なでしこジャパン入りを目指す23選手のチャレンジ。5日間の合宿の成果とは?

高倉監督の指示に耳を傾ける選手たち(C)Kei Matsubara

【新戦力発掘】

 2月4日~8日まで、大阪府堺市のJ-GREEN堺で「なでしこチャレンジ合宿」が行われた。

 リーグがシーズンオフのこの時期は、例年、U-23日本女子代表がスペインで行われるラマンガ国際大会に出場していたが、今年は同大会に参加しない。

 代わりに、20~28歳の幅広い世代から23名(DF北川ひかるとFW上野真実が怪我のため途中離脱)の選手を招集し、今後、なでしこジャパン入りの可能性がある選手の見極めを目的として、今回の合宿が実施された。

 招集メンバーの中には、FW高瀬愛実(INAC神戸レオネッサ)やFW吉良知夏(浦和レッズレディース)、MF田中陽子(ノジマステラ神奈川相模原)ら、以前のなでしこジャパン招集経験を持つ選手も名を連ねた。

 3人を含めて、U-23の枠だと溢れてしまう24歳以上の世代からの新戦力の発掘も、今合宿の目的の一つだ。

「U-23のチームには、遅咲きで開花した25、26歳あたりの選手たちが入りません。その年代で、各チームの核になっている選手たちを一度、見てみたいと思いました」(高倉麻子監督)

 5日間という限られた期間で、自分の良さを出しきり、代表入りを果たしたいーー。

 高倉監督をはじめ、なでしこジャパンのコーチングスタッフが見守る中、選手たちの積極的なプレーが光った。

【「死ぬ気で奪いにきました」】

 初めて顔を合わせる選手同士も多い中、率先してチームを盛り上げたのが、今回のメンバーで最年長(27歳)のDF櫻本尚子(ジェフユナイテッド市原・千葉レディース)と高瀬だ。

 対人の強さを武器に千葉の堅守を支えるDF櫻本は、常盤木学園高校出身の同級生で現なでしこジャパンのキャプテンでもあるDF熊谷紗希や、元チームメートのGK山根恵里奈から話を聞き、なでしこジャパンのコンセプトに関する情報を集めて今回の合宿に臨んだという。

「死ぬ気で(なでしこジャパン入りを)奪いにきました」という言葉には、並々ならぬ覚悟が滲んでいた。

「なでしこジャパンではビルドアップが求められているので、準備の早さやボールの置き所、立ち位置などについて、試合映像で『こういうやり方をするんだな』と自分なりに見てきたのですが、ミーティングで説明を受けてみると、実際には全く違いました。今回学んだことを意識しながら、とにかくアピールして、少しでも爪痕を残すようなプレーや行動をしたいです」(櫻本/合宿4日目)

全体の雰囲気を盛り上げながら、積極的な姿勢をみせた櫻本尚子(C)Kei Matsubara
全体の雰囲気を盛り上げながら、積極的な姿勢をみせた櫻本尚子(C)Kei Matsubara

 代表入りへの強い想いを胸に、櫻本はリーグ戦で自分なりのアピールを続けてきたが、なかなか声がかからず、「内心、悔しい思いもあった」という。だが、その目標はブレることはなかった。そして、今回の合宿に名前が入ったことで確かな一歩を踏み出した。

「サッカーをあと何年やれるか分からないし、十何年やって来たものを最後は全部出し切って、もっと上を目指したいと思っているんです。ここで結果を出さなければ、普通の選手で終わっていくと思います。東京オリンピックまで、あと2年しかないので。毎年、今年こそは、という気持ちで臨んでいます」(櫻本)

 約2年ぶりの代表招集となった高瀬も、櫻本と共にピッチ内外で声を出し、チームを活気づけた。高瀬は所属チームで昨シーズン、途中にFWからサイドバックにコンバートされ、高倉監督になって初めて招集を受けた。

代表復帰に意欲を見せた高瀬愛実(なでしこリーグ2017開幕戦(C)アフロスポーツ)
代表復帰に意欲を見せた高瀬愛実(なでしこリーグ2017開幕戦(C)アフロスポーツ)

「チャンスをもらえたことに感謝して、とにかくアピール、アピール、アピールです。守備でも結構、チャレンジしていいんだなと思ったし、ラインコントロールをマメにやったのも新鮮でした。一番年上なので、ピッチ外でも無駄に喋ったり、慣れないこともいっぱいやりながら楽しんでいます(笑)」(高瀬/合宿3日目)

 新たなポジションでもっとサッカーを学んで、代表に再挑戦したいーー高瀬の口調には、そんな意欲が表れていた。

 櫻本と高瀬だけではない。2人に触発されるように、なでしこジャパン入りへの想いをそれぞれがピッチで表現しようという熱気に満ちていた。

 アルビレックス新潟レディースでは攻撃的ボランチとして、昨シーズンチーム最多の4得点を挙げたMF阪口萌乃も、チャレンジ合宿は今回が初。新潟は現在、雪でグラウンドが使えず、コンディション面では不安もあった反面、楽しみな気持ちが勝ったという。

新潟の中盤を支えるボランチの阪口萌乃(右/皇后杯2017準決勝でベレーザの阪口夢穂とマッチアップ(C)アフロスポーツ)
新潟の中盤を支えるボランチの阪口萌乃(右/皇后杯2017準決勝でベレーザの阪口夢穂とマッチアップ(C)アフロスポーツ)

