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相掛かり、相うな重(藤4500円)の叡王戦第7局、永瀬拓矢叡王(27)リードで夜戦に入る

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 8月10日。東京・将棋会館において第5期叡王戦七番勝負第7局▲永瀬拓矢叡王(27歳)-△豊島将之竜王・名人(30歳)戦がおこなわれています。

 本局は永瀬叡王先手で相掛かり。飛車交換のあとの28手目、豊島挑戦者が7筋の歩を突き、永瀬叡王の手番で昼食休憩に入りました。

 昼食は両者ともにうな重でした。

 持将棋延長戦で、将棋史上初めて七番勝負第8局がおこなわれたのは1975年、第34期名人戦七番勝負(中原誠名人-大内延介八段)です。その第8局1日目、中原名人と大内八段はともにうなぎを注文しています。

 本局のうなぎは千駄ヶ谷の将棋会館から少しはなれた「鰻 渋谷 松川」から取り寄せられました。うな重のメニューは「菊」(3000円)、「桜」(4000円)、「藤」(4500円)、「葵」(限定、5500円)。

 本局では両対局者ともに「藤」でした。

 棋聖戦五番勝負第2局では、渡辺明棋聖は「桜」。挑戦者の藤井聡太七段は海老天重(2500円)でした。(肩書はいずれも当時)

 ちなみにタイトル戦の昼食は対局者の注文にもとづき、主催者側が費用を負担して用意します。将棋会館の普段の対局では対局者の負担となります。

 13時30分、休憩が終わって対局再開。永瀬叡王は和服からスーツに着替えます。これは永瀬定跡。そして半袖シャツ姿となっています。

 29手目。永瀬叡王は角筋を開きました。これで両者の角がにらみあう形です。

 読み筋と合致したのか、豊島挑戦者はすぐに角交換に応じます。

 第4局は豊島挑戦者先手で横歩取りとなり、30手目に角交換、34手目に飛車交換が完了しました。

 本局は27手目に飛車交換、31手目に角交換完了。互いの駒台に大駒がすべて乗せられ、盤上には緊張感が高まります。

 豊島挑戦者は左右の桂を三段目に跳ねます。先日おこなわれた名人戦第5局。豊島名人は左右の桂を積極的に跳ねていって、1日目で形勢をリードしました。

 本局、永瀬叡王は逆に豊島挑戦者の桂頭攻めを含みに、低い陣形でじっと待ちます。

 36手目。豊島挑戦者は中段に飛車を打ちました。これは飛車を縦横に使おうというねらいです。

 15時。両対局者にはおやつが出されました。

 両対局者の選択を見て、近所のローソンにウチカフェスイーツを買いに行くという「観る将棋ファン」の方も多いと思われます。(筆者もそうです)

 永瀬叡王の指し手を待つ間、豊島挑戦者はバスチーを口にします。

 37手目。永瀬叡王は34分を使ったあと、豊島陣に角を打ち込みます。盤上ではスリリングな戦いが始まりました。

 そのあとで永瀬叡王はティラミスに手を伸ばします。上にかかっているチョコレートパウダーが飛び散ってかかってこないだろうか。和服の際には気になるところと思われますが、永瀬叡王は半袖シャツなので、比較的選択しやすかったのかもしれません。

 豊島挑戦者は飛車を成り込んで龍、永瀬叡王は角を成り込んで馬を作りました。戦型の特性上、わりと短手数で終わっても不思議ではない進行。しかし両者が指すと長くなりそうに見えるのが不思議なところです。

 49手目。永瀬叡王は飛車を豊島陣二段目に打って攻めていきます。対して豊島挑戦者は相手の飛車と馬、2枚の攻め駒に寄っていくモーションで、玉を寄って受けました。

 18時。ここで30分の夕食休憩に入ります。

 夕食は両者ともに懐石料理。対局中の30分では、そうゆっくり味わう暇もないのかもしれません。

 18時30分。対局再開。永瀬叡王が巧みに攻め、豊島挑戦者の1枚の桂を歩で取ることができそうです。形勢は永瀬リードと言ってよさそうです。

 19時を過ぎた現在は56手目まで進みました。豊島挑戦者は反対側の桂を中段に跳ね出し、反撃をねらいました。先はまだまだ長そうです。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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