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主な新興国/米国経済ニュース(10月2日)

増谷栄一The US-Euro Economic File代表

ハンガリー中銀総裁ら幹部、追加利下げの余地を強調

ハンガリー中央銀行のジョルジュ・マトルチ総裁は先週末に開かれた経済フォーラムで、金融政策に関し、「インフレ圧力は中期的には抑制される見通しのため、金融緩和を長期にわたって維持すること可能だ」と述べ、再利下げの余地があることを指摘した。ハンガリー経済専門サイト、ポートフォリオが9月30日に伝えた。

また、中銀の金融理事会(MC)メンバーであるジェルジュ・コシズツキー氏も9月30日付の米経済紙ウォール・ストリート・ジャーナルのインタビューで、「インフレが抑制されていることから、景気を刺激するために、追加利下げを実施する余地がある」とした上で、すでに過去最低水準となっている政策金利の効果を補強するため、利下げとは別の手段を講じる可能性が高いことも明らかにした。

さらに、同氏は、中銀は金融政策の決定にあたっては、インフレターゲットを考慮する一方で、GDP(国内総生産)伸び率や雇用状況も要因として検討することも強調した。この点に関し、同氏は、「インフレが依然抑制されている限り、米国を模範として、中銀は経済成長と雇用の拡大により大きな重点を置く」と述べている。追加利下げについても、「実体経済がそれ(利下げ)を必要としなくなるまで、利下げを続ける可能性がある」と述べ、成長達成目標として、GDP伸び率2%増が持続的安定成長といえるとの認識も示した。

中銀は9月24日の金融理事会で、市場の予想通り、政策金利の2週間物預金金利を現行の3.8%から0.2%ポイント引き下げて3.6%とし、過去最低の水準を更新している。次回の金融政策決定会合は10月29日に開かれる予定。

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ロシア石油大手ロスネフチなど、モスクワのドモジェドヴォ国際空港を買収へ

ロシア最大の国営石油大手ロスネフチと大富豪ローマン・トロチェンコ氏が率いる空港運用大手ノバポートは、首都モスクワで2番目に大きいドモジェドヴォ国際空港を47億ドル(約4610億円)で買収する見通しだ。モスクワ・タイムズ(電子版)が1日に関係筋の話として伝えた。

47億ドルのうち、25億ドル(約2450億円)は同空港の燃料補給施設で、ロスネフチが買い取り、他の空港施設はノバポートが引き継ぐ。現在のドモジェドヴォ空港の実質オーナーは空港インフラ大手イーストライン・グループのドミトリー・カメンシチク氏。ノバポートはロシア国内各地の地方空港を保有し運用している。

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インドネシア政府、10月に追加景気対策発表へ―ルピア安阻止も

インドネシア財務省のバンバン・ブリジョヌゴロ財政政策局長は9月30日に、景気刺激と自国通貨ルピアの下落阻止を目的とした追加景気対策を今月中に発表する方針を明らかにした。これは8月に打ち出した景気対策の追加措置となる。ジャカルタ・グローブ(電子版)が伝えた。

また、同局長は、原材料の輸入増加が経常赤字を拡大させ、ルピア安の原因になっているとの認識を示した上で、原材料の輸入を減らすため、今後は企業に対し、必要な原材料を自国で生産するよう助成策を講じる考えを示した。同国の4-6月期の経常赤字は98億ドル(約9600億円)と、GDP(国内総生産)の4.4%にも膨らんでいる。ルピアも年初来で対ドルで20.1%も下落している。

一方、経済成長率は、中銀によると、今年は5.5-5.9%増の見通しだが、これは従前の予想の6.2%増から下方修正されており、昨年の6.23%増を下回っており、景気刺激が必要になっている。

政府が8月に発表した景気対策は、経常赤字の改善とルピア相場の安定化を目指すため、(1)売り上げ全体の30%以上を輸出する労働集約型産業に対する追加減税による輸出拡大(2)バイオ燃料の使用拡大によるディーゼル燃料の輸入削減(3)完成車(CBU)や高級ブランド品などぜいたく品への輸入関税率を現在の75%から125‐150%に引き上げる(4)鉱物資源の輸出手続きの簡素化による輸出拡大―の4項目の措置を講じるとしている。

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ベトナム不良債権買い取り会社、アグリバンクから80億円の不良債権買い取りへ

ベトナム中央銀行が設立した国営の銀行不良債権買い取り専門会社(VAMC)は1日、ベトナム最大の商業銀行、農業農村開発銀行(アグリバンク)から1兆6000億ドン(約80億円)相当の不良債権を買い取ることで合意したもようだ。地元金融情報サイト、ストックスプラス(電子版)が伝えた。

VAMCは特別債を発行して不良債権を買い取るが、今年末までに30兆-35兆ドン(約1500億‐1750億円)を発行する計画。その第1弾として、10月末までに10兆ドン(約500億円)相当のVAMC債を発行する。アグリバンクに続いて、サイゴン商業銀行(SCB)とサイゴン・ハノイ商業銀行(SHB)が不良債権を売却すると見られている。

