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里見香奈女流名人(27)女流名人戦五番勝負2連勝 ホームの出雲市で谷口由紀女流三段(26歳)を降す

松本博文将棋ライター
(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

 1月26日。島根県出雲市「出雲文化伝統館 松籟亭」において女流名人戦五番勝負第2局▲里見香奈女流名人(27歳)-△谷口由紀女流三段(26歳)戦がおこなわれました。持ち時間は各3時間。9時に始まった対局は16時15分に終局し、113手で里見女流名人の勝ちとなりました。

 里見女流名人はこれで2連勝となり、防衛まであと1勝と迫りました。

 第3局は2月11日、岡山県真庭市「湯原国際観光ホテル 菊之湯」でおこなわれます。

居飛車でも強い里見女流名人

 島根県は、旧国名で言えば、西が石見で東が出雲。先日、竜王戦七番勝負第4局がおこなわれた津和野は、石見でした。

 対局場の出雲市は里見女流名人の出身地で、ホームでの対局となります。

 谷口挑戦者は陸路での移動となりました。

 振り飛車党同士の両者の対戦は、第1局では相振り飛車となりました。

 第2局は里見女流名人が先手で、3手目に居飛車で指す方針を明らかにしています。一般論として振り飛車党の強者は居飛車を持っても強いことが多く、里見女流名人もそうだと言えるでしょう。

 対して谷口女流三段は中飛車に振りました。そして角交換から向かい飛車へとスイッチします。里見女流名人は穴熊に組んで、戦機をうかがいました。

 互いに角を持ち合って、打ち込みのスキが生じないように気を使いながらの中盤戦。後手番の谷口女流三段は自陣に角を据えて、積極的にリードをはかりました。里見女流名人もそれに応じる流れで自陣角を打ち、戦いに入りました。

 谷口女流三段は穴熊玉の上部から手を作ろうとします。しかし自玉の上部だけに、当然リスクは生じるところ。里見陣はいったんはバラバラになったものの、里見女流四名人は丁寧に復元して、相手が跳ねてきた桂を取る形を得ました。そして形勢は里見よしに傾いたようです。

 谷口女流三段は、今度は逆サイドから手を作ろうとしますが、里見女流名人はそれにも自然に応じ、手に乗ってすべての駒がさばけました。

 最後は穴熊の堅さ、遠さが生きる展開。里見女流名人が谷口玉の上部から攻め入って、快勝となりました。

 里見女流名人はこれで防衛まであと1勝。前人未到の女流名人位11期保持、女流タイトル戦11連覇がいよいよ現実的なものとなってきました。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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