なでしこリーグ開幕戦で、18歳のスピードスターが鮮烈デビュー。「個を生かす力」も5連覇へのカギに

リーグ史上初の5連覇を目指すベレーザは、開幕戦で3-1と快勝した(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

【なでしこリーグが開幕】

 桜の開花宣言と共に、20度を超える暖かい陽気となった3月21日(木)、なでしこリーグが各地で開幕した。

 今年は6月にフランスで女子W杯が開催される。高倉ジャパンはメンバーの多くを国内組が占めており、各チームに散らばる代表選手たちの競演は見どころの一つだ。

 また、日本は2023年の女子W杯開催地に立候補を表明しており、国内リーグのプロ化への議論も進むなど、日本女子サッカー界は転換期を迎えている。

 昨年、リーグ杯と皇后杯も含めた3冠を達成した日テレ・ベレーザ(ベレーザ)は今季、リーグ史上最多の5連覇に挑む。個々の高いテクニックと運動量、生え抜きの選手が多くを占める連係の良さを武器に、攻守ともに洗練されたサッカーを見せるベレーザは、2年目の指揮をとる永田雅人監督の下でどのような進化を見せるのか。

 開幕戦の前日には、代表のヨーロッパ遠征(4月1日~)のメンバーが発表され、ベレーザの所属選手が23名中10名を占めた。その平均年齢は20.8歳と若い。

代表に多くの選手を輩出するベレーザ(筆者撮影)
代表に多くの選手を輩出するベレーザ(筆者撮影)

【デビュー戦で期待通りの活躍】

 ベレーザは、開幕戦でホームにジェフユナイテッド市原・千葉レディース(千葉)を迎え、3-1で幸先の良い勝利を飾った。

 春一番の強風が吹き荒れる中、風上だった前半は裏へのボールがことごとく流れてしまい、中央では千葉が作る固いブロックを崩しきれなかった。それでも、少ないタッチでテンポよくつなぐ連係の良さを随所に見せた。

 個々が巧みにマークを外しながらフリーでボールを受け、出し手と受け手のタイミングをぴたりと合わせる。球際やゴール前では体を張り、粘り強い対応を見せていた千葉だが、ダメージは少しずつ、ボディーブローのように蓄積されていった。

 そして後半、試合は動いた。

 61分、裏に抜け出したFW田中美南がゴール前で倒され、PKを決めて先制。78分にはコーナーから同点に追いつかれたが、84分には、交代で入ったFW小林里歌子が飛び出した相手GKの頭上を越すシュートを決めて勝ち越す。

 さらに1分後には、同じく交代で投入され、この試合がベレーザでのデビュー戦となったFW遠藤純が左サイドのスペースに抜け出し、ダメ押しの3点目を決めた。

 前半の嫌な流れを断ち切るため、中盤でパススピードを上げてつなぎながらサイドを意図的に空け、そのスペースを活用するーー狙い通りの攻撃だった。そして、交代で入った小林、遠藤の2人が試合を決め、選手層の厚さを示している。采配を的中させた永田監督は、2人の活躍を予期していたかのように、こう明かした。

ゴールを決めた遠藤(左)と小林(右)(筆者撮影)
ゴールを決めた遠藤(左)と小林(右)(筆者撮影)

「(交代で入った2人は)推進力に特徴があって、相手の最終ラインを割ってゴールに持ち込む能力が高い選手です。フリーな状況になればなるほど、彼女たちのスピードが生きるのは当然、と言いますか。遠藤は今日初めて出ましたけど、練習や練習試合で今日の活躍以上にできることを見せているので、躊躇(ためら)いなく起用しました」(永田監督)

 遠藤は2ゴール目の起点にもなっている。デビュー戦で、出場時間が30分に満たなかったことを考えれば、素晴らしい結果だ。だが、昨年からのパフォーマンスを考えれば驚きはない。

 昨夏のU-20女子W杯では、飛び級で選出され、2ゴール4アシストの活躍で優勝に貢献した。165cmの恵まれた体格に、50mを6秒で走る快足と左足の正確なキックで、海外の選手たちとの体格差を凌駕。そして、昨年11月の国内合宿でフル代表に初選出された。

 そして、代表デビュー戦となった3月のアメリカ、ブラジル、イングランドとの3連戦では2ゴールに絡む活躍を見せる勝負強さを見せた。

 遠藤は昨年までチャレンジリーグ(3部にあたる)のJFAアカデミー福島に籍を置いていたため、1部での活躍は未知数だったが、この開幕戦で、リーグ1部でも実力が通用することを証明した。

 その力を引き出したのは、1試合で多数の決定機を作り出せるベレーザの安定感に他ならない。各々が、周囲の特徴を引き出すのが巧いのだ。

狙い通りの守備からのカウンターから、遠藤のスピードを引き出したFW籾木結花の正確なパスが、この日の3点目をお膳立てした。

 フィニッシュには遠藤らしい巧さが凝縮されていた。

「得意な形に持っていきたかったので、アウトサイドで少しゴールから外れたところに運んで、GKが出てきたところでサイドネットを狙いました」(遠藤)

