各チームの個性が百花繚乱!女子プロサッカー「WEリーグ」、5月は注目カードが目白押し

新規参入チームの大宮Vがヴェールを脱いだ(写真左は鮫島彩、右は村上真帆)

【新潟LとI神戸が2連勝で好スタート】

 日本女子プロサッカー「WEリーグ」は、4月24日から各地でプレシーズンマッチを行っている。この試合を通じて、11チームの輪郭が見えてきた。

 各チームはホーム2試合、アウェー2試合の4試合を戦う。日程や対戦カードは変則的で、5月7日現在、7試合が終了している。ここまでの成績は、アルビレックス新潟レディース(新潟L)とINAC神戸レオネッサ(I神戸)が2連勝、三菱重工浦和レッズレディース(浦和)が1勝1分。

 また、大宮アルディージャVENTUS(大宮V)が1勝、マイナビ仙台レディース(マイ仙台)が1分け。ジェフユナイテッド市原・千葉レディース(千葉L)とちふれASエルフェン埼玉(EL埼玉)が1敗で、AC長野パルセイロ・レディース(AC長野)とノジマステラ神奈川相模原(N相模原)がそれぞれ2敗となっている。

 9月のリーグ開幕まではまだ時間があるため、どのチームも戦術を浸透させることと並行して、積極的に交代枠(プレシーズンマッチは7人まで交代可能)を使い、控え選手も含めた戦力の底上げやコンビネーション強化を図っている。

 新潟Lは、初戦のN相模原戦(6-0)と第2戦のAC長野戦(2-1)を中3日の連戦で戦い、先発メンバーを大きく入れ替えて2連勝。交代も含めると2試合で19名がピッチに立ち、6選手がゴールを決めた。高精度のクロスを蹴れる選手が複数いるため、サイド攻撃やクロスからの得点は新潟Lの強みの一つだが、初戦では今季から加入したFW道上彩花がヘディングで2ゴールと持ち味を発揮。FW石淵萌実、FW児野楓香、FW長沢菜月ら、アタッカー陣も限られた時間で得点している。若手選手主体の布陣で臨んだAC長野戦では、MF上尾野辺めぐみやMF川村優理ら、経験のある選手を試合終盤に投入。村松大介新監督は、「若い選手が経験値の高い選手に早く追いつけるような経験を得(られ)るきっかけづくりのゲームにしたかった」と、その狙いを語っている。次は、5月22日にEL埼玉戦、30日には昨季皇后杯女王の日テレ・東京ヴェルディベレーザ(東京NB)と対戦する。新潟Lにとって、この2試合は積み上げてきた攻守一体のサッカーの現在地を知る一戦となりそうだ。

 今季、星川敬新監督を迎えたI神戸は、中盤から前線にかけて主力選手のポジションや並びが変わっており、新しい戦い方にトライしていることがうかがえる。これまでボランチやサイドでプレーしていたMF杉田妃和がFW高瀬愛実と2トップを組み、同じくボランチが定位置だったMF伊藤美紀は左サイドでプレー。新加入のFW成宮唯も加わって前線が流動的になり、スペースの使い方にも工夫が見られる。星川監督はルーキーのMF竹重杏歌里やMF天野紗ら、10代の若手選手も積極的に起用。フォーメーションは3バックを採用しているが、まだ模索中であることを明かし、2試合で見えた課題について、「相手が引いた状態でこちらがある程度主導権を握る展開になると(効果的にボールを動かすことができず)、チームとしても個人としてもいい判断ができないのが現状での課題だと思います」と指摘している。GK山下杏也加を起点としたビルドアップのパターンも、これから本格的に作っていくことになるのだろう。

塩越柚歩(浦和)
塩越柚歩(浦和)

 初戦でマイ仙台と引き分けた浦和は、第2戦のN相模原戦では攻撃力が爆発。昨季なでしこリーグ得点王のFW菅澤優衣香が2試合で3ゴールを決めたほか、FW安藤梢が勝負どころを見極めたボール奪取やスルーパスで決定機を作り出し、MF塩越柚歩が得意のドリブルから技ありの2ゴールを決めており、個の強さが際立つ。しかし、塩越は「もっと得点を決め切ることや、無失点で勝ち切ることができたらなと思います」と、リーグ本番を見据えて、詰めの甘さをなくしていく必要性を口にする。楠瀬直木新監督は7つの交代枠を活用してサブの選手たちにも経験を積ませながら、戦力の底上げを進める。N相模原戦では、ユースから昇格したFW島田芽依やGK福田史織も見せ場を作っており、ユースの選手たちにも刺激を与えそうだ。

 新規参入チームとして、オフの大型補強で注目を集めた大宮Vは、4月29日の千葉Lとの一戦で新チームがお披露目された。前半終了間際に、セットプレーからDF坂井優紀が高い打点から鮮やかなヘディングシュートを決めて、1-0で勝利。先発には、DF鮫島彩とMF有吉佐織の経験豊富な2人が名を連ね、若手選手たちを牽引した。ダブルボランチを組んだMF村上真帆とMF源間葉月の大学卒業ルーキー2人も光るプレーを見せ、ポジション争いの激しさを感じさせた。初代キャプテンになった有吉佐織は、始動からまだ2カ月余りで試行錯誤していることを明かしつつ、個性的な選手が揃ったチームの可能性に触れた。「ダイナミックなサッカーもできるし、逆に玄人好みのサッカーの面白さ、駆け引きの部分も出せると思います。そういうチームを目指したいと思っています」と語っている。

有吉佐織(大宮)、藤代真帆(千葉)
有吉佐織(大宮)、藤代真帆(千葉)

