23の個性がきらめくヤングなでしこ。中国を2-1で下し、グループステージ3連勝で準決勝に進出!

3連勝で準決勝に進出した日本(左から廣澤、中尾、伊藤、大澤、菅野/筆者撮影)

【酷暑の中で掴んだ勝利】

 タイのチョンブリーで行われているAFC U-19女子選手権に出場している日本は、グループステージ第3戦で中国と対戦し、2-1で勝利。初戦のミャンマー戦(○5-0)、第2戦の韓国戦(○2-0)に続き、3連勝した。グループB首位で準決勝に進出した日本は次戦、11月6日にグループA2位のオーストラリアと対戦する。

 引き分け以上で準決勝進出が決まる日本に対し、中国はこの試合に勝たなければグループステージ敗退と2020 U-20女子W杯への出場権が失われる背水の陣。応援に駆けつけたサポーターや視察に訪れていた育成関係者が一様に見守る中、キックオフの笛が鳴った。

 タイは常夏の国で、日が沈むのは18時前後。16時キックオフとなったこの試合は初戦同様、30度を超える炎天下で行われた。湿度も80パーセントを超えており、風がなく、座っているだけで汗がにじんだ。中2日で連戦してきた両国の選手たちからは、さすがに疲労も感じられた。

 日本は韓国戦から4名を変更。

 スターティングメンバーはGK伊能真弥(いのう・まや) 、4バックは右からDF船木和夏(ふなき・のどか)、DF後藤若葉、DF高橋はな、DF富岡千宙(とみおか・ちひろ)。3試合連続でMF菅野奏音(かんの・おと)とMF中尾萌々(なかお・もも)がダブルボランチを組み、右に瀧澤千聖 (たきざわ・ちせ)、左にMF森田美紗希(もりた・みさき)。FW大澤春花(おおさわ・はるか)とFW加藤ももが2トップを組む4-4-2のフォーメーション。伊能、加藤の2名が今大会初出場となった。

 対する中国は3-4-3でスタート。160cm後半から170cmを超える長身の選手が大半を占め、日本は高さではかなり劣っていた。だが、中国はそのフィジカルや高さを生かそうとはせず、足下でつなぎながら3トップが日本の最終ラインの背後を狙う攻撃を仕掛けてきた。特に、ミャンマー戦で2得点したFWヨウ・センのスピード感溢れるドリブルは脅威だった。

 日本は中国の横パスに対しては粘り強くスライドを繰り返し、縦パスが入った瞬間に、近いポジションの選手同士が複数で囲んで一気に奪い切ることを徹底。サイドでは小柄な瀧澤や森田が、相手の懐に入り込んでボールを奪うなど、個々の間合いの詰め方にも工夫が見られた。緻密に張りめぐらされた日本の守備網を突破できず、中国の攻撃は徐々に勢いを失っていった。

 そして、日本の先制点は早い時間帯に生まれる。

加藤もも(筆者撮影)
加藤もも(筆者撮影)

 ペナルティエリア手前で、菅野が相手2人の間を通す縦パスを入れると、これを受けた森田が素早いターンから同じく相手の間を通すスルーパスを送る。ここに右から走り込んだ加藤が、GKの動きを見て冷静にゴール右隅に流し込んだ。6人のDFが守るゴール前を3人で華麗に崩したゴールにスタンドが沸いた。

「自分の持ち味である、裏に抜けるタイミング(の良さ)やスピードを生かして点を取ってチームに貢献したい」

と話していた加藤の有言実行のゴールで、日本が試合の主導権を握った。

 中国も徐々にギアを上げ、29分には、ヨウ・センに左サイドの裏に抜け出されてピンチを迎えるが、伊能の好セーブで難を逃れる。

 後がなくなったパク・テハ監督は前半34分に早くも一人目の交代カードを切り、前線に180cmのFWチャン・ユンランを投入。パワープレーに切り替える狙いを見せた。しかし、中国が切り札として投入したこの長身FWへのパスに対しては、「最初の空中戦の競り合いでガツンといって勝てたので、『これはいけるぞ』と思いました」という高橋が最後まで仕事をさせていない。また、背後のスペースを狙ったボールに対しては、後藤が的確なカバーリングを見せた。

 後半は両者ともに疲労が見える中、消耗戦の様相を呈する。点を取らなければならない焦りからか攻撃に粗さが目立ち始めた中国に対し、池田監督は後半、2トップの一角にFW武田菜々子を、左サイドにMF伊藤彩羅(いとう・さら)を投入。フレッシュな2人を中心に高い位置からの守備を継続した。

