Yahoo!ニュース

進撃止まらぬ天才・藤井聡太七段(17)竜王ランキング戦でデビュー以来18連勝!3組ベスト4に進出

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 3月12日。東京・将棋会館において竜王戦3組ランキング戦▲藤井聡太七段(17歳)-△高橋道雄九段(59歳)戦がおこなわれました。10時に始まった対局は20時54分に終局。結果は79手で藤井七段の勝ちとなりました。

 藤井七段はこれで竜王ランキング戦でデビュー以来18連勝。

 3組ランキング戦ではあと1勝で決勝進出。および2組昇級が決まります。

画像

 また杉本昌隆八段、藤井七段がともに準決勝で勝つと、決勝での師弟戦が実現します。

 もし藤井七段が3組優勝を飾れば、史上初の竜王ランキング戦4期連続優勝となります。

藤井七段、鮮やかに勝利

 後手番の高橋九段が得意の横歩取りに誘導したのに対して、藤井七段は現棋界で有力な対策と認識されている「青野流」を採用します。

 藤井七段が角頭に歩を打たずに進めるのに対して、高橋九段がそこに歩を垂らし、本格的な戦いが始まりました。

 飛車交換の後、高橋九段は自陣に攻防の飛車を打ちます。一見、藤井七段が困ったかのようにも見えますが、そこで桂を端に成り捨てるのが藤井七段の一連の構想でした。進めてみると、なるほど確かに、見事にバランスが取れています。

 高橋九段は得した桂を藤井陣に打ち込んで銀と交換。駒割は高橋九段の銀得となりました。それでも形勢はほぼ互角のようです。

高橋「途中、駒得にはなったんですけれど、形がよくないんで、あまり自信がなかったです」

藤井「激しい変化になったんですけれど、思った以上に成果が上がらなくて、苦しい展開になってしまったのかな、という気がします。思った以上に、こちらの手が難しい形になってしまったのかな、と思いました」

 高橋九段は再度飛車を交換し、端に角を出て藤井陣に利かせます。対して藤井七段はじっと歩を突いて、角を追います。序盤に二段目に打たされた歩を味よく一つ進めて、それも角取り。そのあたりから、形勢は藤井七段に傾いたようです。

 高橋九段も角を取らせる合間に藤井玉に迫る形を作り、終盤の寄せ合いとなります。

 藤井七段はそこで正確に一手勝ちを読み切りました。自玉にまだ余裕があるのを見越して、▲4三桂と打って居玉の高橋玉に王手をします。

藤井「▲4三桂が打てて、少し好転したのかな、と思いました」

 最後は藤井七段が角、銀、飛を順に捨てる、詰将棋のようなきれいな11手詰を見せて、終局となりました。

 藤井七段はこれで竜王ランキング戦通算18連勝を達成しました。順位戦のデビュー以来18連勝も偉業ですが、こちらもまた偉業です。

 ただしいつものように、藤井七段自身は記録に対する意識は見られませんでした。

藤井「それ自体はあまり意識することがないかな、と思いますが、また次の対局もあるので、そちらも全力を尽くして指したいと思います」

 藤井七段は準決勝で、千葉幸生七段-千田翔太七段戦の勝者と対戦します。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

松本博文の最近の記事