将棋界最高峰の豊島名人(29)あまりに強し 藤井七段(17)に圧巻4連勝

序盤から激熱のリーグ戦(画像作成:筆者)

 10月7日。関西将棋会館において王将戦リーグ▲豊島将之名人-△藤井聡太七段戦がおこなわれました。10時に始まった対局は20時42分に終局。結果は171手で豊島名人の勝ちとなりました。

 リーグの成績は、豊島名人は2勝1敗。藤井七段は1勝1敗となりました。

これが当代名人の実力

【前記事】

王将戦リーグ注目の大一番 藤井聡太七段(17)は後手番ひねり飛車で豊島将之名人(29)に挑む

 将棋界四百年の歴史において、名人は時代の象徴です。

 当代の名人もまた、途方もなく強い。

 終局直後の筆者の感想をひねりもなく述べるとすれば、そうなるでしょう。

 本局は相掛かりの序盤から、後手番の藤井七段がひねり飛車の形に組む展開となりました。昼食休憩後、豊島名人が歩をつっかけて、少しずつ戦機が高まっていきます。昭和の昔には、ひねり飛車には仕掛けの義務がある、という言い方もされました。ひねり飛車を受けて立つ側は、手が進めば進むだけ、形がよくなるからです。

 藤井七段は自陣の整備に手をかけずに仕掛けていきました。ここからが本格的な戦いの始まりです。中盤の形勢は難解なうちに推移しました。どちらかといえば、豊島名人がわずかにリードしていた時間が長かったのかもしれません。

 終盤戦に入って、豊島玉に王手がかかり始めた時点では、逆に藤井七段がリードを奪ったようにも見えました。強者が真価を発揮するのは、そうした場面からです。名人は最善を尽くして相手を楽にさせません。差が離されることはないまま、勝敗不明の終盤戦が続きました。

 4時間の持ち時間を使い切って、先に一分将棋となったのは藤井七段でした。先に豊島玉に迫る形はできたものの、金銀5枚が連携を組んだ豊島陣にどのように迫るのか。いくら時間があっても答えが出ないような局面で、藤井七段は瞬時に次の手を決断しなければなりません。

 中終盤では桂で金銀をはがすのが一つのセオリーです。藤井七段は一足先に、桂を打って金をはがす形を作りました。

 豊島陣は金銀2枚をはがされたものの、まだ3枚が残っています。藤井七段の鋭い攻めの間隙を縫って、豊島名人も反撃に出ました。今度は豊島名人が桂を打って藤井陣を削りにいきます。豊島名人は桂で守りの要の金をはがすという手順を2回実現させました。もちろんこれは大きなポイントです。いつしか形勢は、豊島名人がはっきり優位に立っていました。

 強者同士の終盤戦は容易には決着がつきません。長く続いた終盤戦で、観戦中には、藤井七段の方にはっきりとした悪手はなかったようにも見えました。形勢が逆転したとすれば、どこかで藤井七段に判断ミスがあったということになるのでしょう。しかしそれ以上に、自然に指し進めて勝勢に持ち込んだ名人の技量が圧倒的だった、ということなのかもしれません。

 勝勢となってから、豊島名人は着実に藤井玉を寄せていきます。対して豊島玉はつかまりません。名人は最後、藤井玉を詰みに討ち取って、171手の熱戦に終止符を打ちました。

 やっぱり名人は強い――。

 これで豊島名人は藤井七段に4連勝です。もちろん、名人と七段という肩書だけを見れば、両者は格が違います。しかしこれまでの実績から、藤井七段が既にトップクラスの技量の持ち主であることは明らかです。その藤井七段に4連勝とは――。

 やっぱり名人は、途方もなく強い。感想としてはどうも、このループになりそうです。

 ところで先日、元プロ野球投手の金田正一さんが亡くなられました。豊島名人が藤井七段に4連勝したことは、1958年、球界を代表する大投手であった金田さんが、デビュー間もない長嶋茂雄選手から、1試合で4連続三振を奪った故事になぞらえることができるかもしれません。ただし正確には、金田投手は次の試合でも長嶋選手から三振を奪って「5連続三振」を達成しているそうです。

金田正一さん死去 長嶋茂雄氏から「5連続三振」の伝説(NEWSポストセブン)

 いずれどこかでおこなわれる豊島名人ー藤井七段の5戦目は、どのような結果となるのでしょうか。

 王将戦リーグの成績は、豊島名人2勝1敗、藤井七段1勝1敗となりました。

画像

 過去の王将戦リーグを見れば、1敗はまだ十分に挑戦権獲得の目があります。始まる前から面白くなることは間違いないと思われたこのリーグですが、やはり激熱の展開となってきました。そして最後、どのような結末を迎えるのか。それはまだ、誰にも予想できないでしょう。