 ボールを持っても攻め急がず、じっくりとパスを回しながら相手を自陣から誘い出す。64分と66分には、中尾がミドルシュートで相手ゴールを脅かした。

森田美紗希(筆者撮影)
森田美紗希(筆者撮影)

 すると71分、日本に追加点が生まれる。交代に伴って左サイドからボランチに入っていた森田が、「相手のディフェンスのプレスが甘い時間帯だったので、しっかり足を振り切った」と、ゴールまで25mはあろうかという位置から鮮やかなミドルシュートを決め、日本がリードを広げた。

 

 しかし、直後の72分、日本は左サイドをドリブルで突破されてペナルティエリアへの侵入を許し、ゴール前の混戦から最後はMF サン・ピンウェイに押しこまれて今大会初失点を喫する。これで勢いづいた中国はその3分後にも同じような形から日本の左サイドを突破。ペナルティエリア手前でFKを与えるピンチを迎えたが、ここは全員が自陣に戻って凌いだ。

 

 終盤は、中国が最終ラインの長身の選手を前線に上げるなど、あらゆる手を使ってパワープレーを仕掛けてきた。だが、日本も交代でボランチに入ったMF渡邊真衣(わたなべ・まい)が身体を張った守備で中国の猛追を牽制し、日本に流れを引き戻す。その後も個々の選手がボールキープやパスで時間をコントロールし、最後まで1点差を守りきった。

 この結果、グループBは3連勝の日本がグループ首位で準決勝に進出。同グループのもう1試合は韓国がミャンマーに1-0で勝利したため、韓国(2勝1敗)が2位となり、中国(1勝2敗)とミャンマー(3敗)はグループステージ敗退となった。

【輝く23の個性】

 池田太監督は、グループステージ3試合でいずれも交代枠を使い切り、GK3名を含む登録メンバー23名全員を起用した。選手起用の狙いと成果について、中国に対する戦略と合わせて試合後にこう明かしている。

 

「(日本の)ディフェンスの選手からのボールに飛び出す中国の3トップは迫力があります。ここをどう守っていくかを整理して、後ろの選手たちのコーチングを含めて、(試合の中での)対応をプランニングして挑みました。このチームは、全員で戦っていける一体感がありますし、誰が出てもチームのコンセプトを遂行できます。また、この年代で多くの経験をしてもらいたいと思って、可能であれば全員をプレーさせたいなと思っていました。全員でグループステージを戦い抜いたことを頼もしく思います」(池田監督)

 そのなかで、攻撃面では3試合で9ゴールを7名の選手が決めた。メンバーやポジションが変わっても連動性を失わず、多彩な形から決められるのは強みだ。また、守備面は試合を重ねるごとに強度も増している。

 そうした、「全員攻撃・全員守備」を体現する一人が、ここまで3試合にFWとして先発してきた大澤だ。

「前線からの守備は本当に大事だと思っています」と、大澤は言う。なでしこリーグ1部でも堅守と走力をチームカラーとするジェフユナイテッド市原・千葉レディース(千葉)でプレーしており、守備の戦術理解と走力に関してはしっかりとしたベースがある。ユース時代からその成長を見守ってきた千葉の藤井奈々監督は、そのうえで「FWの仕事は得点を取ること」と、若きホープに期待を込めて今大会に送り出した。

「彼女はスピードがない分、ボールの受け方や、パスをどうコントロールして数的優位を作るかといったことを工夫できる強みがあります。相手に追いつかれた際に、どうパスを配給していくか、スペースの使い方は課題ですね」(千葉・藤井監督)

 大会直前の取材でそう語っていた藤井監督の言葉に応えるように、大澤のプレーからは、その課題と真摯に向かい合っていることが伝わった。スペースを見つけて積極的にボールを受け、少ないタッチでさばいてまた受け直す。囲まれても身体を張ってボールを死守し、奪われたら自分で奪い返す。攻守に足を止めることなく、結果的に囮(おとり)になったり、ゴールの起点になっていることも多い。そして、ミャンマー戦では日本を勢いづけるゴールを決めた。

「国内よりも海外の方がボールに一発でくる力が強いので、それをかわせれば、自分の得意な形に持っていけると思います」(大澤)

 残りの試合は、さらなる得点への期待も高まる。

 また、この試合で攻撃面で眩い輝きを放ったのが、1ゴール1アシストの森田だ。

 左サイドで先発し、後半は交代に伴ってボランチに移り、終盤は2トップの一角に入った。交代や味方の動きに合わせてポジションを流動的に変えながら攻撃を牽引した。

「サイドではドリブルで仕掛けたり、カットインからのシュートを意識して、ボランチでは全体のバランスを見ながら仕掛けられるタイミングを探りました。体力には自信があるので、どのポジションでもハードワークしようと思っていました」(森田)

