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パリ五輪予選がスタート!アジア最上位のなでしこジャパンは3連戦をどう戦う?

松原渓スポーツジャーナリスト
アジア五輪予選がいよいよスタート(写真:築田純/アフロスポーツ)

 なでしこジャパンが、パリ五輪に向けたアジア2次予選に挑む。

 国内組は10月17日から6日間、千葉で合宿を行い、23日にウズベキスタンの首都・タシケントに入った。海外組も合流し、2日間の準備期間を経て26日にインドとの初戦に臨む。中2日のスケジュールでウズベキスタン(29日)、ベトナム(11月1日)と対戦する予定だ。

 出場12カ国中、パリへの切符は2枠という狭き門。来年2月に行われる最終予選では、2次予選を勝ち上がった(各グループ1位+各組2位のうち成績上位チーム)4カ国のうち1カ国との“一騎打ち”になる。

 今夏の女子ワールドカップでベスト8に入ったなでしこジャパンは現在、アジアでは最上位となるFIFAランク8位だが、同大会でホスト国としてベスト4入りを果たしたオーストラリアとの勝負になる可能性もあるのだ。

 アジア勢に対して、日本はボールを持って優位に試合を進めることができる。昨年のアジアカップ(3位)やE-1選手権(優勝)、なでしこジャパンとは別編成で、期間限定の日本女子代表チームで臨んだアジア競技大会(優勝)でも、日本が主導権を握って試合を進める時間が多かった。ただし、オーストラリアとは対戦していない。

ワールドカップでコンビネーションを高めた
ワールドカップでコンビネーションを高めた写真:築田純/アフロスポーツ

 今回の2次予選で同グループに入ったインド(61位)、ウズベキスタン(50位)、ベトナム(34位)は、実力差のある相手。3連勝での首位突破に加え、この3試合でどれだけチームとしての引き出しを増やせるかに期待がかかる。ウズベキスタン代表監督を務めるのは、なでしこジャパンの黎明期を支え、指導者としても女子サッカーの特徴を知り尽くした本田美登里監督だ。

 日本は招集メンバー22人のうち、今夏のワールドカップ出場メンバーが21名と、ほとんど同じメンバーで臨む。また、怪我で不参加となった藤野あおばに代わり、10月のアジア競技大会とWEリーグカップで優勝に貢献したMF中嶋淑乃が追加招集されている。

 2次予選では各国が守りを固めてくることも含め、様々な策を講じてくるだろう。日本としては、攻守のさまざまな引き出しの中からその都度、最適解を導き出していくことが理想だ。それはワールドカップからのチームの“進化”を図るバロメーターにもなる。池田太監督は、インド戦前日の公式会見で今回の3連戦について次のように語っている。

「同じアジア圏での戦いなので、ワールドカップの時と戦い方を比べるのは難しいこともありますが、選手同士の信頼関係、コンビネーションやリレーションシップも高まっているので、スムーズでオートマチックなプレーが増えることに期待しています」

前日公式記者会見に臨んだ池田太監督(写真右から2番目)と熊谷紗希主将(写真左から2番目)
前日公式記者会見に臨んだ池田太監督(写真右から2番目)と熊谷紗希主将(写真左から2番目)

 対アジア戦略として、ワールドカップ後に4-3-3の新フォーメーションに着手した。得意のサイド攻撃に加えて、中盤の人数を増やすことで攻撃のバリエーションを増やす狙いがある。ただし、GKも最終ラインのビルドアップに参加することやビルドアップ時の立ち位置など、従来の3-4-2-1とは異なる点も多く、まだ完成形には遠い。

 9月23日のアルゼンチン戦は同システムを採用して8-0と大勝したが、アジアは日本に対して、また違った対策を取ってくるだろう。

「奪われるとリスクがあるるので、奪われないビルドアップをすることが大事になる」

 GK平尾知佳がそう語るように、相手との実力が拮抗する最終予選に向けて、まずは攻撃の精度を高めたい。

 杉田妃和は、「相手のレベルが高くなると攻撃の幅が大事になってくるし、やり直しも必要になる。イメージの共有は選手間でできている」と、ワールドカップで積み上げたコンビネーションに自信を見せる。

 また、猶本光は早い時間帯の先制点とセットプレーをポイントに挙げた。アルゼンチン戦でセットプレーの2次攻撃からダイビングヘッドを決めた高橋はなは「次はきれいな形で決めたい」と意気込みを口にした。

セットプレーからのゴールが多く生まれるかもしれない(写真右が猶本光、左は遠藤純)
セットプレーからのゴールが多く生まれるかもしれない(写真右が猶本光、左は遠藤純)写真:築田純/アフロスポーツ

【2次予選に向けては守備面も課題に】

 一方、最終予選を見据えて守備面の整理も進めていく。国内組で臨んだ千葉合宿では、フィジカルに優る男子高校生チームと対戦。トレーニングマッチで見受けられた課題の一つが前線からの守備だった。

 インサイドハーフのポジションでプレーした清家貴子は、「4-3-3は中の人数が多くなるので、誰が前(にプレッシャー)に出るかというのは、ある程度チームの決め事をみんなで持っておかないとずれてしまう」と振り返っている。

清家貴子
清家貴子写真:長田洋平/アフロスポーツ

 イングランド組とともに現地で合流した長谷川唯は、「自分たちがボールを持てる試合になると思うので、プレスのかけ方がうまくいっていなくても(ボールを)取り切れてしまうシーンが出てきてしまうと思いますが、やろうとしている形を実践して、イメージと違ったらチーム全体で話していきたい」と話す。攻守のポジショニングも実戦で調整を進めていくつもりだ。

 男子日本代表の試合も刺激になっている。猶本は個人戦術に目を向けた。

「チュニジア戦は特に海外組の選手が多く出ていましたが、ファーストタッチで外す技術や動作が早く、それを一人一人やるからボールが流れていっていて、さすがだなと。それはワールドカップで(優勝した)スペイン女子代表もやっていたことなので、そういうところをやっていく必要があると感じました」

 会場となるタシケントは湿気が少なく乾燥しているが、日中の気温は25度近くになることも。今回はワールドカップでもなでしこジャパンの胃袋を支えた西芳照シェフが帯同して食事や補食などをサポートしており、選手たちのコンディションは良さそうだ。

現地で海外組と合流。初戦のインド戦に臨む
現地で海外組と合流。初戦のインド戦に臨む

 初戦の3日前に試合会場が変更され、本日行われるインド戦の会場はロコモティフ・スタジアムとなった。ピッチコンディションを確認する機会はなく、“ぶっつけ本番”での調整となる。

 日本は2016年のリオデジャネイロ五輪は予選敗退、2020年の東京五輪はホスト国だったため、予選が免除された。レギュレーションも含めてワールドカップ予選とは異なる難しさのある五輪予選突破に向けて、池田ジャパンは幸先の良いスタートを切れるだろうか。

 インド戦は日本時間本日19時にキックオフ。NHK BS1で生中継される。 

*表記のない写真は筆者撮影

スポーツジャーナリスト

女子サッカーの最前線で取材し、国内のなでしこリーグはもちろん、なでしこジャパンが出場するワールドカップやオリンピック、海外遠征などにも精力的に足を運ぶ。自身も小学校からサッカー選手としてプレーした経験を活かして執筆活動を行い、様々な媒体に寄稿している。お仕事のご依頼やお問い合わせはkeichannnel0825@gmail.comまでお願いします。

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