勝負第4局が延期される旨が発表されました。

 コロナ禍の今年度。こうした事情により公式戦が延期されたことは、これまで何度かありました。対局者の体調不良によりタイトル戦の日程が延期されるのは、史上初のこととなります。

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 54手目。藤井二冠は相手の角金桂が利いている焦点に歩を成り捨てます。これがうまい攻め方で、銀桂交換の駒得という実利まで得ました。しかしそれで決まったというわけではありません。

藤井「銀桂交換になったあたりで何か、うまく指せればと思ったんですけど、ちょっと具体的な手段がわからなくて」

北浜「難しいとこもあったような気がするんですけれども・・・。ちょっとどう指していいかわからなかったですね」

 藤井二冠は中盤で一方的に時間を使って、消費時間に大きな差がつくことがしばしばあります。しかし北浜八段も長考派のため、本局ではそうはならず、途中では北浜八段の方が時間を多く使う展開となりました。

 61手目、北浜八段が四段目に角を上がったところで18時、夕食休憩となりました。

 18時40分、対局は再開され、夜戦に。劣勢に立たされた北浜八段は、ベストを尽くして逆転のチャンスを待ちます。

 前年度B級2組最終戦。負ければ降級点というピンチに立たされた北浜八段は、勝てば昇級という横山泰明七段と対戦します。北浜八段は苦しい形勢をしのぎ、最後は白熱の終盤戦に持ち込んで、184手で逆転勝ちを収めています。

 本局も容易には差が広がりません。

藤井「△2四角と出られたところで、ちょっといい手がわからなくて。(相手の)5七飛車の形が思ったより安定してしまったので、そのあたりでもっと工夫が必要だったのかなと思います」

 本局、藤井二冠は優位を譲らず、ゴールへと向かっていきます。飛車と角、大駒4枚をすべて手にして着実に攻めが続く形。最後は馬(成角)を切って北浜玉に迫って粘りを許さず、素早くフィニッシュに持ち込みました。

北浜「もうちょっと終盤、拮抗した展開にできなかったのが、自分としては残念です」

 114手目。きびしい桂打ちをしばらく見つめていた北浜八段。頭をさげて一礼し、投了の意思を示しました。マスクをつけずに終盤戦を戦っていた藤井二冠。一礼を返し、報道陣が来るのを待つ間に、マスクをつけました。

 全10回戦のB級2組。これで両者ともに6戦を終えました。これからについて、両者は次のように語りました。

藤井「残り4局、せいいっぱい指したいと思います。(次戦の野月浩貴八段戦は)初手合になるかと思うんですが、順位戦なので、またじっくり指せればなと思います」

北浜「一局、一局、今まで通り、一生懸命指したいと思います」

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将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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