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豊島将之挑戦者追いついて3勝3敗2持将棋! 究極の歴史的死闘! 叡王戦は将棋史上初の七番勝負第9局へ

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 9月6日。神奈川県秦野市「元湯 陣屋」において叡王戦七番勝負第8局▲豊島将之竜王(30歳)-△永瀬拓矢叡王(28歳)戦がおこなわれました。

 10時に始まった対局は20時8分に終局。結果は75手で豊島将之挑戦者の勝ちとなりました。

 七番勝負はこれで3勝3敗2持将棋1千日手。持将棋は引き分けながら完結した1局として数えるため、将棋の七番勝負史上初めて「第9局」がおこなわれることになりました。

 9月21日におこなわれる第9局の先後と時間設定については、感想戦終了後、振り駒によって決められます。

豊島挑戦者、快勝で追いついた!

 優位に立った豊島挑戦者。夕食休憩後には強く踏み込んで決めにいきます。この判断がまた正確でした。

 日中には蝉の声が聞えていた陣屋での対局。夜になると秋の虫の声が聞えてきます。

 不屈の闘志で知られる永瀬叡王。しかし本局では珍しく、対局中にがっかりとした仕草を見せました。

 ほとんど望みのない局面を前にして、永瀬叡王は33分を使いました。そして豊島玉へ王手をかけます。豊島玉に詰みはありません。そして永瀬玉はほとんど受けなしです。

 半袖シャツ姿で戦い続けていた永瀬叡王。豊島挑戦者の応手を待つ間、上着を着て、マスクをつけます。

 永瀬叡王は豊島玉を追い込んで、形を作りました。

 手番が回った豊島挑戦者は、淡々と永瀬玉を詰めあげていきます。

 75手目。豊島挑戦者は桂を打って王手をかけます。

「負けました」

 永瀬叡王が静かに頭を下げ、第8局が終了しました。

 七番勝負の成績は両者ともに3勝3敗2持将棋1千日手となりました。

 将棋史上初めて、2回の持将棋が生じた叡王戦七番勝負。そして史上初めて「七番勝負第9局」がおこなわれることが決まりました。

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将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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