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王位挑戦まであと2勝の藤井聡太七段(17)リーグ白組最終戦は阿部健治郎七段(31)と角換わりで対戦

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 6月13日10時。東京・将棋会館において王位戦リーグ白組最終5回戦▲阿部健治郎七段(0勝4敗)-△藤井聡太七段(4勝0敗)戦が始まりました。棋譜は公式ページをご覧ください。

「それでは時間になりましたので・・・」

 午前10時。対局室である大広間で一斉に、各対局の記録係の声が響きます。

 先手は阿部七段。まずはマスクを口元からずらし、グラスに注がれた水を飲みます。そして飛車先の歩を伸ばしました。

 続いて藤井七段。こちらはグラスの冷たいお茶を飲みます。そして2手目に飛車先の一つ前の歩を突きました。藤井七段は後手番であればいつもこの手です。どんな戦型でも受けて立つという王道の姿勢で、これは2016年のデビュー以来ずっと変わりません。

 戦型は角換わりに進みました。紅組の▲永瀬拓矢二冠(4勝0敗)-△本田奎五段(1勝3敗)戦もまた角換わりです。

 13手目、阿部七段は1筋の端歩を突きます。藤井七段は少し考えて10時半頃、その端歩を受けます。

 ABEMAの解説は増田康宏六段が担当しています。

 増田六段によれば、最近は研究が進んだ角換わりが少し減り、変わりに矢倉が少し増えたそうです。

 10時50分の時点で15手目まで進みました。▲永瀬-△本田戦とまったく同一局面ですが、そちらの方はすでに相早繰り銀の戦いが始まり、35手目まで進んでいます。

 16手目、藤井七段は受けではなく攻めの銀を動かし、▲永瀬-△本田戦と違う局面となりました。

 永瀬二冠、藤井七段、増田六段はAbemaTVトーナメントで同じチームです。

 チーム永瀬の登場は明日14日。AbemaTVトーナメントはここまで毎週土曜日に放映されてきましたが、本日13日土曜日はこの王位戦リーグ最終局があります。

 プライベートでは非常に親しい間柄の永瀬二冠と藤井七段ですが、棋聖戦に続いて、王位戦でも挑戦者決定戦の舞台で対戦することになるかもしれません。

 棋聖戦では史上最年少でタイトル挑戦を決めた藤井七段。五番勝負第1局では王者・渡辺明棋聖(36歳)を相手に歴史的な名局を制しました。

 筆者から見れば2016年以来ずっと「藤井ブーム」「藤井フィーバー」は続いている感があります。その上で今後、さらに加熱する可能性は高そうです。

 いままた王位戦でも挑戦権に近づきつつある藤井七段。もし史上最年長でタイトルを初めて獲得した木村一基王位(46歳)に挑戦となれば、劇的な筋書きとしか言いようがありません。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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