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「アゲアゲ将棋」折田翔吾さん(30)の棋士編入試験始まる 黒田尭之四段(23)は意表の初手端歩

松本博文将棋ライター
(記事中の写真撮影・画像作成:筆者)

 11月25日10時。大阪の関西将棋会館において、棋士編入試験五番勝負第1局▲黒田尭之四段(23歳)-△折田翔吾アマ(30歳)戦が始まりました。

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YouTuber折田翔吾さん(30)11月25日に棋士編入試験第1局 相手は黒田尭之四段(23)

 振り駒の結果、第1局の先手は黒田四段に決まりました。黒田四段、折田さんはともに居飛車党です。事前の作戦予想も居飛車系統の相掛かりや横歩取りなどが挙げられていました。

 黒田四段の注目の初手は▲1六歩。飛車サイド、右側の端歩を突きました。

「▲2六歩・・・じゃないんかい?! ここ?!」

 と解説の今泉健司四段。よくある飛車先の歩を伸ばす手ではなく、珍しい初手端歩でした。

 折田さんもこの初手は、おそらく予想していなかったでしょう。1分ほど使って気持ちを落ち着け△8四歩と飛車先の歩を伸ばしました。いつも通りのオーソドックスな立ち上がりです。

 黒田四段は端を突き越した後、四間飛車にしました。黒田四段自身にとっては、過去に公式戦では採用したことがない作戦のようです(ちなみに本局は、公式記録にカウントされないという点では非公式戦です)。この大一番に秘策をぶつけた、ということでしょう。

 折田アマ自身にとってはもちろん、人生をかけた負けられない勝負です。そして一方の黒田四段にも大きなものがかかっています。

「プロ棋士は負けることがいやなんです。どんな将棋であれ、負けることは屈辱だと思っています」

 今泉四段はそう語っています。プロがアマに負けることは、しばしばあることです。しかしそうであっても、プロがアマに負けることは屈辱であると考えるプロは多いようです。

 黒田四段の四間飛車に対して、折田アマは角を早めに四段目に上がる作戦を取りました。12時に昼食休憩に入った段階で、まだ玉形は完成していませんが、定跡形をはずれて、中盤から互いに神経を使う戦いがしばらく続きそうです。

 対局再開は12時40分。

 持ち時間は各3時間。終局時間は夕方頃が予想されます。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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