豊島将之竜王・名人(29)王位戦リベンジに向けて好発進 リーグ紅組開幕戦で本田奎五段(22)を降す
2月20日。大阪・関西将棋会館において第61期王位戦リーグ紅組1回戦▲豊島将之竜王・名人(29)-△本田奎五段(22歳)戦がおこなわれました。
10時に始まった対局は18時1分に終局。結果は102手で豊島竜王・名人の勝ちとなりました。
豊島竜王・名人、攻防の名角で逆転
王位戦リーグは紅白の2組に分かれて戦われます。白組は既に開幕しました。先日は藤井聡太七段(17歳)が羽生善治九段に勝っています。
豊島竜王・名人は前王位の立場です。前期七番勝負は木村一基九段(現王位)の挑戦を受けて、3勝4敗でタイトルを明け渡しました。
今期はリーグ戦からの登場となります。当然ながら、挑戦権争いの本命候補の一人と言えるでしょう。
一方の本田五段は今期が王位戦初参加。元王位の深浦康市九段を破るなど、強豪を連破して、一気に予選を突破しました。
本田五段は、やはり参加1期目の棋王戦で予選を突破し、一気に挑戦まで駆け上がっています。これは史上初の記録です。
王位戦五番勝負では現在、渡辺明棋王(35歳)に挑戦中。第1局では敗れたものの、第2局では白星をあげました。
本田五段は先手番で得意の相掛かりを採用。終盤では一波乱ありましたが、形勢は終始本田五段が押していたようです。
王位戦リーグの先後は、組み合わせ抽選時に全て決められています。本局では本田五段の先手。強敵を相手に、本局もまた相掛かりで臨みました。
両者ともにほとんど時間を使わず、棋王戦第2局と同様の進行をたどります。そして34手目。豊島竜王・名人はすぐに桂頭を攻める、前例にはない手を見せました。対して本田五段もノータイムで角を打ち返し、両者ともに研究が深いことをうかがわせました。
さて本局。盤上以外で目を惹いたのは、豊島竜王・名人が後にていた、深い青色のセーターでした。豊島竜王・名人は冬場にカーディガンやセーターを着るのが定跡のようです。
開始から1時間ほど経過したところで、本田五段は桂を中段に跳ねます。桂は前に進んだら、元には戻れません。不退転の決意で攻めることを表明したことになります。
その後は両者ともに時間を使い合う、難しい中盤戦となります。
本田五段の飛角桂の攻めに対して、豊島名人は桂取りに、五段目に飛車を浮きます。本田五段は角を切って一気に攻め込む順を見せました。角金交換の駒損ながら飛を成り込んで、本田五段がリードを奪ったようです。
豊島玉は左辺へと逃げ出します。本田五段は五段目に桂を打ち、上下はさみうちの態勢を作りました。玉を包むように寄せる、セオリー通りの一手です。
対して豊島名人はノータイムで角を打ちました。攻防の素晴らしい名角です。その角を取らせる代償に金桂をもらい、豊島玉はかなり安全となって、形勢は互角にまで戻されました。
豊島「形勢はいい勝負ぐらい。後手の方が手が難しいので、自信がなかったです」
局後に豊島名人はそう語っていますが、その後の流れはむしろ豊島竜王・名人に傾いたようです。豊島竜王・名人に反撃のターンが訪れ、駒を損しないで飛車を成り込むことに成功しました。
駒の損得はないものの、玉の安全度や駒の効率で、形勢は豊島勝勢。自陣に金を打ちつけ、本田五段の攻め駒である銀を取って、負けのない形を作りました。
最後、指そうと思えばまだ手数はかかりますが、本田五段は攻防ともに手段なしと見て、早めに投了しています。
本田五段は持ち時間4時間のうち、1時間以上を残していました。時間の使い方からして、ややあっけない感じもしましたが、逆転は難しそうです。
豊島竜王・名人はリターンマッチに向けて、好発進となりました。一方で本田五段は厳しい出だしとなりましたが、残りを勝てばまだ、挑戦権を争うチャンスはめぐってくるかもしれません。
本田五段はこの後、棋王戦五番勝負第3局が控えています。そしてその前に、折田翔吾アマの編入試験五番勝負第4局で対戦相手も務めます。
こちらも注目の大一番と言えるでしょう。