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ちふれASエルフェン埼玉とマイナビベガルタ仙台レディースが迎えた劇的な結末(2)

松原渓スポーツジャーナリスト
1部での厳しい戦いを糧に成長を続ける埼玉(C)松原渓

5月14日(土)になでしこリーグ8節が行われ、ちふれASエルフェン埼玉がホームにマイナビベガルタ仙台レディースを迎え、仙台が1-0で勝利した。

ちふれASエルフェン埼玉とマイナビベガルタ仙台レディースが迎えた劇的な結末(1)

以下、試合後の監督・選手コメント。

【監督・選手コメント】

越後和男監督(仙台)

ーー試合を振り返って、いかがですか?

グラウンドが思った以上に良くなかったです。背後を狙いつつ、ここ数試合は自分たちでボールを動かしながらゲームを進めることにもチャレンジするようになりましたが、グラウンド状況に応じたサッカーができませんでした。でも、それなりに自信をつけてやってくれていると思うので、彼女たち(の判断を)尊重しています。

ーーロングボールを積極的に入れる狙いについて、手応えは得られましたか?

ボールをつなぐことを意識すると、結局、背後の狙いは忘れがちになってしまうんです。相手の背後を狙うからこそバイタルエリアが空いて、相手にとって怖いサッカーになると思うので、そこ(の使い分け)をもう少し徹底して取り組んでいきたいなと思います。

ーーフォード選手になかなかロングボールが入らなかった理由を、どのように考えていらっしゃいますか?

グラウンド状況がよくないこともあって、(フォードの)ファーストタッチが上手くいかなかったですね。スピードはあるのですが、(足下が)上手いわけではないので。ただ、ボールが収まっても、人を探す器用さがあるわけではなくて、猪突猛進なところがあります(笑)。でも、相手のDFからしたら、ああいう選手は嫌だと思いますね。

ーープレシーズンからここまでの流れを振り返っていかがですか?

最初はフォードがどのぐらいできるのかわかっていなかったですし、その頃にゴリーは加入もしていなかったので、全く、今の状況は考えていなかったですね。2人が加入して、開幕戦、2戦目と勝利したのですが、内容的には全然ダメだったので、第3節の長野戦(●0-1)で、徹底して前半は背後を狙っていこうと。それで、「どうだった?」と(選手と)話して、「もうちょっと繋げた」ということだったので、だったらそういう場面では繋いでいこう、と。 背後を狙うことが我々のストロングポイントだということを再確認して、良いゲームを重ねてきていたのですが、今日はちょっと背後が足りなかったな、と。また、来週はそこを微調整して臨みたいと思います。

ーー越後監督にとって初めてのなでしこリーグはいかがですか?

もうちょっと点を獲ってほしいな、と思っています。浦和戦(0-0)は(相手の)倍以上の(シュートを)打っても点が入らなかったし、INAC戦(○2-1)やノジマ戦(2-2)はもっとチャンスがありました。日テレ戦(●0-3)もプランとしては悪くなかったのですが、ちょっとしたミスで先に失点してしまうと(きつくなります)。ただ、どこが相手でも戦える自信はつきましたね。

FW 西川明花(仙台)

ーー途中出場で決勝ゴールを決めました。試合を振り返っていかがですか?

ピッチ状況とか、難しい試合だったと思いますが、最後に気持ちを一つにして決められたゴールだと思います。

ーー監督からはどのような指示をもらってピッチに立ったのですか?

「行ってこい!」と(笑)。

ーー2試合連続で決勝ゴールを決めたことについてはいかがですか?

私はケイト(ケイトリン・フォード)やハカ(浜田遥)のようにスピードやパワーがあるわけではなく、ドリブルも上手いわけではないので、ゴール前で仕事をすることが一番のアピールだと思っています。ゴール前に強い気持ちで突っ込んでいくのは得意なので、『絶対に決めてやろう』という気持ちで試合に入りました。

ーー縦に速いサッカーの中で、どのようなプレーを心がけていますか?

周りの選手に助けてもらいながら前に行きたいので、味方との距離は意識してプレーしています。ロングボールが多くなる試合では、気持ちの強さでゴールを目指しています。ケガ人が多く、出場できているということもあると思いますが、自分にとってはチャンスだと思うので、ここでアピールしていきたいですし、引き分けている状況で出ることが多いので、ゴールを思い切りよく狙っていきたいです。

DF 市瀬菜々(仙台)

ーー2連勝です。リーグ戦にコンスタントに出場している中で、手応えはいかがですか?

