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渡辺明二冠(35)が豊島将之棋聖(29)から棋聖位を奪取、現将棋界の頂上決戦を制して三冠に

松本博文将棋ライター
自宅にて、渡辺明さん(撮影筆者)

 7月9日(火)。新潟市において、ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第4局▲豊島将之棋聖-△渡辺明二冠戦がおこなわれました。終了時刻は19時27分。結果は136手で挑戦者の渡辺二冠の勝ちとなりました。

 渡辺二冠は3勝1敗で五番勝負を制して棋聖位を奪取。棋王、王将と併せて、三冠となりました。

 一方で豊島前棋聖は、名人、王位の二冠に後退しました。

ハイレベルの頂上決戦

 本局が始まるまでの豊島棋聖(名人、王位と併せて三冠)の今期成績は10勝2敗。渡辺二冠に棋聖戦第2局と第3局で敗れたのみです。

 一方で渡辺二冠は9勝2敗。こちらは豊島棋聖に棋聖戦第1局と王座戦本戦トーナメントで敗れたのみ。

 三冠と二冠の五番勝負は、現将棋界の頂上決戦であったと言っても過言ではないでしょう。

 棋聖戦第4局は、後手番となった渡辺二冠は4手目に角筋を止める作戦を取りました。最近の渡辺二冠はずっと採用してなかった指し方。大一番で大胆な手法を取るのも渡辺流です。

 豊島二冠は左美濃、腰掛銀の形に組んで先攻します。両者、強気の応酬で本格的な戦いとなりました。

 先に豊島玉に迫る形ができたのは渡辺二冠ですが、豊島棋聖も巧みにしのいで、形勢不明の終盤戦が続きました。

 最終盤。豊島棋聖は間隙をぬって、反撃に角を出ます。しかし、その判断がどうだったか。渡辺二冠の寄せが的確で早く、次第に渡辺勝勢がはっきりとしてきました。

 勝ちになってからの渡辺二冠の指し方は正確そのものでした。

 対して、豊島棋聖は最後まで執念を見せました。散り際を大事にするのであれば、もう投了してもおかしくはない。そう思われたところから、形が崩れるのもいとわず、何手も指し続けます。

 そして136手目。見かけ上はさらに差がついたところで、ついに豊島棋聖は投了しました。

 3勝1敗でシリーズを制した渡辺新棋聖は、自身初となる棋聖位を獲得。さらに自身6年ぶりとなる三冠(棋王、王将、棋聖)に復帰しました。

 一方の豊島前棋聖は、名人、王位の二冠に後退しました。

続いていく戦い

「歳下の人に挑んでいくというのは、年々こちらの方が厳しくなるので、余裕はないですよね。なのでこういうチャンスは生かしたいなと思っていました。タイトルは意識してやっているので、数を増やせるというのは嬉しいことです」

 渡辺新棋聖は終局後のインタビューでそう答えていました。渡辺、豊島のタイトル戦での番勝負は意外なことにこれが初めてですが、この先また違う舞台で当たる可能性は高そうです。

 棋聖戦に集中していたため、この先のことはあまり考えていなかった、という渡辺新棋聖。直近では、いま大詰めを迎えている竜王戦決勝トーナメントでまた豊島名人と当たる可能性もあります。

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 まずは豊島将之名人と藤井聡太七段との対戦。そしてその勝者と渡辺三冠との戦い。そちらもまた大きく注目されるところです。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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