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熱闘200手、持将棋引き分け! 王将戦リーグ無敗決戦・豊島将之竜王-広瀬章人八段戦は指し直しに!

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 10月15日。東京・将棋会館において王将戦リーグ▲豊島将之竜王(30歳)-△広瀬章人八段(33歳)戦がおこなわれました。10時に始まった対局は20時57分に終局。結果は200手で持将棋(引き分け)となりました。

 持ち時間4時間のうち、残り時間は双方1分。指し直し局は持ち時間を各1時間として先後を入れ替え、21時27分に始まります。

豊島竜王、またまたまた持将棋

 昨年の竜王戦七番勝負を戦った両雄。過去の対戦成績は豊島11勝、広瀬9勝と拮抗しています。

 今期王将戦リーグ成績は豊島竜王2勝、広瀬八段1勝。豊島竜王は前局、藤井聡太二冠(18歳)に逆転勝ちを収めています。

 本局は豊島竜王先手。立ち上がりはいつものように両者得意の角換わり模様となりました。しかしそこから豊島竜王は変化して角道を止めます。そして現代風の雁木となりました。

 互いに自玉上部を厚くしての中盤戦。豊島竜王は飛車を転換して上部開拓に成功します。対して広瀬八段も馬で自玉上部の駒を取り、相入玉の可能性もある終盤戦となりました。

 ちなみに王将戦主催のスポーツニッポン紙は「玉」(ぎょく)を「王」(おう)、「入玉」(にゅうぎょく)を「入王」(いりおう)と表記します。このあたりは王将戦ならではです。

 豊島竜王リードと思われたところから、広瀬八段は追い込みを見せます。そしていつしか形勢は逆転し、広瀬八段優勢となりました。

 昨年のリーグ最終戦、広瀬八段は藤井聡太七段(現二冠)に頓死勝ちを収め、リーグ優勝を果たしています。その逆転を呼び込んだのはもちろん、広瀬八段の終盤力があればこそです。

 今度は豊島竜王が粘る番。そして上部に逃げ出す形を得ました。下から豊島玉を追い上げていく広瀬八段。豊島竜王に失着があったようで、広瀬八段が駒をかなり得する形になりました。

 豊島竜王は先に入玉(入王)を果たします。ただし点数が足りるかどうか。持将棋引き分けを成立させるためには大駒5点、小駒1点として、最低でも24点を確保しなければなりません。

 大駒が龍(成飛車)1枚しかない豊島竜王の側は、ギリギリ24点。自陣の駒を簡単に取られていけませんし、多少リスクを取って相手陣の駒を取りに行く必要もあります。

 今期叡王戦、豊島竜王は挑戦者として七番勝負を戦いました。そして2回の持将棋を経て叡王位を勝ち取っています。

 本局もまた、苦しいところで崩れません。そしてついに24点を確保。200手で持将棋にまでこぎつけました。

 タイトル戦番勝負における持将棋は基本的に、後日指し直しとなります。一方、そうでない場合には基本的に即日指し直しとなります。

 息つくまもなく、毎日のようにドラマが起こる将棋界。指し直し局が始まるのは夜更けのこれからです。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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