途中、勝てなかった時期があったのですが、その中でもボールを支配できていたり、カウンターが効いていて、あとは決めるだけ、という試合が続いていたので、その中で(前節)INACに勝てたのは、決めきれたことが結果につながったと思います。今日の試合に関しては、両チームともチャンスがない感じでしたが、最後に点を獲れて良かったです。 今日はグラウンドの状況と天候もあるので、仕方がない部分もあったと思いますが、もう少し繋げる場面がありました。

ーー縦に速い攻撃を目指す中で、どのような点を、より良くしていきたいと考えていますか?

(仙台は)ボールを奪った後のスピードが去年よりもあると思いますし、縦に強い選手がいるので、そこでボールをキープすることもできていると思います。ただ、今のままだと相手も研究してくると思うので、つなぎながら裏も狙っていく、という幅が必要だと思います。縦に速いサッカーですけれど、個人的には遠くを見ることで近くの選手も見えるように意識しています。はじめにFWを見て、出せなければボランチとかサイドハーフにボールをつけるようなプレーができるようになると、もっと上(のレベル)に行けると思っています。

ーーボールが来る場所や、プレーを予測する精度を高めるために意識していることはありますか?

ポジショニングを、少しずつでも、常に変えるということは意識しています。そうすることで、次のプレーを予測しやすくもなります。

ーー普段の練習の中でどのようなことを学べていると思いますか?

ケイトリン・フォード選手に1対1をお願いして練習してもらったり、強い選手と練習中から一緒にプレーできることは大きいですね。

MF カトリーナ・ゴリー(仙台)

ーー仙台で、自分の特徴を出せている手応えはありますか?

はい。そうであってほしいと思います。仙台のチームメートは意思疎通を図ってくれて、どのようにプレーしたら自分のベストを出せるかということを示してくれて、コミュニケーションも良く取れているので、すごくプレーしやすいです。

ーー母国(オーストラリア)のリーグとの違いで、特に印象的なことはありますか?

日本の選手はすごく技術が高いですね。オーストラリアは、技術が高い選手もいますし、平均的な選手もいます。ただ、オーストラリアの選手は運動神経の高い選手が多く、強い選手や速い選手が多いです。

ーー日本の選手だったら横にパスするところで、縦を選択することが多いですが、その点はどのように感じていますか?

私も前に行くことが得意ですし、サイドの選手がサポートしてくれるので、どんどん前に行くことができます。願わくば、ゴールを決めたいと思っています。

ーー日本でプレーして、一番インパクトを受けた選手は、どの選手か教えてもらえますか?

(仙台の)佐々木繭選手です。彼女とはボランチを組んでいますが、とてもクリエイティブですし、技術も高くて、ビジョンもある選手です。自分がミスをしても必ずサポートしてくれますし、いて欲しいところに必ずいてくれるので、とてもプレーしやすいです。

ーー日本で成し遂げたい目標を教えてください。

このチームでもっと大きなインパクトを残したいですね。そして、願わくば優勝したいと思っています。

元井淳監督(埼玉)

ーー試合を振り返って、いかがですか?

ホームで戦った3試合とも、あともう一つというところでしたし、最後の最後まで(粘る)というところで、僕自身も含めて改善していかなければいけないと思います。目の前の相手と戦うことや、球際で絶対に負けない強い気持ちを持ってプレーすることは、サッカーの本質として追求しなければいけないことです。ただ、それだけでは足りないということだと思います。ただ、上手くいかないからといってやり方を変えるのではなくて、積み上げて来たものに継続性を持って取り組んでいきたいと思います。

ーー攻撃と守備、どちらの質がより足りないと感じていらっしゃいますか?

攻撃と守備は分かれているものではなく、攻撃であればシュートで終わるクオリティーもそうですし、攻めるために前向きで守備をすることも大切なので、攻守両方の質を追求していきたいですね。

ーー勝ち点を積み重ねるためには、どのようなことが必要だとお考えですか?

最後の1/3の質ですね。ゴール前の残り20メートル、30メートルのところと、最後の(フィニッシュの)ところでちょっとしたミスが出ています。2部では失点に繋がらなかったミスが、1部では決めきられてしまうという試合が続いているので、言葉で伝えるだけではなくて、トレーニングでそういったところまでこだわってやれるように、追求していきたいと思います。

ーーディフェンスラインは、試合ごとにポジションやメンバーを入れ替えているのでしょうか?

ケガ人とか人のバランスとか、数字的な理由も含めて、チームとして一番やりたいことができるメンバーを毎試合、選んでいるつもりです。相手との兼ね合いを見ながらメンバーを選んでいますし、常に柔軟性を持って準備していきたいと思います。

MF 中野里乃(埼玉/キャプテン)

ーー試合を振り返って、いかがですか?

格上の相手に、ディフェンスでは球際や切り替えを意識して勝ちにこだわってプレーしたのですが、ボールへの執着心はベガルタさんの方が上だったと思います。でも、ここで下を向くことはないですし、次の試合までは中5日しかないので。何を改善するかということは明確なので、切り替えて臨みたいと思います。

ーー1部の厳しさはどのようなことだと感じますか?

