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なでしこリーグ2017開幕直前。3連覇を目指す女王・ベレーザの今シーズンを展望(2)

松原渓スポーツジャーナリスト
ヴェルディユースとの練習試合は持ち味のパスサッカーを遺憾なく発揮した(C)松原渓

なでしこリーグ1部開幕を3月26日(日)に控え、今回はリーグ3連覇を目指す女王、日テレ・ベレーザ(以下:ベレーザ)の2017年シーズンを展望する。

なでしこリーグ2017開幕直前。3連覇を目指す女王・ベレーザの今シーズンを展望(1)

以下、開幕に向けた、監督・選手コメント。

【監督・選手コメント】

森栄次監督

ーー今年は攻撃と守備、どちらの面で上積みしたいと考えていますか?

昨年のサッカーをベースにしながら、守備面と攻撃面で1つか2つ、新しい要素をプラスできるように意識づけしています。攻撃面では、ゴール前でのスピードの変化をつけることにトライしています。(ボールを)回しているだけで(シュートせずに)終わってしまうことがあるので、ゴールにつながるパス回しをするために、意識的にどこかのタイミングでスピードアップできれば良いな、と。

ーー今年は左サイドバックの有吉佐織選手(前十字靭帯損傷、全治8ヶ月)の穴をどのように埋めようと考えていますか?

(登録メンバーは)去年のメンバーとあまり変わっていなくて、下(メニーナ)から上がってきた選手たちは即戦力という感じではないので、厳しい状況は変わりません。ただ、アリ(有吉)と同じことを求めても、誰もできない。今は(阪口)夢穂が中心でチームが動いているので、そのポジションに入った選手たちがうまく馴染んでくれればいいな、と。

ーーフィジカル面については、どのような取り組みをされていますか?

フィジカルを鍛える部分は、こちらで筋トレをしようということは言わず、それぞれに任せています。うちは技術とグループで崩していく作業をやっているから、運動量は求めています。止める・蹴る、という技術と、スペースを作る動きや、相手チームよりも走ることが大事ですね。

ーー今年、さらに成長を期待するのはどの選手ですか?

さらに一皮むけてほしいと思うのは、籾ちゃん(籾木結花)と(長谷川)唯と(隅田)凛ですね。3人がもっと点を取れると、チームとしてさらに良くなると思います。まだ(阪口)夢穂たちベテランに頼っている部分があると思うので、自分がいけると判断したら、失敗してもいいから積極的にゴールを狙ってほしいです。

ーーベテラン選手たちもそれを望んでいるんですね。

若い子たちは夢穂たちを尊敬しているし、夢穂たちも若い子たちをうまいと思っているし、お互いに認め合っていますからね。夢穂の優しさに若い子たちが甘えてしまう部分もありますが、それが彼女(阪口)の特徴ですから。

MF 中里優

ーー5日間のベレーザの静岡合宿を終えて、開幕までわずかですが、手ごたえはいかがですか?

代表活動が長かったので、べレーザに戻ってきて、周りとの関わりとか距離感には良い手ごたえを感じています。まだ精度が低いところもあるので、開幕までに高めていきたいです。

ーー今年、個人的にはどのようなことをテーマにしていますか?

ただ練習や試合をこなすのではなく、目に見える結果を出したり、流れが悪い時に自分もその流れにはまってしまうのではなくて、そこで違いを生み出せるような選手になりたいです。

ーーまたぎフェイントなど、流れの中でボールテクニックが自然に発揮されているのが印象的です。

そういうプレーができる選手になりたいと思っています。特に、女子サッカーではそういう選手が少ないので、見ている人に楽しんでもらえるようなプレーはいいですよね。

ーー前からプレッシャーに来るチームも多くなりそうですね。

この間(浦和)レッズレディースと練習試合をした時も、(相手の)前からのプレッシャーが厳しいと感じました。でも、前からきている分、そこで(プレッシャーを)はがせれば大きなチャンスになるので、引いて固められるよりは前から来てもらった方がやりやすいですね。

MF 長谷川唯

ーー静岡で5日間の合宿を終えて、どのような手応えを得ましたか?