 表情は初々しかったが、冷静に試合を振り返るその口調には、新人とは思えない風格が感じられた。

 今年のベレーザは、ここ数年でも特にアタッカーの層が厚い。全員が代表候補で、ピッチに立つための競争は激しい。

 昨シーズン、3年連続の得点王(15ゴール)に輝き、ベストイレブンとMVPの個人3冠を獲得した田中が前線に張り、インサイドハーフのポジションには、代表でも確かな存在感を示すMF長谷川唯と籾木が入る。さらに、2015年から3年連続リーグMVPのMF阪口夢穂(この試合はコンディション不良のためベンチ入りせず)も、いよいよ完全復帰目前だ。

 この試合で2点目を挙げた小林は、昨年、長いケガから復帰して着実にパフォーマンスを上げ、3月2日のブラジル戦では決勝ゴールを挙げるなど、代表でも爪痕を残している。

 左サイドで先発したFW植木理子は、年代別代表のエースストライカーとして活躍してきた実績に加え、ベレーザで田中、籾木の両エースとともに数々の重要なゴールを挙げてきた。そして右サイドには、昨年ルーキーとして鮮烈なインパクトを残し、新人賞にも輝いたFW宮澤ひなたがいる。

 小林、植木、宮澤、遠藤の4名は4月のヨーロッパ遠征に招集されており、リーグと代表の活躍次第では、2ヶ月後のW杯で、最終メンバーに滑り込む可能性も十分にあるだろう。

「戦術を超えて、個で力を発揮できる選手をいつも探している」と話す高倉麻子監督もこの試合で視察に訪れていたが、その目に、彼女たちの活躍はどう映っただろうか。

【進化を続ける2年目の永田サッカー】

 4-1-4-1(4-3-3)を基本システムとするベレーザは、マンチェスター・シティのように、明確なプレーモデルがある。特徴的なのは、2列目のインサイドハーフとウイング、そしてサイドバックが目まぐるしくポジションを入れ替えながらビルドアップしていく動きだ。永田監督は昨シーズン、そういった攻守の土台となるいくつかの共通認識を、トライアンドエラーを繰り返しながら定着させていった。そして、個の特徴が生きるサッカーのスタイルの土台を作った。

 今シーズン、永田監督が特に強調するのは、「個」の成長を追求することだ。

「5連覇しようとか、この試合で勝とう、とは一切言っていません。いいプレーとはどういうプレーで、それを磨くとはどういうことで、それらを足していったらどんな形になるかを深く追い続ける方法を提供するだけです」(永田監督)

2年目のシーズンを指揮する永田雅人監督(左/筆者撮影)
2年目のシーズンを指揮する永田雅人監督(左/筆者撮影)

 

 実際、選手は全員がそれぞれに自身の伸びしろと課題を把握しており、試合では明確なテーマを持ってチャレンジ→修正→チャレンジ、というサイクルをこなしている。その課題をクリアすることで試合での出場時間が延びたり、ゴールなどの結果に結びつくと分かっているから、他人と比べたり、悩んでメンタルが落ちたりすることも少ないのだろう。

 昨年と比べると、この試合では特に田中のプレーに変化が見られた。昨シーズンはトップのポジションに張り、ゴール前での仕事がメインだったが、この試合では中盤に降りてゲームメイクに加わる場面も多く、終盤はインサイドハーフのポジションへ。得意の反転から2点目をアシストし、2点に絡む活躍で勝利の立役者になった。

「今、取り組んでいることは、ゴール前での幅を広げることです。ボールの置きどころとか深みを取ること。ゴールを自分が取るというスタンスを崩さずにいろんな場所に顔を出したり、ゲームメイクできるシーンを増やしています」(田中)

 不得意なものを克服するのではなく、本来持っている資質や可能性に対するアプローチだからこそ、選手はポジティブに取り組める。

 田中は高倉ジャパンに継続的に選ばれてきた一人だが、今年に入ってからはまだ招集されていない。だからこそ、リーグ戦の1試合、1試合で成長を示すことが重要になる。

「W杯に出たい思いはもちろんあります。W杯で活躍するために、チームでどうなりたいかということをはっきりさせて、それに向かってチームで取り組んでいるので、その先に、代表に呼ばれればすごく嬉しいです」(田中)

 開幕前、そう話していた田中の表情に焦りはなかった。目の前の課題に全力で取り組み、結果を残し続けるーーあとは、吉報を待つだけだ。

 ベレーザは次節、3月24日(日)に、アウェーの上野運動公園競技場(三重県)で、伊賀フットボールクラブくノ一(伊賀)と対戦する。1年で1部復帰を果たした伊賀が、前人未到のリーグ5連覇を目指すベレーザにどんな挑戦状を突きつけるのか、楽しみだ。