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WEリーグが今週末開幕!「毎年レベルが上がっている」見どころ満載の3シーズン目を展望

松原渓スポーツジャーナリスト
WEリーグ2023-24が開幕する

【WEリーグがいよいよ開幕】

 女子プロサッカーリーグ・WEリーグ(Women Empowerment League)が今週末の11月11日(土)に開幕する。

 今シーズンは全12チームによるホーム&アウェイ方式による2回戦総当たりリーグ戦で、閉幕は2024年6月の予定だ。開幕に先立ち、6日に渋谷区でキックオフカンファレンスが行われた。

 12チームから、代表選手各1名が登壇。昨シーズンチャンピオンの浦和は、WEリーグを代表してタイで開催中の「AFC Women's Club Championship 2023」に出場しているため、チームマスコットのフレンディアが参加した。

 WEリーグは、初年度はINAC神戸、2年目の昨季は浦和がタイトルを獲得。その2チームと、最多のリーグ優勝を誇る東京NBの3強が日本女子サッカーを牽引してきた。だが、今季のプレシーズンに行われたリーグカップでは、広島と新潟が決勝に進出。両チーム共に新戦力の活躍が光り、クラブ初タイトルをかけた決勝戦では、120分間の激闘の末、PK戦を制した広島がカップを掲げた。

 リーグのプロ化による個の底上げや戦術の多様化、育成システムの充実も各チームの強化につながっているが、移籍の動きが活発になったことも大きな変化だろう。WEリーグが「世界一のリーグ」というビジョンを掲げてきた中で外国籍選手の加入が少ないことは課題だったが、今季はヨーロッパ、アフリカ、アジアなどから各国代表選手が加入。I神戸と千葉はスペイン人指導者を迎えており、グローバルなリーグに一歩近づいた。

 中でも、今季最多の外国籍選手を獲得したのがマイナビ仙台だ。パウラ・ゲレーロ サンズ(スペイン)、カーラ・バウティスタ(スペイン)、チャチャワン ロッドトン(タイ)、オケケ・チディンマ・ンケルカ(ナイジェリア)、マリエ・アウォーナ(カメルーン/フランス)、ジャニスタ ジナントゥヤ(タイ)と、6人が新加入している。

【新参戦のC大阪が旋風を巻き起こすか】

 今シーズンから、新たにC大阪が参戦した。C大阪は育成組織出身選手が中心の「究極の育成型クラブ」で、平均年齢は21.3歳とリーグで最も若い。アマチュア選手主体のなでしこリーグで実戦経験を積んできた世代別代表選手が多く、新チームのお披露目となったリーグカップでは3勝1分1敗と目立った結果を残した。

「セレッソさんが新しい刺激になることで、WEリーグが盛り上がる一つのエンジンとして期待しています」

 WEリーグの高田春奈チェアがそう話すように、リーグの競争力向上の切り札になる可能性がある。 

 桜色の新ユニフォームで登壇したキャプテンの脇阪麗奈は、「若さを生かして3強の壁にぶち当たっていきたい。セレッソ旋風を巻き起こせるように頑張っていきたいと思います」と力強く宣言した。

 12日の開幕戦で、そのC大阪のホーム・ヨドコウ桜スタジアムに乗り込む千葉も、育成に力を入れてきたクラブだ。

 キャプテンの林香奈絵は、「セレッソとの戦いになると、球際のところや泥臭さ、ファイトするところが見られると思うので、楽しみにしてほしいです」とコメント。今季はヘッドコーチにスペイン人のイスマエル・オルトゥーニョ・カスティージョ氏を迎え、従来の縦に速い攻撃スタイルに加えて、ポゼッションやゲームコントロールを強化。戦い方の幅を広げ、選手たちの戦術理解力も高まっているようだ。

 2年連続最下位に沈んでいた埼玉も、新体制で上位進出を狙う。池谷孝新監督は、失点が多かったチームに「ドーベルマンディフェンス」というキーワードを持ち込み、守備を強化してきた。守護神のGK浅野菜摘は、「まだ3カ月ですけど、少しずつ自分たちの意識も変わっています。練習試合でも明らかに失点が減って自信を持てています」と、手応えを口にする。

 代表歴もあり、トップリーグで14シーズン目を迎えるN相模原のGK久野吹雪は、リーグ全体のレベルアップをこんなふうに実感しているという。

「強度や個々の能力の部分が上がっていて、下の世代から新戦力が出てきたり、ベテラン選手の安定したプレーもあって、いろいろな要素が融合されてそれぞれのチーム力が上がっています。同じチームと対戦した時に『前節とは違う(成長している)な』と思うこともあるので、レベルは毎年上がっていると思います」

【新外国人選手、制限なしのスタジアム観戦も楽しみの一つ】

 今シーズンは、外国籍選手が増えたことでさらなる競争力アップが期待できる。6人の新外国人選手が加入した仙台の田畑晴菜は、「選手層も厚くなってきて、練習の中で競走しながら上を目指して練習できています」と話す。チームの雰囲気にも変化があるようだ。

「外国の選手たちはみんな明るくていいキャラなので、日本でもすぐにフィットしている印象があります。サッカーでは言葉が違うので瞬時に伝えるのは難しいですが、英語や英単語で時間をかけてコミュニケーションを取っています」

 今年は夏から秋にかけて代表活動などが続き、その間にカップ戦も行われたため、リーグの開幕が11月にずれ込んだ。真冬の試合開催となるため、寒い中での観戦はファンやサポーターにとっては厳しい面もあるだろう。

 だが、コロナ禍で観戦時の制限があったこれまでの2シーズンとは違い、開幕から観客数や応援の制限なくスタートできる初めてのシーズンでもある。カップ戦決勝では6200人超のサポーターが熱い応援を繰り広げたように、サポーターの応援合戦もスタジアムに足を運ぶ楽しみになる。広島のキャプテン・近賀ゆかりは「カップ戦決勝で広島の応援を見ていただいた方はわかると思いますが、『ああいうふうに応援されたいな』とみんなに思われるように、広島から盛り上げていきたいと思います」と誇らしげにコメントした。

 今夏に行われたワールドカップでなでしこジャパンがベスト8に進出し、アジア競技大会では国内組・若手中心の日本女子代表が優勝、パリ五輪アジア2次予選では3連勝で最終予選進出と、下半期は明るいニュースが続いている。2011年のワールドカップ優勝メンバーでもある近賀は、その流れで迎える今季は重要なシーズンになると位置付ける。

「ワールドカップでのなでしこジャパンの活躍で女子サッカーに注目が集まり、アジア大会の優勝や五輪予選での勝利が続いた中でWEリーグの開幕を迎えます。リーグではどのチームが勝ってもおかしくないような熱い戦いを毎試合お見せしたいと思っています」

 開幕で好スタートを切るのはどのチームか。熱いシーズンがいよいよ幕を開ける。

 WEリーグ2023-2024 開幕カード

*表記のない写真は筆者撮影

スポーツジャーナリスト

女子サッカーの最前線で取材し、国内のなでしこリーグはもちろん、なでしこジャパンが出場するワールドカップやオリンピック、海外遠征などにも精力的に足を運ぶ。自身も小学校からサッカー選手としてプレーした経験を活かして執筆活動を行い、様々な媒体に寄稿している。お仕事のご依頼やお問い合わせはkeichannnel0825@gmail.comまでお願いします。

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