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挑戦者・羽生善治九段(50)緩急自在の指し回しで優位に立つ 竜王戦七番勝負第2局2日目午後

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 10月23日。愛知県名古屋市、亀岳林・万松寺において第33期竜王戦七番勝負第2局▲豊島将之竜王(30歳)-△羽生善治九段(50歳)戦、2日目の対局がおこなわれています。

 22日9時。豊島竜王先手で対局は始まりました。戦型は角換わり。豊島竜王がもっとも得意とする戦法といってもよさそうです。対して羽生九段はいつもの通り、相手の得意型を真っ向から受けて立ちます。

 14手目。羽生九段は早めに6筋の歩を突きます。これは新工夫。本局ではほどなく前例と合流しましたが、これまで何度となく指されてきた進行の中にも、新しいアイディアが見いだされたことになります。

 豊島竜王は早繰り銀。対して羽生九段は腰掛銀。豊島竜王が先攻して銀交換がおこなわれました。その銀を羽生陣に打ち込んで金との交換に成功。形勢はほぼ互角です。

 昼食休憩までに進んだ手数は53手。すでにこの段階で、52手で終局という第1局の記録的な短手数を超えました。

 再開後はスローペースとなります。羽生九段は桂を跳ねて反撃。銀桂交換の成果を得ました。

 59手目。豊島竜王は5筋の歩を進めます。盤上で歩が3か所ぶつかった局面で羽生九段が60手目を封じて1日目が終了しました。

 23日9時。羽生九段の封じ手が開封されて2日目の対局開始。羽生九段は8筋、飛車先の歩を前に進めます。これで4か所で歩がぶつかることになりました。

 豊島竜王が8筋の歩を取って応じたのに対して、羽生九段は今度は遠く、3筋に歩を打ちます。羽生九段らしい曲線的な指し回し。形勢はまだ互角ながら、羽生九段らしさが随所に現れた進行といえそうです。

 互いの玉まわりから少しずつ受けの駒が消えていき、戦いはそろそろ終盤の様相を呈してきます。

 69手目。豊島竜王が王手で銀を打ち込んだところで2日目昼食休憩に入りました。

 13時30分、対局再開。豊島竜王の攻め、羽生九段の受けが続きます。羽生九段からすれば、ここをしのいで反撃に移れば豊島玉への寄せが見えてきます。

 73手目の時点で、コンピュータ将棋ソフトが示す評価値を参考にすれば、羽生九段が大いに優勢ということになります。ただし依然難しい終盤戦どちらが勝つのかは、もちろんまだわかりません。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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