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藤井聡太七段(17歳11か月)は史上最年少タイトル獲得記録(18歳6か月)を更新できるか?

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

「藤井フィーバー」がいよいよすさまじいものとなりつつあります。それはもちろん、ここ最近の藤井聡太七段(17歳)の活躍がいよいよ目覚ましいからです。

 藤井七段の素晴らしさは、まず何よりも盤上の技術が卓越している点にあります。さらに指し手は華麗で美しく、ほぼ毎局と言っていいほどに、感動的な手が現れてきます。

 藤井七段はずっと、自身の棋力向上を第一の目標として掲げてきました。

 一方で、これまでのインタビュー時の発言などからも明らかな通り、自身が生み出す数々の記録については、ほとんど意識をしていません。

 以上を前提とした上で、藤井七段の活躍を伝える側としては、やはり藤井七段の記録に触れずにはいられません。

 藤井現七段は2016年に史上最年少(14歳2か月)で四段昇段。棋士としてデビュー以来、いきなり無敗で史上最多の29連勝を達成するなど、将棋界の大きな記録を次々と塗り替えてきました。

 2020年6月8日。藤井聡太七段は、史上最年少(17歳10か月20日)のタイトル挑戦者として棋聖戦五番勝負の舞台に登場しました。

 タイトル戦の最年少記録で「初挑戦」と「初獲得」については、屋敷伸之現九段が長く記録ホルダーでした。

「挑戦」は屋敷四段の17歳。

「獲得」は屋敷五段の18歳。

 昔はそうざっくり覚えておけば、たいていことが足りました。しかし藤井七段が記録更新できるかどうかが大きなトピックとなってからは、正確に日数までをカウントすることが求められるようになりました。

 「挑戦」の記録が更新された現在、次に大きな話題となるのは「獲得」の最年少記録でしょう。

 屋敷五段は1990年、2度目の挑戦で棋聖位を獲得しました。その時の年齢は18歳6か月14日です。この数字はこれからしばらくの間、頻繁に出てくることになると思われます。

 藤井七段は棋聖戦五番勝負第1局で渡辺明棋聖(36歳)に勝ち、幸先よく1勝をあげています。

 棋聖戦五番勝負は、先に3勝した方が棋聖位を獲得します。最短決着は第3局。持将棋(引き分け)といったレアケースがなければ、最長では第5局で決着がつきます。

 藤井七段の誕生日は2002年7月19日です。

 藤井七段がもし棋聖位を獲得した時の年齢は、第4局以前ならば17歳11か月。第5局(7月21日)ならば18歳0か月です。もしそうなれば、屋敷五段の記録を更新することになります。

 6月23日。藤井七段は王位挑戦権も獲得しました。

 七番勝負は7月1日に開幕します。

 最終第7局は9月28日・29日です。もし勝負が第7局までもつれこみ、そこで藤井七段が王位を獲得すると、年齢は18歳2か月。これも屋敷五段の記録を上回ります。

 藤井七段は現在、竜王戦も勝ち残っています。

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 今年度の竜王戦七番勝負の日程はまだ発表されていません。

 仮に藤井七段が最終戦で竜王位を獲得するとして、日程は昨年度七番勝負第7局(12月18日・19日)と同じとするならば18歳5か月0日です。多少日程が後ろにずれこんでも、竜王戦が例年通り12月中に決着となれば、屋敷五段の記録をギリギリ抜けることになります。

 一方で、それ以後の王将戦七番勝負ですと、記録更新はほぼ不可能と思われます。

 もし仮に藤井七段が王将リーグを勝ち抜いて七番勝負に登場し、最短の第4局で王将位を獲得するとして。仮に日程が昨年第4局と同じ2月20・21日ならば、その時点で藤井七段の年齢は18歳7か月2日です。

 第4局がもし2月1日に終われば、18歳6か月13日でギリギリ記録更新です。しかし例年、その頃までには第4局どころか第3局もおこわれていません。

 よって、王将戦七番勝負での記録更新は不可能と思われます。

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 まとめると、屋敷五段のタイトル獲得最年少記録「18歳6か月14日」を抜ける可能性があるのは、現在挑戦中の棋聖戦と王位戦。そして今後挑戦の可能性がある竜王戦。以上の3棋戦に限られます。

 もしタイトル獲得の瞬間が近づいてくれば、藤井フィーバーはさらに加熱していくのでしょう。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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