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首位ベレーザの背中を捉えるのは、どのチームか。拮抗した試合で輝いた仙台と長野のチーム力(3)

松原渓スポーツジャーナリスト
試合が行われたユアテックスタジアム仙台(写真:アフロスポーツ)

5月27日(土)に行われたなでしこリーグ第10節、マイナビベガルタ仙台レディースとAC長野パルセイロ・レディースの一戦は、1-1のドローとなった。

首位ベレーザの背中を捉えるのは、どのチームか。拮抗した試合で輝いた仙台と長野のチーム力(1)

首位ベレーザの背中を捉えるのは、どのチームか。拮抗した試合で輝いた仙台と長野のチーム力(2)

以下、試合後の監督・選手コメント。

【監督・選手コメント】

越後和男監督(仙台)

ーー試合を振り返っていただけますか?

(後半アディショナルタイムに同点に追いつかれて)ショックが大きいですが、選手は最後まで頑張ってくれたと思います。(1-0で)逃げ切れるかな、と感じた時点で、僕に隙があったのだろうと思います。

ーーどのような狙いでゲームに入ったのでしょうか?

(長野は)似たようなタイプのチームなので、どちらがカウンターの精度が高いかがポイントになると思っていました。守備もしっかりオーガナイズされていましたが、カウンターの精度やゴール前まで行く精度は我々の方が少し高かったと思います。ただ、点が入っていないですし、そこが勝負になると、(選手たちには)今週の練習中から伝えてきました。相手のストロング(ポイント)である横山選手も、ある程度は意識高く潰せていたのではないかと思います。

ーー試合終盤の守備についてはいかがでしたか?

当然、負けているチームは最後の5分ぐらいは勢いを持ってくるので、もっと相手を頻繁に裏返せれば良かったのですが、それほど(相手の攻撃を)脅威には感じていませんでした。ああいうところでああいうミス(後半アディショナルタイムの失点場面)が起きないようにするためには、シュートを打たせない距離までプレッシャーをかけなければいけません。ただ、終盤にあの高さ(ペナルティエリア手前)からシュートを打たせないようにプレスに行けというのも酷ですし、そういうことです。

ーー最初の交代は85分でしたが、後半はどのようなゲームプランだったのでしょうか?

いつもはもう少し早い段階で動くのですが、みんな体も動いていましたし、それほどピンチを招いていなかったので、ギリギリまで頑張ってみようと。代えることでバランスが壊れるのも怖かったので、交代が遅くなりました。

ーー来週からはカップ戦が始まりますが、どのように戦おうと考えていらっしゃいますか?

リーグ戦同様、優勝を目指します。普段、なかなかリーグ戦で思い切って使えていない選手も、紅白戦ですごく良いプレーをしているので、思い切って使っていこうと考えています。ただ、若手の修行の場とは捉えていません。チャンスは与えるけれど、「それは自分で掴むものだ」と選手に伝えました。

FW 浜田遥(仙台)

ーー試合を振り返っていただけますか?

優勝するために、負けてはいけない試合だということはみんな分かっていましたし、前回(開幕戦●0-1)負けている相手だったので、強い気持ちを持って試合に臨みました。球際で負けてはいけない、勝ちたい気持ちはしっかり表現できたと思います。最後の最後で追いつかれた形だったので、悔しいですね。

ーー先制ゴールを振り返っていただけますか?

ケイト(ケイトリン・フォード)が良いボールをくれたので、入って良かったです。これまでにたくさんの決定機を外していたので、今日は入って良かったです。

ーー開幕戦で対戦した時と比べて、手応えはいかがですか?

最後で耐えていたら勝てたかもしれない試合だったことは次への課題ですし、そこで耐えることができたら優勝できるチームになれると思います。追加点が取れなかったことでこういう結果になったので、チームで決めるところを決めていかないと、こういう結果になるということだと思います。

ーー今シーズンに入ってケイトリン・フォード選手と2トップを組んでいますが、コンビネーションはいかがですか?

(試合中に)目が合う機会が増えて来ましたし、ケイトも自分のプレースタイルを分かってくれているので、非常にやりやすいです。ケイトは相手にとって脅威ですけれど、自分はそうでもないので、ケイトを活かすためにできることをやりたいです。

MF 佐々木繭(仙台)

ーー試合を振り返っていかがですか?

アウェイで戦った時に良い形を作れていたので、もっとその精度を高めていこうと話して試合に入ったのですが、前回戦った時よりはバタついてしまった感じがします。

ーーボランチを組む(カトリーナ・)ゴリー選手との連携はいかがですか?

