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丸山忠久九段(49)得意の一手損角換わりに羽生善治九段(49)は早繰り銀で対抗 竜王戦挑決第1局開始

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 8月17日。東京・将棋会館において第33期竜王戦挑戦者決定戦三番勝負第1局▲羽生善治九段(49歳)-△丸山忠久九段(49歳)戦が始まりました。棋譜は公式ページをご覧ください。

 対局がおこなわれるのは将棋会館4階・特別対局室。コロナ禍の中、両対局者ともにマスクをしています。羽生九段は準決勝に引き続いて、黒のマスクです。

 両対局者ともに駒を並べ終えたあと、記録係が振り駒をします。

「羽生先生の振り歩先です」

 畳の上には表の「歩」が3枚、裏の「と」が2枚出ました。

「歩が3枚です」

 第1局の先手は羽生九段と決まりました。第2局では交替して丸山九段が先手。両者1勝1敗でもし第3局がおこなわれる際には、また改めて振り駒となります。

 10時。

「それでは時間になりましたので、羽生先生の先手番でお願いします」

 記録係の声のあと、両対局者は「お願いします」と言いながら一礼。対局が始まりました。

 羽生九段は気息を整え、初手に角道を開けました。

 4手目。後手番の丸山九段は角交換に出ました。十八番の「一手損角換わり」の作戦です。

 羽生九段は丸山九段の馬(成角)を銀で取り返します。このやり取りで羽生九段の側は、銀の動きの分だけ1手得をします。先手でさらに手得となれば、先手がわるい理屈はなさそうにも思われます。しかし一概にそうとも言い切れないのが、将棋の奥深いところです。羽生九段もまたときおり、後手番でこの一手損角換わりを採用しています。

 丸山九段は藤井聡太棋聖戦、千日手指し直しのあとに後手番となり、やはり一手損角換わりを採用しました。結果は丸山九段の勝ちでした。

 本局5手目。丸山九段も銀を上がります。羽生九段は上着を脱いで、両者ともに半袖シャツ姿になりました。

 夏場の羽生九段は半袖派の代表格です。

 近年では永瀬拓矢二冠が半袖シャツ派として知られています。叡王戦七番勝負でもマイペースを貫き、和服から途中で着替え、半袖シャツで戦っています。

 21手目。羽生九段は四段目に銀を出ます。これは「早繰り銀」と呼ばれる形。手早く銀を繰り出して、速攻を目指しています。

 対して丸山九段は4筋に飛車を転換。早繰り銀の動きをけん制しました。前線で駒がぶつかって、展開次第では一気に激しい変化に突入する可能性もあります。

 28手目。丸山九段は飛車の威力を背景に、4筋の歩を進めていきます。ここまでの指し手はすべてノータイム。一手損角換わりのエキスパートのすごみが感じられるようなペースです。

 時刻は11時を過ぎました。現在は羽生九段が29手目を考えています。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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