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藤井聡太七段(17)史上最年少で王位リーグ入り決定 予選決勝で強敵の斎藤慎太郎七段(26)を降す

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 12月27日。大阪の関西将棋会館において王位戦予選決勝▲藤井聡太七段(17歳)-△斎藤慎太郎七段(26歳)戦がおこなわれました。10時に始まった対局は20時3分に終局。結果は121手で藤井七段の勝ちとなりました。

 17歳の藤井七段は史上最年少での王位リーグ入りを決めました。

藤井七段、大きな白星で2019年を締めくくる

 前期王位戦は木村一基九段が史上最年長の46歳でタイトルを獲得するという、劇的な幕切れとなりました。

【前記事】

世界よ、これが千駄ヶ谷の受け師だ! 百折不撓の男・木村一基九段(46歳)史上最年長で初タイトル獲得

 2019年の将棋界もいろいろなことがありましたが「木村王位誕生が最も印象に残る出来事だった」というファンの方も多いことでしょう。

 今期王位戦リーグは、前王位の豊島将之竜王・名人と、前期でリーグ残留を決めている永瀬拓矢叡王、羽生善治九段、菅井竜也七段の4人の参加は既に決定済み。そして残り8枠を予選で争っています。

 藤井七段は初のリーグ入りを目指して、予選決勝まで進出しました。

【前記事】

聖火ランナーに決まった藤井聡太七段(17)王位戦予選は決勝に進出 出口若武四段(24)を降す

 一方の斎藤七段もまた初のリーグ入りを賭けて、本局に臨んでいます。言うまでもなく、両者にとっては大きな一番です。

 両者は公式戦では2018年度に2回対戦しています。王座戦本戦トーナメント準決勝では斎藤七段が勝ち、王座獲得へとつながりました。また同年の叡王戦本戦1回戦も斎藤勝ち。つまり斎藤七段の2連勝となっています。

 非公式戦では2017年、「炎の七番勝負」で対戦。こちらは藤井四段(当時)が勝っています。

 振り駒の結果、先手は藤井七段。戦形は角換わり腰掛銀となりました。藤井七段は新人王戦の記念対局(非公式戦)で豊島将之二冠(当時)に勝っています。斎藤七段も経験があり、当然ながら両者ともに詳しい。現代将棋の最前線での戦いとなりました。

 両者ともにほとんど時間を使わず五十数手進んだところで、藤井七段が新手法を見せます。そこで斎藤七段が時間を使い、力の入った中盤戦となりました。

 斎藤七段が質駒の桂を銀で取り、その桂を攻めに使います。そこから大きな動きがあり、華々しく駒のやり取りがされましたが、形勢は微妙に保たれています。

 終盤戦に入り、本格的な寄せ合いとなったところでは、藤井七段がリードを奪っていたようです。

「気づいたら不利になっていた気がするなあ」

 感想戦で斎藤七段はそうつぶやいていました。

 互いに玉の近くに成った相手の大駒が迫る最終盤。藤井七段はいつもの通り、落ち着いていました。時間がほとんど残っていないにもかかわらず、指し手は正確そのもの。斎藤七段の放った攻防に利く飛車打ちにも間違えず、きれいに一手勝ちを収めています。

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 藤井七段はこれで初の王位戦リーグ入りを決めました。

 もし藤井七段が勝ち進んで七番勝負で木村王位に挑戦となれば、それは大変な盛り上がりを見せることでしょう。

 藤井七段の通算成績はこれで150勝30敗(勝率0.833)となりました。150勝は通過点というところでしょうが、それにしても相変わらずの高勝率です。

 今期成績は34勝10敗(勝率0.773)。勝数ランキングでは佐々木大地五段と並んでトップに立っています。

 ところで本日は、その佐々木五段に棋王戦挑戦者決定戦で勝った本田奎四段(新五段)が棋王挑戦権を獲得しています。

【参考記事】

将棋界のニュースターが棋王戦五番勝負に登場決定! 本田奎四段(22)史上2位の最速記録でタイトル挑戦

 強い若手棋士は藤井七段だけではありません。佐々木五段、本田新五段もまた強い。そして来年の将棋界では、どのような新しいスターが現れるでしょうか。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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