 森田は23名の中で最も小柄な152cmだが、空中戦でのハンデや相手とのリーチ差は予測と動き出しの速さでカバーした。そして、酷暑の中で、終盤になってもスプリントできるスタミナも際立っていた。

「(自分たちの世代は)U-17から世界で負け続けてきた世代なので、日本を勇気づけるためにも優勝したいです」と、試合前には強い覚悟をにじませていた。中盤のユーティリティープレーヤーとして、今後も試合のペースを握るカギになるだろう。

 また、守備面では韓国戦に続き、高橋、後藤のセンターバックコンビの安定感が際立っていた。

後藤若葉(筆者撮影)
後藤若葉(筆者撮影)

 後藤はサイドのカバーも含めて守備範囲が広く、間一髪のピンチは身体を張ったスライディングで対応し、日本の観客を安堵させた。終盤、味方のサポートが遅れた場面ではドリブルで時間を稼ぐなど、試合の流れを読んだプレーも効果的だった。

「相手には背が高い選手も速い選手もいたので、裏を取られないようにして、相手の足元に入った時は前を向かせないようにしました。相手の3トップが連動して動いてくるので、(相手がポジションを変えた際に)自分のマークを『受け渡したつもり』というミスをなくして、受け渡せなかったらマークしている選手が最後までついて行こう、と話していました。高橋選手とチャレンジアンドカバーで助け合いながらできていたと思います」(後藤)

 失点シーンについては、体勢を崩しながらクリアしようとしたボールが味方選手に当たってしまった不運もあったが、「もっとはっきりクリアできたらよかった」と悔いの残る表情を見せ、次戦に向けて気を引き締めていた。日本は今大会初失点となったが、オーストラリア戦への修正材料としてプラスに捉えたい。

高橋はな(筆者撮影)
高橋はな(筆者撮影)

 そして、この中国戦でプレイヤー・オブ・ザ・マッチに輝いたキャプテンの高橋は、ここまで唯一、全試合フル出場でチームを支えてきた。日本のフィールドプレーヤーでは168cmと最も背が高く、空中戦やコンタクトプレーで見せるデュエルの強さは、ロングボールを狙われやすい日本にとって守備の生命線でもある。その強さの背景には、スピードとアジリティを兼ね備えた生来のフィジカル能力の高さに加え、センターバックというポジションを極められる周囲の環境がある。

「センターバックは(後藤選手が)カバーリングに入ってくれるので、前に出てインターセプトを狙いやすかったです。それでも相手にボールが入った時は、自チーム(浦和)で森(栄次)監督から『地面を噛(か)んで(相手からボールを奪いに)いけ』と教わっているので、それを練習から意識しています。普段から(なでしこジャパンで浦和のチームメートでもある)菅澤(優衣香)選手たちを相手にプレーできていることも大きな自信になっていますね」

 浦和の同僚には、昨年U-20フランス女子W杯でセンターバックを組み、世界一を支えたDF南萌華という見習うことの多い先輩もいる。また、センターバックの選手だったという自身の兄からアドバイスをもらうことも多いという。

 酷暑の中でフル出場の連戦が続くが、高橋の表情に疲れは見えない。準決勝で対戦するオーストラリアにも大柄な選手が多いことについて聞くと、

「相手が大きく、強くなるほど自分の中で燃える部分もありますから、勝つためにいい準備をしたいです」

 と、力強く答えた。

【U-20W杯出場をかけた一戦へ】

 グループAを2勝1敗で勝ち上がってきたオーストラリアは、FIFAランキングでは10位の日本に対し8位と格上。これまでの3カ国とはスタイルが異なる相手だけに、しっかりと日本の良さを発揮して勝ちきりたい。ちなみに、グループAでは北朝鮮が3連勝でグループステージ1位通過を決めており、オーストラリアには5-1と圧勝している。

 中2日の日本に対し、オーストラリアは中3日と休みが一日多い。不利な面はあるが、中国戦翌日の日本チームの雰囲気は良く、オンとオフの切り替えがしっかりとできているようだった。

 今大会は上位3カ国に2020FIFA U-20女子W杯(開催地未定)への出場権が与えられるため、次の試合に勝つとW杯出場が決まる。グループステージで積み上げた自信と優勝への強い思いを、この一戦でも力強く表現して欲しい。