すっごく楽しかったです。代表から帰ってきて、最初は(連携が)合っていない部分もあったのですが、2部練習や練習試合もできましたし、今はコンビネーションも出てきて、攻守の切り替えも速くなりました。

ーー左サイドの連携については、いかがですか?

アリさん(有吉佐織)にいつも支えられて、やりやすいようにやらせてもらっていたので、いないのは痛いです。ただ左サイドは自分が引っ張っていかないといけないと思っているので。アリさんの力がなくても左サイドでチャンスメイクや突破ができるように、個人としてもしっかり成長していかなければいけないなと思います。

ーーゴールへの思いはいかがですか?

昨年は接戦も多かったので、(今年は)2列目の選手がもっと点を取れればチームが楽になると思います。今はタナピー(田中美南)が中心に点を取っていますが、アシストだけではなくてゴールも狙いたいですね。

ーー今、こだわっているゴールの形はありますか?

この間、代表で決めたようなロングシュート(アルガルベカップ第2戦、アイスランド戦の1点目)は練習でもよくやっていて、(ボールを)奪った後すぐとか、間で受けて前を向いた瞬間とかは狙っているので、そういう形も狙っていきたいです。去年のリーグカップの伊賀戦で良いゴールがあったんですが、今シーズンはリーグで決めたいですね。

MF 阪口夢穂

ーー開幕まで1週間ですが、静岡キャンプも含めて、代表から帰ってきて、開幕に向けた手応えはいかがですか?

今日のトレーニングマッチ(vs ヴェルディユース)は手応えを感じましたね。久しぶりにヴェルディグラウンドでサッカーをしましたが、人工芝だと、ベレーザのサッカーは本当にやりやすいんですよ。でも、リーグ戦はあまり人工芝で試合をすることがないので、このままではあかんな、と話していたんです。代表から帰ってきた時は疲れもあって、代表からベレーザのサッカーへの切り替えも、簡単にはいかなかったですし、コンビネーションの難しさも感じていましたが、今日は全体の距離感がよくて、どの場所でも三角形ができていましたね。攻守の切り替えも良かったです。

ーー左サイドバックの有吉選手がケガで離脱してしまった中で、今日は中里選手がそのポジションに入っていましたね。

優(の左サイドバック)が、なかなか良いんです。本人は、もっと前で絡みたいと思うんですが(笑)。

ーー(トレーニングマッチでボランチを組んだ)隅田凜選手とのコンビネーションのバランスはいかがですか?

凜ちゃんはU-23日本女子代表でもボランチをやっているので、すごく頼り甲斐があります。自分はああしてほしい、こうしてほしいという点はあまりないのですが、凜ちゃんはあるかもしれませんね(笑)。やっているうちに2人でしかできないようなプレーも出てくると思いますし、場数を踏んでどうなっていくかが楽しみですね。私はこれまでにもボランチの相棒がよく変わって、いろんな選手とプレーしてきたので、誰とでも対応できる自信はあります。

ーー若手が多いチームで、どのようにリードしていきたいと考えていますか? 

今年は若い選手たちに引っ張ってもらって、ついていこうかな、と思っています。(長谷川)唯も調子が良いし、籾(籾木結花)ちゃんも頑張っていて頼もしいので、金魚のフンみたいについていく作戦です(笑)。

ーー今年は前に出て攻撃に絡む機会も増えるのではないですか?

そうですね。それは自分の課題でもありますし、前に上がりたいな、という気持ちもひしひしと感じています。後ろの選手たちが頼もしくて上がりやすいですし、パスも出てくるので、上がれる機会は増えるかもしれないですね。

ーー2連覇しているベレーザに対して、各チームのプレッシャーも強くなると思いますが、どのような対応を考えていますか?

「打倒・ベレーザ」感はやめてほしいですね(笑)強いというイメージがあるかもしれないですが、去年も1試合1試合を必死でやった結果だったので、余裕があるわけではないんですよ。今年はキング(有吉佐織)が最初は出られないですし。ただ、リーグ戦が始まったらしっかり勝ちに行きたいと思います。

MF 隅田凜

ーー開幕まであと数日となりましたが、手応えはいかがですか?

代表(U-23日本女子代表)の活動(ラ・マンガ国際大会)から帰ってきたばかりの時はコンディションが悪くて、体も重い感じだったのですが、徐々に戻ってきています。

ーー今年はボランチでのプレーも増えそうですか?