「選んでもらえたことがすごく嬉しいですし、とにかく、ワクワクして参加しています。トレーニングでは、どんな状況でもパススピードを上げることや、ボールを受ける時の体の向きを何度も言われて意識するようになりました。今後は一瞬の動き出しとか、小柄でも当たり負けしない強さを継続して鍛えていきたいです」(阪口/合宿4日目)

 新たな刺激を受け、開幕まで1ヶ月余りとなったリーグ戦に向けて、阪口は「やる気満々です」と、力強い表情を見せた。

【完敗の中で見えたもの】

 3日目の午後には、男子のセレッソ大阪ユース(高校1年生)とのトレーニングマッチ(30分×3本)を実施。スピードとパワーに勝る相手に押し込まれ、結果は0-10の完敗だったが、局面で持ち味を発揮した選手たちもいた。

 千葉で攻守のキーマンを務めるボランチの瀬戸口梢は、小柄ながら視野が広く、丁寧なボールコントロールでビルドアップの起点に。猛烈な勢いでプレッシャーをかけてくる相手の勢いをかわす巧さを見せた。

 また、センターバックでフル出場したDF國武愛美(ノジマステラ神奈川相模原)も、存在感を発揮。

 

トレーニングマッチで落ち着いた対応を見せた國武愛美(なでしこリーグ2017開幕戦(C)アフロスポーツ)
トレーニングマッチで落ち着いた対応を見せた國武愛美(なでしこリーグ2017開幕戦(C)アフロスポーツ)

國武は昨年、リーグ1年目だったが、鋭い読みと冷静なビルドアップでノジマの最終ラインを支え、昇格1年目の1部残留に大きく貢献。このトレーニングマッチでは、リーグでは味わえないようなスピードとパワーで仕掛けてくる相手に苦戦したが、時間の経過とともに、その「差」に慣れる調整力の高さを見せた。

「1点目はマークについていた相手に速さで競り負けたので、相手との間合いを広げて対応しました。速さに慣れてからは相手を見てかわしたり、相手の逆を取れた場面もあったので、自信を持って今後も続けていきたいです」(國武/試合後)

 國武とともにフル出場したFW谷口木乃実(バニーズ京都SC/2部)は、懐の深いボールキープで少ない攻撃のチャンスに絡み、後半は自身初の右サイドバックに挑戦。櫻本のコーチングに助けられながらも、身体能力の高さを印象付けるプレーを随所に見せていた。

【リーグのレベルアップの鍵を握る存在】

 5日間の合宿を終えて、高倉監督は合宿の手応えを、こう口にした。

「みんなが『やってやる』というエネルギーに満ちていて、新鮮でした。即戦力で選べる選手はいないけれど、今後、リーグでパフォーマンスが良ければ、どこかのタイミングで呼んでみたいと思う選手が数人います。今後は、もっとリーグを強くしてほしい。この選手たちがその鍵を握っているし、(日テレ・)ベレーザの一人勝ちが続くようでは困りますから。『自分たちがもっとやらなきゃ』、『なでしこに食い込んでやる』と、本気で取り組む気持ちが日本を強くすると思います」(高倉監督)

 現在、リーグはなでしこジャパンに最も多くの選手を輩出するベレーザが3連覇中で、今シーズンも優勝の最有力候補だ。そのベレーザから今回のなでしこチャレンジ合宿に唯一、選ばれたのがMF三浦成美だ。育成年代から高倉監督の下で長くプレーしてきた三浦は、その「イズム」をよく知る選手の一人でもある。

今シーズンのリーグでの活躍を誓った三浦成美(2017年4月15日、新潟戦(C)中西祐介/アフロスポーツ)
今シーズンのリーグでの活躍を誓った三浦成美(2017年4月15日、新潟戦(C)中西祐介/アフロスポーツ)

 三浦は今回の合宿では最年少の20歳だったが、先輩たちに負けない状況判断の良さを見せていた。代表選手たちがしのぎを削るベレーザのハイレベルな環境で揉まれてきた三浦にとって、「なでしこジャパン」は身近な存在であり続けてきたからこそ、その距離感も肌で感じている。

「ベレーザのレギュラーは、なでしこジャパンでプレーしたことのある選手がほとんど。そのチームで試合に出ることができたら、また一歩、代表に近づけると思うので、目標ははっきりしています。リーグ戦で試合を決定づけられる選手になりたいし、今年は単純な体の強さや、気持ちの面でも強くなることが目標です」(三浦)

 今シーズンのなでしこリーグは、3月21日(水・祝)に開幕する。

 なでしこリーグ2018日程

 なでしこジャパンは2月末からポルトガルで行われるアルガルベカップに臨み、その後、4月にはAFCアジアカップ(兼2019フランスワールドカップ・アジア予選)、8月にアジア競技大会(対戦国は未定/インドネシアで開催予定)、そして、来年のFIFA女子ワールドカップ、2020年の東京オリンピックへと向かっていく。

 今回のなでしこチャレンジ合宿で得た成果を、各選手が所属チームで遺憾なく発揮することに期待している。

参考:

アルガルベカップ2018メンバー(JFA)

大会概要・スケジュール

※全試合をフジテレビ系列にて全国生中継(一部地域を除く)