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名人候補・藤井聡太七段(17)圧巻のC級1組10戦全勝 デビュー以来の順位戦成績は29勝1敗に

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 3月3日。東西の将棋会館にわかれてC級1組最終10回戦▲真田圭一八段-△藤井聡太七段戦▲がおこなわれました。10時に始まった対局は22時25分に終局。結果は88手で藤井七段の勝ちとなりました。

 藤井七段は今期C級1組順位戦で10全勝を達成。またデビュー以来の順位戦成績は29勝1敗(勝率0.967)としました。

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 なんとも形容しがたい、驚異的な数字です。

 名人候補・藤井七段はまた一つステップアップ。来期はB級2組で戦います。

藤井七段、完勝でC級1組卒業

 真田八段の先手で、戦型は相矢倉となりました。解説の飯塚祐紀七段は、藤井七段の序盤の上手さを讃えています。

飯塚祐紀「藤井さんが序盤で作戦負けしたのをほとんど見たことがありません。居飛車で序盤が上手いのは藤井(聡太)さん。振り飛車で序盤が上手いのも藤井(猛)さん」

 現代の矢倉は互いに組み合う前に激しい戦いになることが多いのですが、本局では細かい駆け引きの末に、最近では目新しい、互いに金銀3枚の矢倉城を組み合う進行となりました。

 中盤は互いに飛角銀桂で攻め合う、由緒正しき矢倉戦の展開のようにも見えます。ぱっと見は似たような筋で攻めているように見えても、わずかな形の違いが大きく、実際にはいくらか差がついています。本局でもまた、藤井七段が上手い序盤を見せてリードを奪いました。

 真田八段の攻めに対して、藤井七段は崩れぬように正確に対応し、その合間をぬって真田陣にと金を作ります。

 そろそろ終盤に入ろうというところでは、藤井七段が大きく優位を築きました。

「いやだな、来年当たりたくないな」

 解説の橋本崇載八段がそうつぶやきます。来年度は抽選次第で、橋本八段と藤井七段はB級2組で対戦する可能性があります。

 ちなみに杉本昌隆八段と藤井七段の師弟は、B級2組での対戦は組まれません。

 藤井七段は相手陣に作ったと金を寄せ、自然に攻めていきます。最後はきっちり一手勝ちを読み切って、いつもながらに見事な収束を見せました。

 藤井七段はこれで今期C級1組10戦全勝を達成。昇級に華を添えました。

 また昇級のもう1枠は、佐々木勇気七段(25歳)が勝ち取っています。

 昇級を争った及川拓馬六段(32歳)、石井健太郎五段(27歳)は9勝1敗の好成績を挙げながらも及びませんでした。

 下表の通り、近年は9勝1敗で昇級できないケースが続いていました。C級1組在籍者数が増えていく中で、これはあまりに過酷すぎたでしょう。来期以降は昇級枠が改められ、2から3へと増えます。

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将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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