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なでしこジャパンに続け!U-20アジア杯が開幕、ヤングなでしこはベトナムとの初戦へ

松原渓スポーツジャーナリスト
いよいよ大会がスタートする。写真は小山史乃観(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

【アジアの頂点をかけた戦いがスタート】

 ウズベキスタンで行われるAFC U20女子アジアカップが、3月3日に開幕する。アジア最終予選の厳しい戦いを勝ち抜いてパリ五輪への切符を勝ち取ったなでしこジャパンに続き、U-20日本女子代表(ヤングなでしこ)の躍進にも注目だ。今大会の上位4チームは、9月にコロンビアで開催される2024 FIFA U-20女子ワールドカップ出場権を獲得する。

 チームは2月19日から1週間、国内合宿をした後、2月27日に開催地となるウズベキスタンのタシケント入り。さらに6日間の調整でチームを仕上げて4日のU-20ベトナム戦に臨む。タシケントは時折みぞれも混じるような気候でかなり寒そうだが、しっかりと準備期間を確保して臨む今大会は、チームの成熟度も高そうだ。

 なでしこジャパンの最終予選は、現地のトレーニングを終えた昼食後に全員で見たという。

「(国立競技場での)2戦目は、メンタル的なプレッシャーも含めて、日本の国民やファン、サポーター、多くの方の期待も含めて日本女子サッカーがどうなるか、という中でのゲームだったし、(終了の)ホイッスルが鳴った後の選手たちの表情や行動にも表れていたと思います。(U-20の)選手たちはそういう状況から勝ち取って行く大切さ、感動を与えるゲームに対する準備や覚悟も感じたと思います」(狩野倫久監督)

なでしこジャパンは最終予選を勝ち抜き、五輪出場権を獲得した
なでしこジャパンは最終予選を勝ち抜き、五輪出場権を獲得した写真:ロイター/アフロ

 アグレッシブな守備から、連続性のある攻撃へ。コンセプトはなでしこジャパンに通じていて、組織力や技術面は見劣りしないだろう。2日にオンラインで取材に対応した狩野倫久監督は、キッパリとした口調で選手たちへの期待感を口にした。

「選手たちは複数のシステムをこなすことができますし、試合中に変えることも可能です。それだけの戦術的柔軟性を持てるように取り組んできました。だからと言って相手を見て変えるのではなく、一番は、選手たちがピッチで躍動できるような組み合わせや配置を考えたいと思っています」(狩野倫久監督)

 キャプテンと副キャプテンは、選手とスタッフ全員による匿名の投票で選出。キャプテンに選ばれたのは、林愛花だ。明るい性格とサッカーに向き合う真摯な姿勢は、誰もが認めるリーダーの資質だ。

林愛花(昨年はWEリーグのINAC神戸でプレーした)
林愛花(昨年はWEリーグのINAC神戸でプレーした)写真:森田直樹/アフロスポーツ

 2022年のコスタリカU-20ワールドカップでは出場機会がなく悔しい思いをしたが、献身的にチームを支えていた印象がある。WEリーグを経て、現在はアメリカのサンタクララ大学でプレーしており、挑戦を続けてステップアップしてきた。複数のポジションをこなせるユーティリティプレーヤーとしてもチームを引っ張ってくれるだろう。

 また、副キャプテンには、WEリーグでプレーする角田楓佳と天野紗が選ばれた。

【世界で戦う2人の19歳が目指すもの】

 オンライン取材では、松窪真心(ノースカロライナ・カレッジ)と小山史乃観(ユールゴーデンIF)の2人が登場。2人とも19歳ながら、各国代表がしのぎを削るアメリカとスウェーデンのトップリーグで戦っている(現在はシーズン前)。WEリーグでも実績があり、昨夏のワールドカップ前にはなでしこジャパンの合宿にもトレーニングパートナーとして参加した。今大会のチームを攻守両面で牽引するだろう。

 松窪は、世界トップクラスが揃うNWSL(米女子プロサッカーリーグ)の環境について、「観客が入るときは数万人入ったりもするので、毎試合が国際試合のようなワクワクした気持ちで試合できます」と、楽しんでいる様子を明かした。魅力は、初速の速さや、ゴール前での勝負強さ。「(アメリカでは)周りの選手が速くて強いので、ポジショニングやボールを受ける前の準備を意識して取り組んできました。筋トレの量も増えましたし、毎日自分の全力を出せる環境があるので、クイックネスのところは少し上がったと思います」と、進化したプレーを見せることを誓う。

中央右が小山、左から2番目が松窪
中央右が小山、左から2番目が松窪写真:YUTAKA/アフロスポーツ

 小山は、今回のU-20代表チームの強さと自身のプレーについてこうアピールした。

「みんながドリブルで突破できたり、ロングキックが正確だったり、対人が強かったりと、しっかりした個の特徴があるので、それはアジアの舞台で見てもらいたい部分です。(個人としては)目に見える得点やアシストをして、自分の価値を上げていく。結果を残すことでいろんな人に見られて自分の価値も上がると思うので、そこは今大会の目標です」

 ハイレベルな環境に飛び込んだ2人の言葉には、闘魂が宿っていた。今大会を通じて、若い選手たちがどんなふうに成長していくのかが楽しみである。

 初戦のベトナムを率いるのは、日本人の井尻明監督。2019年からJFA(日本サッカー協会)の後任海外派遣指導者として、ベトナムの育成年代の女子を強化してきた指導者である。ベトナム人選手たちの強みである精神力やアジリティを尊重しつつ、技術を伸ばしてきた。

 力の差はあるとは思うが、日本に過去の実績や優勝候補と見られることへの奢りはない。

「(決勝までの)5試合を見据えてではなく、チャレンジャーとして1戦1戦、アジアの戦いの中で泥臭く、粘り強く、タフに1点を取りに行きます」(狩野監督)

 試合は3月4日、日本時間20時キックオフ。DAZNでライブ配信される。

スポーツジャーナリスト

女子サッカーの最前線で取材し、国内のなでしこリーグはもちろん、なでしこジャパンが出場するワールドカップやオリンピック、海外遠征などにも精力的に足を運ぶ。自身も小学校からサッカー選手としてプレーした経験を活かして執筆活動を行い、様々な媒体に寄稿している。お仕事のご依頼やお問い合わせはkeichannnel0825@gmail.comまでお願いします。

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