球際で結構強く行ってくれるので、そこはしっかりサポートをするように意識しています。

ーーチームとして、裏を狙う場面と、つなぐ場面の使い分けはいかがですか?

これから暑くなる中で、つなぐ攻撃の質を上げていきたいです。ただ、つないでビルドアップしようという意識が出てきた分、開幕戦で長野と戦った時よりもカウンターの精度は落ちたと思います。(自分のポジションでもある)中盤で、後ろからボールを受けるのか、縦に(ロングボールを)入れた後のサポートに行くのかの判断で迷ってしまうところがあるので、その点はもっと共通理解を持って(ロングボールとつなぐ攻撃を)使い分けられるようになりたいです。

ーー終盤、1-0でリードしている時のゲームプランはいかがでしたか?

体力も消耗していましたし、逃げつつも得点は狙えるところで狙いたかったのですが、逃げ切るのなら、もっとしたたかに戦えるようにならないといけないと思います。

ーーリーグ戦、ここまでの10試合を振り返っていかがですか?

今日の試合もですし、ノジマ戦(△2-2)とか、もったいない試合が多かったですね。勝てても1点差とか、本当にギリギリの戦いばかりしているので、苦しかったですね。

ーー個人としての手応えはいかがですか?

毎試合、映像を見て振り返って、次の試合に臨むようにしているのですが、本当に少しずつですけれど、開幕戦の時よりは、一つ自分で運んでみたり、以前なら前に蹴ってしまった部分でトラップできるようになったり、小さいことですけれど、少しずつは良くなっているとは思います。ただ、チーム全体をもっと落ち着かせることができる選手になりたいので、そういう点ではまだまだだと思います。

DF 市瀬菜々(仙台)

ーー試合を振り返っていかがですか?

横山久美さんのところは、一人はしっかりボールを奪いに行く気持ちで行くことを徹底していました。もっと潰せた部分もあったのですが、良い体勢でシュートを打たせないことはできていたと思います。ディフェンスの自分としては、最後に決められたのは反省すべきところです。

ーー横山選手とのマッチアップで手応えは得られましたか?

前半は結構自由にプレーされていましたし、後半も一回、1対1で抜かれかけた場面があったので、その後は絶対に負けたくないと思っていました。終盤はしっかりクリアできて良かったです。

ーー1対1になる場面は、どのようなことを意識してプレーしていますか?

(自分は)スピードがないので、自分の間合いを取りながら、相手のタッチが大きくなったところとか、いけるな、というタイミングを探ります。そのポイントが見つかるまでは、自分からはアクションを起こさないようにしています。

ーー来週からカップ戦が始まりますが、目標をお願いします。

リーグ戦もまだ途中ですが、カップ戦でも良い結果を残して、両方で優勝できればいいなと思います。 個人的には、無失点ですべての試合を終えたいですね。

MF 安本紗和子(仙台)

ーー試合を振り返っていかがですか?

カウンターも行けていた部分もありましたが、後半は相手の時間帯も長くなった中で、最後の最後まで体を張っていたのですが、ラストのところで決められてしまったのは、今後の課題ですね。 その前に追加点を取っていれば、試合展開も変わったと思います。

ーー今年は、どのような点で自分の良さを出せていると感じますか?

カウンターの切り替えの部分で、スピードアップする時に、相手よりも速くスピードに乗って、走ればいいボールが出てきます。そこで多くのチャンスを作れていると思います。

ーーオーバーラップする場面も多いですが、どのようなことを意識してプレーしていますか?

攻守ともに、常にサボらないことは意識してやっています。それと、ハードワークは自分のストロングポイントでもあるので、そこは活かせればいいなと思っています。

ーー今後はどのような点を改善していきたいですか?

クロスは数を多く上げられてはいるのですが、得点になっていないので、クロスやシュートの質を上げることが課題です。

本田美登里監督(長野)

ーー試合を振り返っていただけますか?

しぶとく引き分けることができました。最後まで諦めずに戦う姿勢が見せられたことは、今年のチームの成長だと思います。後半開始早々に失点して、その後も危ないシーンがいくつかありましたが、去年だったらもう少しそこから崩れて、2点目の失点が早い時間に来ていたかな、と。そこで踏ん張れたことは、去年より強くなったところかなと思います。シュートらしいシュートは相手の方が多く、個の力も相手の方が上だったと思うのですが、チームでごまかすことができたかなと思います。ただ、警戒していたところでやられてしまいました。

ーー仙台との対戦を踏まえて、この一週間はどのような対策をされたのでしょうか?

