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なでしこジャパン第2戦はグループ最強のイギリス。ワールドクラスが揃う優勝候補を攻略できるか

松原渓スポーツジャーナリスト
試合は無観客で行われている(写真:ロイター/アフロ)

 7月21日の五輪初戦でカナダに1-1で引き分けた日本は、24日のグループステージ第2戦でイギリスと対戦する。会場は初戦と同じ札幌ドーム。イギリスは初戦でチリに2-0で勝利しており、今大会の優勝候補の一角だ。

 イギリスは、FIFAランキング6位のイングランドから19人、23位のスコットランドから2人、34位のウェールズから1人で構成される混成チーム。ヨーロッパの出場枠は2019年W杯の成績上位3カ国に割り当てられるため、準優勝のオランダ、3位のスウェーデンに次ぐ4位となったイングランドの成績を基に、今大会への切符を獲得している。

 メンバー22人のうち、19年フランスW杯大会に出場していたメンバーが15人(日本は17人)を占め、平均年齢は26.6歳(日本は24.6歳)。そのうち21人がイングランドの最上位リーグに当たるFA WSL(FA女子スーパーリーグ)でプレーしている。その内訳は、マンチェスター・シティから10人、チェルシーから5人、アーセナルから4人。国内の強豪チームから複数の選手が選ばれている点はなでしこジャパンも同じだが、FA WSLは各国の代表選手が揃う。日本の背番号10を背負うFW岩渕真奈も、新シーズンからアーセナルへの加入が決まっている。資金力のある男子ビッグクラブが女子に力を入れて、リーグの勢いを後押ししてきた。そうした相乗効果がイングランド女子代表のレベルアップにも表れており、今年9月に女子プロサッカー「WEリーグ」が開幕する日本にとっても、ロールモデルとなる。

イギリス女子代表
イギリス女子代表写真:ロイター/アフロ

 今大会でイギリスを率いるヘゲ・リーセ監督は、今年1月からイングランドの暫定監督を務めていた。元ノルウェー代表選手で、現役時代に日本でプレーし、チームメートだったなでしこジャパンの大部由美ヘッドコーチは、「10本FKを蹴らせれば、8本決めるようなテクニックのある選手だった」と言う。

 FA WSLは秋春制で5月までシーズンが続いたため、3月から活動を強化してきた日本に比べると活動期間は限られていたが、イングランド代表選手が多くを占めるだけに、戦術面や連係面は成熟した印象を受ける。来日後、14日にはニュージーランドとの強化試合に3-0で勝利している。

 日本はイングランドとは対戦経験が多く、0-2と完敗した19年のフランスW杯を含めて、直近の2年間でも3連敗中だ。プレー強度が高く、タックルやスライディングは当たり前で、試合後は白いユニフォームが汚れている。カナダ以上の激しい当たりが予想されるため、日本は少ないタッチ数でミスを減らしてボールを運びたい。加えて相手は4-2-3-1や4-3-3などの布陣を使い分けてくることが予想されるため、カナダ戦同様、相手の間合いや戦い方を把握するまでの立ち上がり15分に失点しないことがポイントになるだろう。

 注意したい選手は、昨年のFIFA女子最優秀選手で、初戦で2得点に絡んだ右サイドバックのDFルーシー・ブロンズ、経験豊富なボランチのMFジル・スコット。初戦のチリ戦ではジル・スコットを終盤まで温存しており、大黒柱がフレッシュな状態で出てくる可能性が高い。彼女をフリーにすると、攻撃を自在に操られてしまう。

「一番危険な選手」という声が選手からも聞こえてくるのが、FWエレン・ホワイトだ。19年のW杯得点女王で、今大会初戦のチリ戦でも2ゴールを決めてチームの勝利に貢献している。日本は直近の2試合で3ゴールを決められている嫌な相手でもある。ボールの引き出し方に巧さがあり、難しい角度からでも枠にねじ込んでくる。セカンドボールへの反応も早い。

エレン・ホワイト
エレン・ホワイト写真:ロイター/アフロ

 マッチアップするセンターバックのDF熊谷紗希、DF南萌華、DF宝田沙織の対応が重要だ。南は、「直接対戦したことはないですが、ベンチから見ていても本当に、すごくいいものを持っている選手。ただ、他にも(イギリスは)得点力やスピードのある選手がとても多いので、ホワイト選手だけに気を取られると他の選手にやられてしまう。チームの分析でも、前線の選手はすべてにおいて注意していかなければいけないと思います」と話していた。

 ホワイトの脇を固めるのは、昨季FA WSLで16ゴール11アシストを決めて個人賞を総なめにしたFWフラン・カービー、スピード感あふれるFWニキータ・パリス、昨季イングランドの若手最優秀選手に輝いたFWローレン・ヘンプといった顔ぶれ。日本は左サイドバックを務めるDF宮川麻都、DF北村菜々美、DF三宅史織らがブロンズやヘンプ、パリスといったキープレーヤー達をどう抑えるかが重要になる。また、カナダ戦のように、相手が意図的に日本のサイドバックの裏を狙ってくる可能性は高く、チームとしての対応力が問われる。

 高倉麻子監督は組み合わせ発表時に、「相手が長い刀を持っているとしたら、私たちは短刀で戦うようなところがあるので、(相手の)懐に入って差し込んでいけたらと思います。今まで負けた経験の中で、長い刀にやられないような間合いとか、そういったものも選手たちは経験しているので、うまくやれると思います」と、日本らしい戦い方で立ち向かうことを示していた。

  グループステージの最難関とも言える相手だ。札幌ドームは空調が効いており、気候条件はアドバンテージにならない。戦い方や交代プランも含めて、相手を上回る策をピッチで示せるか。日本の真価が試される一戦となる。

スポーツジャーナリスト

女子サッカーの最前線で取材し、国内のなでしこリーグはもちろん、なでしこジャパンが出場するワールドカップやオリンピック、海外遠征などにも精力的に足を運ぶ。自身も小学校からサッカー選手としてプレーした経験を活かして執筆活動を行い、様々な媒体に寄稿している。お仕事のご依頼やお問い合わせはkeichannnel0825@gmail.comまでお願いします。

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