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米AT&T、2014年半ばに毎秒1ギガビットの超高速ブロードバンド開始

米通信大手AT&T<T>は1日、データ伝送速度が一般家庭に普及しているものに比べ100倍も速い毎秒1ギガビットという超高速ブロードバンドサービスの提供を今年12月からテキサス州オースチンで開始する。これはカンザス州のカンザスシティで先行して開始した米インターネット検索大手グーグル<GOOG>に続くもの。

同社によると、当初は上りと下りの双方とも300メガビットで開始し、2014年6月ごろに追加費用なしで伝送速度を1ギガビットに引き上げる計画だとしている。

同サービスは「ユーバース・ウィズ・ギガパワーSM(U-verse with GigaPowerSM)」で、一般家庭の引き込み部分まで100%光ファイバーを使うことで1ギガビットの伝送速度を達成し、HD(高精細)ムービーをわずか2分弱でダウンロードを可能にするとしている。

ユーバース・ウィズ・ギガパワーSMサービスは、同社の3カ年ブロードバンド投資計画「ベロシティ・アイ・ピー(Velocity IP)」を補完するもので、今年だけで、AT&Tは210億ドル(約2.1兆円)強、2014年と2015年に各200億ドル(約2兆円)強を投資する。

AT&Tではオースチンの数万人規模の顧客に同サービスを提供し、2014年には他の地域や企業向けにも拡大していく方針。

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米ネット小売り大手アマゾン、年末繁忙期に米英で8.5万人を季節採用へ

米オンライン小売り大手アマゾン<AMZN>は1日、年末の繁忙期に対応するため、今年も米国にある商品発送センターに昨年より40%多い7万人、また、英国でも50%多い1万5000人の計8万5000人をフルタイム勤務の期間従業員を採用する方針を明らかにした。米経済情報専門サイトのマーケットウォッチなどが伝えた。

アマゾンの年末の期間従業員の採用は毎年恒例となっており、採用規模の拡大は受注の増加に対応するために避けられない状況となっている。同社は小売り最大手ウォルマート・ストア<WMT>やネット競売大手イーベイ<EBAY>など同業他社との販売競争に打ち勝つために、同日配送の実験を行っているほか、最近では食料品の受注も開始しているため、発送センターの近辺に倉庫網を建設している。同社の米国内の発送センターでは現在、フルタイム勤務の正規従業員は2万人超となっている。

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ブラジル油・ガス大手OGX、44億円利払い拒否―破たんに近づく

ブラジルの大富豪エイキ・バチスタ氏が率いる石油・ガス生産会社OGXペトロレオは1日、資金繰り難のため、債権者との間で債務の再構築をめぐって協議を進めている中、2022年償還の10億6000万ドル(約1040億円)の社債の利払い期日を迎えたが、予定された4500万ドル(約44億円)の利払いを拒否する方針を明らかにした。この結果、同社は中南米では過去最大の巨額負債を抱えて経営破たんに向かう公算が一段と強まった。地元紙オ・エスタド・ジ・サンパウロ紙(電子版)などが伝えた。

同社は1日に証券当局に提出した報告書で、経営再建に向け資本構成と事業計画の見直しを進めている段階であることから、4500万ドルの利払いを行わないことを決めたとしている。

これより先、米英大手信用格付け会社フィッチ・レーティングスが9月初めに同社の格付けをデフォルト(債務不履行)寸前か、不可避、または、債務返済措置の状態にあることを示す「C」に引き下げた際、同社の財務状況について、6月末時点の現金と現金同等の資産額は7億2200万レアル(約320億円)、社債発行残高も87億レアル(約3860億円)となっており、そのうち2018年償還の社債が26億ドル(約2550億円、利払い期日は12月)、2022年償還の社債は10億6000万ドルとなっていることを明らかにしている。もし、同社の社債発行残高36億ドルの償還ができない場合には中南米では過去最大の破産額となる。

ただ、同社では社債の利払い条項で、同社には30日間の猶予期間があり、今後30日以内に何らかの対策を講じることができれば、デフォルト宣言を回避することができるとしている。(了)

The US-Euro Economic File代表

英字紙ジャパン・タイムズや日経新聞、米経済通信社ブリッジニュース、米ダウ・ジョーンズ、AFX通信社、トムソン・ファイナンシャル(現在のトムソン・ロイター)など日米のメディアで経済報道に従事。NYやワシントン、ロンドンに駐在し、日米欧の経済ニュースをカバー。毎日新聞の週刊誌「エコノミスト」に23年3月まで15年間執筆、現在は金融情報サイト「ウエルスアドバイザー」(旧モーニングスター)で執筆中。著書は「昭和小史・北炭夕張炭鉱の悲劇」(彩流社)や「アメリカ社会を動かすマネー:9つの論考」(三和書籍)など。

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