【5月は注目カードが続々】

 プレシーズンマッチは今月、注目カードが目白押しだ。

 5月8日には、まだ1試合もしていない東京NBと、新規参入のサンフレッチェ広島レジーナ(S広島R)が、いよいよヴェールを脱ぐ。

 東京NBは、千葉Lと対戦する(東京都・AGFフィールド/味の素スタジアム西競技場)。4月中旬に行われた同カードのトレーニングマッチでは、東京NBが3-0と勝利した。FW植木理子、FW小林里歌子の主力2人に加え、下部組織から昇格したFW山本柚月の3人のストライカーが揃い踏みで3ゴール。今季の東京NBは、11チーム中平均年齢が最も若いチームになったが、個々の技術や戦術理解度の高さに裏打ちされたプレーと、下部組織や代表などで長くプレーを共にしてきた選手たちのコンビネーションの良さは健在。戦術面での進化も見逃せない。

 一方の千葉Lは、プレシーズンマッチ初戦の大宮Vとの一戦で0-1と敗れたものの、後半は形勢を逆転させていた。高い位置からの守備を機能させて11本のシュートを放ち、新戦力のFW南野亜里沙やエースのMF鴨川実歩、MF岸川奈津希らが見せ場を作った。強みである守備がしっかりと噛み合うと、攻撃にもリズムが生まれやすい。最終ラインはキャプテンのDF林香奈絵がキーマン。第2戦は、東京NBの攻撃をどう抑えるかがポイントになりそうだが、お互いに手の内を知った選手同士の駆け引きも見どころだ。試合の流れを変える交代選手たちにも注目したい。

林香奈絵(千葉)
林香奈絵(千葉)

 S広島Rは、アウェーで大宮Vと対戦する(NACK5スタジアム大宮)。新規参入チーム同士の対戦でもあり、期待が高まる一戦だ。各チームから有力選手を獲得した両チームは、果たしてどのような陣容でピッチを彩るだろうか。新カラーのユニフォームに身を包む選手たちの姿は新鮮に映るだろう。S広島Rは、MF川島はるなやFW増矢理花のようにテクニックのある選手や、FW上野真実やFW山口千尋、FW島袋奈美恵、FW中嶋淑乃のようにスピード溢れる選手たちがいる。ただし、経験のある選手が揃った大宮の最終ラインを突破するのは容易ではなさそうだ。J2の大宮、J1の広島ともに、男子トップチームの試合の際、サポーターの前で挨拶をするなど、女子チームの集客にも力を入れている。当日はJ2の試合が重ならないため、大宮Vサポーターの声援が、S広島Rにプレッシャーを与えるかもしれない。

 同じく8日には、AC長野とN相模原の対戦がある(長野県・佐久総合運動公園陸上競技場)。今季は両チームとも若手中心の陣容で、先発にもフレッシュな顔ぶれが並んでいる。しかし、プレシーズンマッチはここまでともに2連敗。AC長野はI神戸に0-3、新潟Lに1-2で敗れたが、積極的な守備からショートカウンターで惜しいシーンをいくつか作っており、フィニッシュやラストパスの質が上がれば、結果もついてきそうだ。ミスで下を向かず、チャレンジャーとして戦う姿勢が浸透しており、今季から10番を背負うFW瀧澤千聖と、新加入のFW瀧澤莉央の“瀧澤コンビ”のコンビネーションも上がってきている。

 一方、N相模原は新潟Lに0-6、浦和に1-5と大敗。しっかりとボールを動かしながら攻撃の糸口を探ったものの、パスのタイミングや呼吸が合わず、堅守を持ち味とする浦和と新潟Lの牙城は崩せなかった。セットプレーやクロスからの失点が多く、守備面で浮き彫りになった課題にも向き合うことに。昨季からメンバー構成が変化して先発メンバーには新戦力が多く、ケガ人も出ているため、連係が未成熟なのは無理もない。一方、浦和戦でDF石田みなみが決めたゴールのように、ピースがうまく噛み合えば、美しいゴールを決められることも証明している。北野誠監督はAC長野戦に向けて、「ここまでトレーニングしてきた組み立ての部分をチャレンジしていく試合にしていきたいと思います」と意気込みを語っている。

 翌5月9日には、マイ仙台とEL埼玉が激突する(宮城県・かくだスポーツビレッジ内角田市陸上競技場)。マイ仙台は、初戦の浦和戦で見せたように、守備と攻撃が噛み合った時は上位チームを脅かすポテンシャルを示している。選手主導で試合中のギアチェンジができるようになると、さらにその脅威は増すだろう。

 EL埼玉は、5月4日の初戦でI神戸に0-1で敗れたものの、失点はパスミスによるもので、崩された形ではなく、90分間を通じて昨季なでしこリーグ2位の相手に善戦した。経験豊富なMF山本絵美とMF瀬戸口梢らが中盤でバランスを取りながら、前線ではFW荒川恵理子を中心に、MF河野朱里、MF中村ゆしか、MF祐村ひかるらが仕掛ける攻撃は得点を予感させた。マイ仙台のMF長野風花、DF西澤日菜乃は初の古巣対決で気合が入る一戦となるだろう。

 少し先になるが、5月22日には浦和とI神戸の強豪対決がある(大阪府・J-GREEN堺S1メインフィールド)。昨季、なでしこリーグで1位、2位の両チームは代表選手も多く、見どころの多い一戦となる(緊急事態宣言の延長により、中止/延期/会場変更などの可能性がある)。

 徹底した感染対策の中、観客数は制限されるが、各試合のチケットは販売されている。近場のスタジアムに出かけてみたり、インターネット中継で、女子プロサッカー選手たちの迫力あるプレーを堪能してみてはいかがだろうか。

イレブンスポーツでは、10試合のライブ放送(見逃し配信あり)がある。

※写真はすべて筆者撮影