ホーム戦での対戦でもそうでしたが、お互いに辛抱して1点ゲームになることは想定内でした。その中で大きなミスをしないこと、90分間のうちに必ずチャンスは来るから、そのチャンスを絶対に逃さないようにしようと選手に伝えました。ガマン比べになるということは選手たちも想定内だったと思います。

(裏のスペースに)蹴ってくるのは分かっていて、10番(浜田)がボールをそらす、18番(フォード)が走り、サイドの選手が走ることも分かっていました。そのために何かのトレーニングをして来たわけではないのですが、うちの坂本(理保)と齊藤(あかね)、木下(栞)と國澤(志乃)のところで、FWの2人を挟んで、4対2でブロックの中に入れて守備をしようということは意識しました。

ーー後半のゲームプランはいかがでしたか?

後半の前半は、相手に(ペースを)握られたと思いますが、後半の後半は、うちがだいぶ押し込めたかな、と。時間はうちの方が短かったですが、その中で必ずチャンスは来ると思っていたので。ただ、横山(久美)が相当、警戒されていて、6番(ゴリー)にコースを消されて、26番(北原)に背中で背負わされて、ほとんどボールを奪われてしまう状況が続いていました。前半は久美が少し下がった位置にいたのですが、後半はそれを逆にして、横山を前に出して泊(志穂)を下げたのですが、そうすると泊が仕事ができなくなってしまったので、彼女たちに入るボールの率が低くなってしまいました。

ーー去年よりも、中盤でパスをつなぐ攻撃が良くなっている手応えはありますか?

去年は、ディフェンスの選手たちが怖くて前に蹴ってしまっていたんです。(センターバックの)木下も坂本も、来たボールを跳ね返すのが精一杯だったんです。ただ、(今シーズンは)そこで止めることができたり、隣につなぐことができています。そこからサイドバックに入れたり、木下から齊藤、齊藤から國澤に入れられるので。去年に比べると、坂本と木下のボールをつなぐ力が上がったことが大きいと思います。

ーーこれでリーグ戦は中断期間を迎えますが、リーグ前半戦を振り返っていかがですか?

良いことも悪いこともありますが、中断期間前にこのポジション(3位)でいられたことは良かったかなと思います。去年の順位(3位)はまぐれの部分もあったけれど、今年はそのまぐれを確実なものにしていきたい中で、選手たちも「この順位にいることが偶然ではない」と、少しずつ自信にしてくれていると思います。 去年から連敗がない中で、選手がネガティブになっていないのはいいですね。

MF 國澤志乃(長野)

ーー同点ゴールを振り返っていただけますか?

五嶋(京香)が(シュートを)打って、キーパーが弾いたボールをヘディングでシュートしました。そこで、(相手の)キーパーとディフェンダーが重なったところに内山が飛び込んで潰れてくれたから、こぼれてきたボールを押し込むことができました。最後まで諦めないみんなの頑張りがゴールにつながったと思います。

ーーボールを支配する時間帯もありましたが、ゲーム運びはイメージ通りだったのでしょうか?

失点の後、相手のディフェンスラインが開いて、後ろでボールを動かされる場面ではボールを奪いきれませんでした。そういう場面では、サイドに追い込んで奪いたいと狙っていました。後半、ボールを持てる時間が長くなった時がありましたが、その時間帯は、しっかり押し込めていたと思います。

ロングボールを放り込まれる場面がいくつかあった中で、(センターバックの)坂本がヘディングで跳ね返してくれていたので、そのセカンドボールをもっと中盤で拾えたら良かったですね。

ーー6試合負けなしですが、振り返っていかがですか?

内容が伴っていなかった試合もありますが、守備ではギリギリのところで抑えられているので、そこには手応えを感じています。攻撃では縦に急ぎすぎたかなと思う場面がこの試合でもありました。ボールを持てている時間帯に、もう少しサイドを使いながら、いつ縦を狙うのかが大切ですが、効果的ではない縦パスもあったので、もうちょっとサイドを使いながら、いつ横山に当てるのか、泊に入れるのかというところを、もうちょっと考えながらやっていきたいと思います。

ーー今シーズン3ゴール目ですが、いかがですか?

すべてアウェイのゴールなので、次はホームで決めたいですね。

スポーツジャーナリスト

女子サッカーの最前線で取材し、国内のなでしこリーグはもちろん、なでしこジャパンが出場するワールドカップやオリンピック、海外遠征などにも精力的に足を運ぶ。自身も小学校からサッカー選手としてプレーした経験を活かして執筆活動を行い、様々な媒体に寄稿している。お仕事のご依頼やお問い合わせはkeichannnel0825@gmail.comまでお願いします。

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