そうですね。去年と同じように、右サイドハーフでもプレーすることもありそうです。

ーーボランチでプレーする際はどのようなことを意識していますか?

(阪口)夢穂さんが前ですごく良い仕事をしてくれるので、(状況に応じて)お互いに上がったり下がったり、バランスを考えて、夢穂さんを見ながらプレーしたいと思っています。ボランチだと、右サイドのようなシュートシーンを作ることは難しいかもしれないのですが、ミドルシュートは積極的に打っていきたいですね。他のチームのボランチの選手は、足元の技術が高かったり、攻撃の面で強い部分を持った選手が多いのですが、自分は足元というよりも、気持ちの面や予測、球際で上回っていきたいです。

ーー今年、個人的に取り組みたいテーマはありますか?

自分が森さん(監督)に認めてもらっているのは守備のところだと思うので、ボランチとして球際で相手を潰すところだったり、プレスバック(※)をするところはしっかりやって、攻撃では積極的にゴールを狙っていきたいですね。

(※)プレスバック=ボールを持った相手側の選手を、自陣へ戻りながら挟み込むようにプレッシャーをかけること。

ーーリーグ女王として、どのようなことを意識して臨みますか?

練習から、他のチームはうちを研究して強くプレッシャーをかけてくることをイメージしています。相手のプレッシャーが強くても、自分たちのポゼッションで崩していきたいです。

ーーフィジカル面を高めるために、個人的に取り組んでいることはありますか?

週2〜3回、体幹は鍛えていますし、最近は(日テレが運営する)ティップネス(ジム)に行って、上半身を鍛え始めています。少しパワーアップしてきているかな、と感じています。

DF 清水梨紗

ーー開幕まで1週間ですが、静岡キャンプはいかがでしたか?

今シーズンが始まってから、なでしこジャパン(アルガルベカップ)とU-23(ラ・マンガ国際大会)と、U-19(国内合宿)の活動がそれぞれにあって、チーム全員で合わせるという作業ができていませんでした。それだけに、静岡キャンプでは久々にみんなとずっと一緒にいる感じがして、いつもよりサッカーの話をたくさんできたので、すごく良い合宿でした。

ーー左サイドバックの有吉選手がケガで離脱してしまった中で、最終ラインの連携はいかがですか?

いつも左でアリさんがラインをまとめてくれて、センターバックのところはカツぴー(村松智子)と、イワシさん(岩清水梓)が2人で潰してくれていたのですが、アリさんがいなくなった時にラインコントロールのところで合わない部分が少しあるので、調整しなければいけないなと感じています。

ーー攻撃面では、右サイドでどのような特長を発揮したいですか?

アリさんがいた時は、左サイドでアリさんと(長谷川)唯で崩す場面が多かったのですが、右サイドは崩すというよりも、スピードで縦に勝負するという感じでした。その良さは大きく変えずに、クロスを入れる量を増やしていきたいね、と、サイドハーフの選手と話しています。

ーー今シーズンに向けての意気込みを教えてください。

昨年、U-20女子ワールドカップに(直前のケガで)出られなかったことですごく悔しい思いをしました。ただ、できなかった時期があったことで、サッカーに対する考えや思いがまとまった感じがします。今はその分、純粋にサッカーを楽しめていて、それが、自分が一番のびのびできることなのかな、と。今シーズンも年間を通して、大変なことはあると思うのですが、まずはサッカーを楽しみたいですね。

ーー今年の、具体的な目標を教えてもらえますか?

まずは、全試合にフル出場することです。去年はたまに交代してしまっていたので。あとは、1点でも良いのでゴールを決めたいです。今までは(2014年に決めた)1得点だけなのですが、「1」のままは寂しいので(笑)、今年こそリーグで決めたいですね。

スポーツジャーナリスト

女子サッカーの最前線で取材し、国内のなでしこリーグはもちろん、なでしこジャパンが出場するワールドカップやオリンピック、海外遠征などにも精力的に足を運ぶ。自身も小学校からサッカー選手としてプレーした経験を活かして執筆活動を行い、様々な媒体に寄稿している。お仕事のご依頼やお問い合わせはkeichannnel0825@gmail.comまでお願いします。

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