1部と(昨年まで戦っていた)2部では本当に違うな、というのが正直な感想です。1部でずっとやってきたチームは、当たり前のことが当たり前にできているチームが多いのですが、自分自身も含めて、(埼玉は)それができていない甘さがあるのだと思います。ただ、その『当たり前のこと』が、一番難しいと感じています。パスやボールコントロール一つにしても、どこにボールを置くのか、相手が(プレッシャーに)来ていれば簡単にワンタッチを使ったり、逆に相手が来ていなければターンをする、ということは、周りを見ていなければできない。そういうところに(他チームとの)差があると感じています。

ーー紙一重の差を越えるために、どのようなことが必要だと考えていますか?

頑張っていない選手はいないと思うのですが、ディフェンスであれば、もっと厳しくいけば獲れる場面があると思いますし、そこでボールを獲ることができれば、オフェンスはそれに対して、もっと改善しなければいけないという風に、お互いが改善していかなければいけなくなると思います。ただ、練習でできてしまっていることが試合の中でできないということは、練習で弱いということなので。そこを自分たちが気づいて改善しなければいけないと思っています。

ーー中野選手自身は、どのようなプレーヤーを目指したいと考えていますか?

攻守ともにハードワークできる選手になりたいですし、今はまだ無得点なのですが、チームに貢献するためにはゴールを決めることも大切です。サッカー選手である以上は代表に入ることを目指してやっているので、そういったところではもっともっと、磨いていかなければいけないなと思っています。

ーーカップ戦、リーグ後半戦に向けてはどのような戦い方をしたいですか?

チームとしては一番苦しい時期だと思っています。自分は4年目になりますが、1年目は山郷さんがキャプテンだったのですが、8連敗することもあった中で結果が残せていましたし、本当に山郷さんを尊敬しています。守備では粘り強く守るということ、攻撃ではしっかり決めきることが大切だと思いますし、そういうことを徹底していけば勝ち点は拾えると思うので、コツコツ、やっていきたいと思います。

MF 薊理絵(埼玉)

ーー試合を振り返って、攻撃と守備、どちらに課題があると感じますか?

自分は攻撃の選手なので、やはり、攻撃で点が獲れないことは課題です。守備の選手は体を張ってくれているし、点を獲れれば試合の流れも変わると思うので、徹底してやっていきたいですね。

ーーチームとして、どのような形の攻撃やゴールを狙っていますか?

最初はパワーを持って、前からしっかりプレッシャーで相手を潰して、そこからカウンターやシュートを狙って行く形が理想ですね。サイドの選手が中に入ったり、中の選手がサイドに出るという、前線の流動的な動きは練習の中でも取り組んでいます。サイドから崩して中でクロスを合わせたり、サイドから裏に飛び出す形のゴールを狙っています。

ーー勝ち切るためには、どのようなことが大切だと思いますか?

先制点も大事だと思います。言葉では、「失点しても大丈夫だから次に切り替えていこう」と声に出しているのですが、(実際に先制されると)体と気持ちがついていかなくなってしまう部分があるのかなと思います。自分がもっと引っ張っていけたらいいのにな、と強く思っていますし、それは自分にとって足りないところだと思っています。

ーーあと2試合で中断期間に入りますが、1部での戦いを振り返ってみていかがですか?

厳しい試合が続いています。今までは『惜しい』と言われる試合も続いていましたが、0-7で負けたレッズとの試合で、今の自分たちの力はそのレベルなのではないか、ということを改めて突きつけられた気がしました。連続で失点した時に立て直せない部分など、大事なところで気持ちが入っていたかな?と感じたんです。今までは1人で2人のマークにつけていたところでも、良いところにポジション取りをしてくるチームに対しては、誰かがサボったらそのスペースを使われてしまう。そういうところが、今まではなんとなくごまかせていたのではないかな、と。ちょっとした運動量や、サボる部分を無くしていかないと、この先はないと思っています。

ただ、代表選手がいないから勝てないとか、そういう言い訳のようなことはしたくないですし、そういうチームでもしっかり勝てるんだということを見せていきたいと、ずっと思い続けてきました。このチームで上を目指せるということを見ている人に伝えられるように、走ったり、球際で絶対に負けないという気持ちを、ピッチでさらに表現していきたいです。

スポーツジャーナリスト

女子サッカーの最前線で取材し、国内のなでしこリーグはもちろん、なでしこジャパンが出場するワールドカップやオリンピック、海外遠征などにも精力的に足を運ぶ。自身も小学校からサッカー選手としてプレーした経験を活かして執筆活動を行い、様々な媒体に寄稿している。お仕事のご依頼やお問い合わせはkeichannnel0825@gmail.comまでお願いします。

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